TETE少年のAO入試戦記とAO入試の雑感

 蓮舫議員の例の入試イベント以来、いろいろとAO入試が注目されていますが、私は14年前に中堅国立大学の教育学部にAO入試で合格し、進学しました。その経験を元に、この記事ではAO入試の実際をざっくりとご紹介するとともに、AO入試への個人的な考えを添えさせて頂きたいと思います。

1、AO入試の実際
 試験は10月中旬くらいに出願し、1次選考なしの2次審査が大学にて11月終わり頃に実施されました。私が受けたときの受験科目は、提出書類、小論文、個人面接、プレゼンテーションで、配点は申し訳ないですが覚えてないです。当たり前ですが、倍率は6倍と高倍率でした。
 提出書類は、志望理由書・調査書・自己PRシート・添付資料とかなりオーソドックス。一応私は、生徒会で図書委員長をしていて、部活も文芸部で部長をしていたので書く事はあったけど、これといった受賞歴とか海外留学みたいな経歴はなかったし、少なくとも世間が考えるような意識高い系のキラキラ経歴の高校生ではありませんでした。図書委員長で文芸部部長という完全に隠キャ側の人間でした(ただ、元野球部エースだったので、ハンドボール投げは38m飛ばしましたけど。)
 2次選考は、1日目の小論文が180分2000字で、テーマは社会科専攻の受験者は「都市問題について歴史・地理・公民で学んだ具体例を交えつつ論じなさい」というすごくシンプルなものでした。当時の小論文としては時間的にも量的にもかなりボリューミーな感じで、かなり尖った問題だと言えます。入学後に確認したところ、合格者でも1600字を超えるのが精一杯だったらしいのですが、自慢ではないですが私は30分前には1998文字を書き終え、余裕で見直しをしていました。小論文の試験終了前後には、他の受験生が書けていない雰囲気を感じていたので、ここで実は合格をかなり確信していました。
 2日目は面接とプレゼンテーションでした。はじめにプレゼンテーションで、世界の人口の増加グラフを渡されて、ここから分かることを15分で考えて15分間話しなさい、という内容でした。正直、プレゼンの出来は微妙で、時間が余りそうだったため、試験時間の15分が早く終われと思っていました。面接待機のグループで仲良くなった数名と話していてもそういう感想だったのですが、1名だけ「時間が足りなかった」とこぼす強者がいて、彼女はやはり合格していました。
 個人面接はまずまずで、良かったのは志望理由書に書いてあったことについて中央の偉そうな教授と建設的な話ができたことです。これは偶然ではなくて、事前に教授の顔と名前を覚えていたので偉い人だと知っていたため、その人の好みに合わせて話していました。ただ偶然というか運命というか、結局この教授のゼミに入って大学院まで指導して頂くこととなるのですが、それはまだちょっと先のお話。あと、横から若い講師の面接官がよくわからない質問をしてきてちょっと焦っていたのですが、入学後わかったのは本当に変な人で、その部分はあまり評価に反映していなかったようです。面接は全体的には良い評価ではないかと感じていました。
 入試の全体を見返した時に、やはり決め手は小論文だったと思います。合格者全員の意見を取りまとめると、おそらく全受験者で最高得点だったのではないかと思っています。あとは、面接試験での偉い教授とのやりとりも加点されたかなというのと、提出書類もプレゼンもポカがなかったのがよかったのではないかな、と感じています。そして、無事合格。6倍を見事勝ち抜いた次第でございます。

2、AO入試組の入学後と卒業後
 入学後にわかったことは、AO組は私以外はそこそこ学業のほうも良かったということ。当時の私の学部学科のセンターボーダーが720~740点で、AO組6人のうち4人は700点は取れていました。私の点数はというと、口が裂けても言えません(笑)
 入学後で困ったのは、英語。やはり一般組とはかなり差があったが、クラス分けで体育科のスポーツ推薦組と合流したことによって事なきを得ました。残りの科目は特に困りはなく(社会は一応偏差値70はあった)、論文型の試験や長めのレポートはむしろ他の学生より成績はよかったと思います。
 卒業後の進路については、AO組は実に優秀でした。以下、一覧。
・大学院進学3名(うち1名は京大にご栄転)
・教科書会社就職1名(30台前半ですが既に1000万円プレイヤーです)
・教員採用試験合格3名(全て高校社会で、倍率30倍以上の難関を突破。うち1名は合格を持ったまま京大に進学)
・大学院終了後、1名は教員採用試験に合格し中学校で採用。あと1名は、学校の先生したり博士課程後期に進んだり、ふらふらした後に家庭教師と転生。
結論としては、私をを除けばみんな優秀でした(笑)

3、AO入試への想い
 思い出話みたいになりましたが、AO入試について思いの丈をちょっと話します。
 まず、AO入試拡大には私はとても否定的です。私はAO組だけど、やっぱり一般入試組をリスペクトしています。向こうもリスペクトしてくれたけど、やっぱり一般入試組は基本的な学力が高いし、大学生の王道感があって、難関大と言われるところは(自分は母校は中堅だと思ってますよ)、やはりこの一般受験組の層がマジョリティーであるべきだと思っています。私たちAO組は完全にアウトローですし、そうあるべきだとも思っていて、アウトローとしての誇りはあるけど、マイノリティであるべきだとも同時に思っています。だから、どことは言わないけどキャッチコピーで「まだ机に向かって勉強してるの?」と煽ったり、AO拡大を声高に叫ぶのには違和感しかないです。
 また、AO入試でも学力を評価して欲しいと思います。ただしそれは教科の枠では測れない学力を評価する選抜です。そのためにも試験は尖った個性的な問題を実施して欲しい。一部の大学ではすでになされているし、私が体験した3時間2000字とか15分考えて15分のプレゼンみたいな入試をして、教科の枠では測れない学力でぜひ選抜をして欲しいと思います。間違っても、意識高い系キラキラ経歴陽キャラコンテストに成り下がってはいけないと考えています。
 AO入試の実態はピンからキリまであって、一言では言い表せないことも多いんですが、ただ、AO入試で大学に進学した者からすると、世間から蔑まされるような選抜はして欲しくないと思っています。もちろん言葉だけに反応して叩いている輩もいるけど、形だけの図星な選抜をしている大学もあって、なんとも複雑な思いです
 何にせよ、この記事で少しでもAO入試の実際を知って頂けると幸いです。

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