なぜ実績のなかった若造が硬派な版元から書籍デビューできたのか? 「#徹壱塾」塾長ヒストリー<1/7>
写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱です。これまで27年の活動の間に、ノンフィクションを中心に14冊の書籍を上梓してきました(参照)。そこで培ってきたノウハウとメソッドを体系化して、2024年7月11日より「宇都宮徹壱ブックライター塾(#徹壱塾)」を開講します。
ただいま「#徹壱塾」では1期生を募集中。6月30日締め切りまでの間、宇都宮徹壱の過去の作品を「塾長ヒストリー」として7回にわたってお届けしたいと思います。第1回は、デビュー作の『幻のサッカー王国』、そして今は市場で滅多に見かけることのない『サポーター新世紀』です。
1998年『幻のサッカー王国 スタジアムから見た解体国家ユーゴスラヴィア』(勁草書房)
これが宇都宮徹壱のデビュー作。この時、私は32歳でした。それまで勤めていたTV制作会社を退職後、写真家となるべく戦禍の爪痕が生々しく残るバルカン半島に「自分探し」の旅に出た時の物語。複雑な旧ユーゴスラビア事情を理解する、重要なキーワードとなったのが「サッカー」でした。
注目すべきは、本書の価格が税抜きで2,700円ということ。版元の勁草書房は学術書が中心で、ハードカバーの少部数発行がメイン。そんな硬派の版元で、なぜ実績のなかった若造が書籍デビューを果たすことができたのでしょうか? それには3つの要因があったと思います。
1つ目は、当時の出版界に余裕があったこと。ゆえに、何ら実績のないけれど、見どころがありそうな若者を育てようというプロジェクトが成立したのだと思います。私を拾ってくれたのは、当時40代だった勁草書房の編集者Sさん。この人とは今でも、年賀状での交流が続いています。
2つ目は、当時は空前のサッカーブームであったこと。Jリーグ開幕時の熱狂は下火になっていたものの、1997年の「ジョホールバルの歓喜」によって、代表人気はかつてない活況を呈していました。勁草書房でも「このビッグウェーブに乗り遅れるな!」と言わんばかりの空気はあったようです。
そして3つ目は、書き手である私自身の情熱。いくら出版業界に余裕があり、サッカーブームという追い風があっても、それだけでは書籍は生まれません。当時の私の私を支えていたのは、遠く離れたバルカン半島の現状を「サッカー」という共通言語で伝えたいという一念のみ。それが執筆の原動力にもなりました。
かくして、1年をかけて完成した私のデビュー作。ワールドカップ・フランス大会という追い風もあり、さまざまな書評欄で取り上げられたことで、地道に版を重ねることとなりました。SNSがなかった時代なので、出版社に送られてきた読者からの感想や激励の手紙には、大いに勇気づけられました。
とはいえ当時の私は、その後も四半世紀以上にわたり本を出し続けるとは、夢にも思いませんでした。
1999年『サポーター新世紀 ナショナリズムと帰属意識』(勁草書房)
私の2作目は、ワールドカップ・フランス大会の旅の物語でした。当時の私は、取材パスもチケットも持っておらず、スタジアムで観戦した試合は2試合のみ。この大会で私が自らに課したミッションは、出場32カ国のサポーターのポートレイトを撮影して、さらに次回大会に向けたアンケートを実施することでした。
フランス大会の4年後は、2002年の日韓大会。サッカーが根付いていないわが国に、世界中の熱狂的なサポーターが乗り込んできたらどうなるか? 大都市や観光都市ならまだしも、外国人との接点がない地方の開催都市では、ハレーションやパニックが起こるのではないか?
そうならないためには「2002年にはこんな人たちが来ますよ」と、事前に周知してもらう必要がある。そう強く感じた私は、ワールドカップが開催されたフランスでサポーターの写真を取り続け、それらを一冊の書籍にまとめることを思い立ちました。その意味で、まさに使命感に支えられた作品と言えるでしょう。
本書をきっかけに、各地で写真展を開催できたのは収穫でした。けれども肝心の書籍はというと、デビュー作のように版を重ねるまでには至らず、版元の都合で在庫は断裁されてしまいました。結果として本書は、古書店はもちろんネット通販でもなかなか見つけられない状況となっています。
私が世に送り出してきた14冊の作品には、いずれも成果と課題があります。そして成果に慢心せず、課題に向き合うことで、次回作につなげてきました。このたび開講する「#徹壱塾」では、そうした課題のエッセンスもカリキュラムのなかに反映させていきたいと思います。
当塾は「自ら取材して執筆する」ことで「書籍デビューを目指す」方に特化した講座となっております。また当塾は、オンラインではなく「対面での指導」にこだわります。
ブックライターになるメリットとは何か? 私の経験に基づいて断言できるのは、以下の4点です。
1)ライターとしてのステイタスが上がる。
2)作品を通してファンを獲得できる。
3)自分の仕事が読者の記憶に残る。
4)ライターとして息の長い活動ができる。
書籍を出せば、間違いなく書き手としてのステイタスは上がるし、ファンを獲得できるし、読者の記憶にも残るし、息の長い活動も可能になります。
そこに価値を見出だせるのであれば、まずは「3年後の書籍デビュー」を目標に、当塾を受講してみてはいかがでしょうか? 当塾では、あなたの努力と才能と運を最大限に引き出すべく、これまで培ってきたノウハウをメソッドにしてお伝えしていきます。
1期生を迎えての最初の講義は、7月11日(木)18時30分。これまで4冊の書籍を執筆してきた、東京・西荻窪のコワーキングスペース「factoria」でお待ちしています。
塾長:宇都宮徹壱(写真家・ノンフィクションライター)
「#徹壱塾」に興味を持たれた方、あるいは入塾をご検討されている方、下記の記事にアクセスしてみてください。
主な内容は以下のとおりです。
■どんな方に向けた講座か?
■どんな学びが得られるか?
■どんな特徴があるのか?
■どんな効果が期待できるか?
■6カ月で学ぶ11のメソッド
■第1期「#徹壱塾」概要
<2/7>につづく。
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