X(ツイッター)について

底辺労働
 育児、ゴミ収集、配達、介護、コンビニ業務、道路工事、警備、焼き場などなど、「社会の中で輝いてゐるわたし」として若者たちがインスタに挙げない仕事。

 これらは西洋では奴隷の仕事だった。
 歴史的に、ずっと、下女下男、下層民の卑しい仕事だった。

 日本には元々奴隷がゐない。
 また、労働者の階級が穴だらけだった。二本差しの武士が芸人になったりするし、百姓が抜擢されて藩の重役になって帯刀を許されたりしたと聞く。
 労働に貴賤があるといふ西洋的な価値観が無かったからだ。血を見る仕事を穢れたものとしたが、賤しいといふ感覚とは微妙にズレてゐる。
 
 日本人が賤しいと感じるのは、額に汗する労働をしないで何かを手に入れようとする根性のことだった。
 「貴様、浅ましい奴だ」といふことだ。

職業の貴賤といふ価値観

 今は、日本でも、職業の貴賤といふ価値観は定着してゐる。
 学歴で、生涯の総収入の額は決まる。
 収入が多い人が貴であり、低い人が賤である。

 だから、日本では賃金の多寡だけが政治の懸案だ。低い収入を高くするのが政治家に求められてゐる唯一の仕事だ。他のことに気をまはすと国民から嫌がられる。


 学歴によって選ぶ仕事が変はってくる。いはゆる高学歴者は、底辺労働者になるのを嫌がる。
 そして、日本では大卒が多い。

 しかも、学歴や能力に関係なく、若者たちは学校の先生から「自分の夢を実現する」といふことを強いられる。

 人間の九十九・九%は、無能で平凡で、ゐてもゐなくてもいい人たちだ。
 この人がゐないと大変だといふやうな人は、1000人に1人だ。
 その他の999人は、他の人が入れ替はっても、何事も起きない人たちである。

 学歴や能力に関係なく、若者たちは学校の先生から「自分の夢を実現する」といふことを強いられる。
 無能な、平凡な人が、誰でもできる仕事を誠実にやる。そのことで世の中が回る。そんなことを教える先生はゐない。

夢を実現する仕事

 「君の夢は何?」「まだ気づいてゐない君の才能は何?」「なりたいものに、ならう」
 かういふ言葉は、大部分の凡人にとっては自分を否定するメッセージでしかない。
 ほとんどの人は、なんでもない人として生まれ、なんでもない人生を送り、誰も知らないうちに死んでいく。


人生の虚無感

 収入の低い仕事を持ち、単純労働に就いてゐる人たちは、つまらない人生を送ってゐると痛切に思ひながら、その自己嫌悪と自己憐憫、なにか的の定かでない恨み、人生の虚無感、それらを原動力に、今日もXに、社会の悪を憤る書き込みをしてゐる。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?