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電界怪異図鑑:【カシカスメ】

【カシカスメ】

学名:Piscatorius dulcisumbrae
妖怪:カシカスメ科
恐怖レベル:☆

カシカスメは、物陰や暗い場所に潜んで暮らす小さな妖怪です。
人々の足元にこぼれた食べ物や小物を拾って、物陰に持ち去るのが日常の行動となっています。非常に臆病な性格をしており、人の姿を見かけると素早く隠れます。
一方で好奇心旺盛なため、人が落とした物なら何でも拾ってみる癖も。しかし、持ち去った後で食べ物でないことに気づくと、すぐにその場で放り出します。時々、物を落とした時に妙に遠くまで転がっていた、なんてことがあるかと思いますが、その何割かはこの妖怪の仕業かもしれません。

この妖怪は、古くから日本に存在していると言われており、その名が最初に登場したのは饅頭乱飛録まんじゅうらんぴろくという江戸時代の書物です。
そこでは、ある殿様が饅頭を落とすと忽然と消えてしまい、城を上げて行方を探すことになる、という奇妙な騒動について綴られています。最終的にある山伏が小さな妖怪の仕業と見抜き、落ちた菓子を掠め取ることから「カシカスメ」と名付けました。

山伏の証言を元に描かれたという「カシカスメ」

ただ、実際そこまで害のある妖怪ではありません。
カシカスメが取るものは人間がこぼした物に限られ、備蓄の食害や財害などの心配はないです。
また、妖怪としては非常に貧弱な種ですが、そのせいか不可視性が非常に高く、多少の霊感ではその姿を見ることはできません。そのため、この妖怪を駆除しようと思う場合、霊視に長けた高位の霊能者の助けが必要となることが多いです。

ちなみにカシカスメは社会性のある妖怪で、と呼ばれる女王を中心に、数匹から数十匹の群れを作って行動します。

「姫」
労働個体と比べやや大型

彼らが選ぶ住居は人間の乱雑な物置や戸棚の奥。この場所は彼らにとっての安息の場所となり、カシカスメサイズのミニチュアの町や城を築くこともあります。これらの町は一種の異界で、掃除などの影響で群れが離れると、その痕跡は跡形もなく消え去ってしまうようです。

一方、コロニー移動は彼らにとっては非常に危険な行為となります。
野生動物たちは元来感覚が鋭く、特に移動しているとカシカスメの不可視性が通用しません。当然ですが、カラスや野良猫は彼らをごちそうと見なします。また、気がつかない人間や車に踏まれて命を落とすことも多いようです。
姫が死ぬと群れ全体が壊滅するので、時に労働個体がそれらの危険に立ち向かうこともあります。とはいえ、前述のひ弱さから同サイズのネズミにすら太刀打ちできません
彼らは毎回、多数の犠牲を払いながら住処の移動をしているのです。

ちなみに、死んだカシカスメは風化が早く、しばらくすると体が煤のようになります。時折その煤を家族が集め、小石を使ってお墓を作る姿が目撃されることも。
これは彼らなりの弔いの方法であり、彼らの深い絆と儚さを感じさせる瞬間です。

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