【好評につき】ラジオドラマを書きました【記事化】

ラジオ「ティーナ族ラジオ:本当にあったクリエイターの怖い話」
に投稿した〈実話風ラジオ小説〉です。

★本文は下の方にあります★

≪経緯≫
番組内で「クリエイターが実際に体験した怖い話」を募集
そこで応募した一作。

番組的には「データ破損しました~怖い!」
…のような内容を想定していたわけですが、、、

好評につきブログ記事にしてみました
物語のテーマはルサンチマンです。


※作者名は別なの使ってます
※ちなみに恥ずかしながら(https://youtu.be/-jo1BD3RBns?t=1238)20:38から本記事までの3通は自分の投稿作です…

★再生すると動画の35:34~から朗読されます。合わせて本文をお読みください★


≪本文≫



朗読:まこってぃーな
MC:ヤッティーナ
投稿作者:まんこってぃーな(ばらん弁当)













「ポットちゃんとの思い出」














私のクリエイター人生は褒められたものではない。
「クリエイター」という肩書すら苦しく似つかわしく無い。
私はクリエイターではない。



私はイラストや小説、まんが、なんでも作る子だった。
ゆえにライバルも多かった。
中でも「怖かった」と言えるのは1人だけだった。

中学の頃の話になる。



「まんこちゃん!」
〈まんこ〉とは私の名前(カリ名)。
会長「まんこちゃん、絵上手いから今度の生徒会新聞で絵を描いてよ」
私は生徒会長に呼ばれ、イラストを寄稿することになった。

が、翌日、思いもよらぬ事態になる。



会長「あ…まんこちゃん。もう描いてきちゃった……?」
私が描いたのがバツが悪い。そんな様子。
会長「……実は……別の子がもう描いてくれて」
私「どういうこと?」
会長「手違いで……他所で勝手に決まって進んでた事なんだけど」

どうやら会長も把握していなかったらしい。

会長「だから、別の子のイラストを載せることに」
私「私の絵はどうなるの?」
会長「ごめんなさい」

もっと融通利く奴だと思っていた
なんてセリフも思いついたが、
そこまでして我を出す気はなかった。
会長の謝罪に応じて身を引いた。



後日、帰りの会の教室。

私たち生徒に生徒会新聞が配られる。

私は思っていた。
――〈別の子のイラスト〉って大したことないだろう。まして私は独学なりに勉強して描いてはいるのだ――と。
そう、たかをくくっていた。

新聞を見た生徒の一人が声を上げる。
「すげー!」
そんな語彙力のない言葉を発したのは、
普段真面目で無口な優等生だった。
「何がすごいか分からないけど、なんていうか、好きだな、コレ」
ほかの生徒もうんうんと唸る。

絵の事を言ってる?
新聞に目を向けられない。

「絵がすごいよね」
「ほんとうに!」

生徒たちの歓喜に飲まれそうになる。
いや、冷静になれ。
絵で興奮などそうもない。
例えばプロの絵をトレスしてるとかに違いない。
そういうセコイ絵が乗っているとかだ。
そうに違いない。

めくる。
私は目を奪われ――目を疑う。
一瞬、絵と思えなかった。
世界だ。
目の前に世界が広がる。
そう思った。

しばらくして絵だと気づく。
これが本物だと気づく。

「…嫌だ」
軽く暴言を吐く私。

ショックを受けて時間が歪んだ。
体感時間が歪んだ。
私がみんなを喜ばせたかったのに。
なんで別の子が?
私が認めらるはずだったのに。
どうしてこの子の方が本物の画力があるの?

平静を保たなければ。
であれば、そうだ。

「本物をつぶしてやる」



私の実力は無いと分かった。
なら、このイラストを描いた奴を放っておくわけにはいかない。
この私という主人公の物語に、チートキャラなどいてはならない。
調子乗った奴に違いない。

私「ポッと出の癖に!」

匿名の絵を寄稿するイラストレーター。
私はこの人を「ポットちゃん」と名付け、つぶす作業に入った。

才能は私の努力でつぶす。
圧倒的な努力の前に前につぶれろ。
そうして挫折を味わい私以下の存在になり下がるのだ馬鹿め。

私は正攻法を使った。
努力。
自身の画力を高める。
皆を、ポットちゃんを驚かせてやる!

私は自身の才能が無いのを知っていた。
だからこそ、努力--〈才能が有るように見える〉努力をした。

簡単なことだ。
凡人が時間のかかる事をすぐ出来れば良いんだから!
トレスでも模写でもしてやる!
トレスもごまかせばいい。
上手くごまかせばオリジナルだ。

私は漫画を描いた。
あえて漫画を描いた。
そのポットちゃんの絵よりも高い画力であろう絵で漫画を描いた。4コマの絵だ。4倍の労力!
数も上、書き込みも上、空間も上、キャラの魅力も上、話も上、上。上。



それを会長に渡した。
会長「え、なにこれは?」
私「載せてよ、次号の新聞に」
会長「ああ……それがさ……言いづらい話」

会長はバツが悪そうだ。またか

会長「前の人って先生のお気に入りの人でね……
その人の絵と一緒に載せる事になるけど…それでも良いかな?」

バツが悪いというわけでも無いらしい。
会長は詳細を聞いてほしそうに此方を見る。

私「先生のお気に入り?」
私はポットちゃんの正体に興味が沸いた。
会長「まあ、事情知ってるとちょっと……個人としては……気持ちいい感じはしない感じでさ」

無理して私の気を使ってるのか、歯切れが悪い。

私「私のを載せてくれるなら何でも良い。で、その子ってどんな子?」




1年下の女の子。
教室の外から見えた。
会長が指を指す。

私「あの地味そうな子?」
会長「違うよ。あの派手な子」

私「……あの子? いや待ってあの子って」

有名な子だった。
学校に通いながらモデルの仕事もしてるという。
容姿端麗でスタイルも良く、ダイエットとは無縁そうな感じ。
成績も良く運動能力も高い為1年でバドミントンの全国大会までいった。
家も金持ちとして有名だった。
私たちの親が集まる度、その家の話題で盛り上がっていたいたのを覚えている。

それに加えて性悪で利口。
陰口や口喧嘩が得意で頭の回転が速い。
取り巻きを用意していてかならず後ろ盾がある。
悪い事は人に押し付け、自分は汚れない。
悪名が立っても押しのける豪胆さがあり、人に好かれるカリスマがあり、経済的にも地位があった。
誰もが彼女に傷つけられ、泣き寝入りした。
あんな人間は私たちの学年でも知っている。敵にしたくない人間として有名だった。

私「なんで……すべて持ってるの」
会長「あーでも、言わないで欲しいんだけど……あの子推してる先生もなーんかイヤラシイ目しててさ。推薦してる感じも気味悪いんだよね」

どうでもいい。
私はただポットちゃんというクソガキのチートキャラぶりがただただただただ憎い。
嫉妬どころではない。

こんな調子乗ったガキが息をしている。
その現実を否定したい。
堕ちて欲しい。
底辺に落としてやりたい。
一般的な人間になって欲しい。
やらねばならない。

様々な人間が苦しみを味わって生きている。
だというのにこのガキは、他人の苦しみなど、意に介さない。

であれば
〈ポットちゃんの人生〉という物語。
その物語に〈他人〉を登場させるべきではないか?

〈他人〉を〈メインキャラ〉として、
登場させるすべきではないか?

ポットちゃんが意に介さない〈他人〉を。
ポットちゃんが意に介さない、
予想だにしない、
「ポット出」のキャラを。


会長「どうしたの?まんこちゃん?」

私は息巻いていた。

教室には、誰も座っていない椅子がある。



手から吹く血というのは黒いのだと知った。
椅子の脚と机に挟まったポットちゃんの手が見るも無残な形になる。

ポットちゃんが悲鳴を上げる

周囲からも悲鳴が上がる。

一部の生徒たちがじっとこちらを見る。

しかしその誰もが、私を止めようとしない。
誰も私を止められない。

私はクリエイター

次は顔だ

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