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褒めると認めるのちがい

朝黒板のメッセージ

 褒めてもらう、認めてもらう、というのは子どもたちにとっての「エネルギーのもと」です。褒めてもらえる、認めてもらえるから頑張れます。ですから、たくさん、そんな機会をつくっていきたいものです。
 さて、 下の2つは、ある日、あるクラスの黒板に書かれていた“朝のメッセージ”です。

おはようございます(^-^)
それから、昨日の放課後、みんなの国語のノートを見たら、とってもきれいな字で書いてあってびっくりしました。
すごいな!さすが5年生だ!と思いました!

A先生の朝黒板

おはよう(*'▽')
きのうは、みんなが元気に来てくれてとっても嬉しかったよ。
今日もみんなと会うのが楽しみ!
今日も1日がんばろう!

B先生の朝黒板

 2つの黒板に共通して言えることは、子どもたちを認める「あたたかい言葉」があること。朝、登校してきて、こんなあたたかい言葉を見たら、「今日もがんばろう!」と思えます。「先生は、自分たちのことをよく見てくれている」と信頼感にもつながります。

 また、褒められた行動は、続けようと努力することでしょう。子どもたちの良い行動を強化することができます。自分はどんなことを評価するのか、担任の価値観を伝える場ともなりますね。

 ちなみに私は、黒板メッセージを書いたら(最近書いてないですけど…)、いつも朝の会で読みます。読まない子もいるので…(`⌒´)。
 でも、朝「褒められること」から子どもたちはスタートできるので、良いなと思います。(^_^)b
 先生が「褒める」黒板メッセージで、気持ちよく子どもとスタートしてみてはいかがですか?

2つの黒板のちがい。

 さて、温かい言葉は同じでも、A先生とB先生の黒板メッセージは、実はちょっと違います。違いが分かりますか?

 A先生は「きれいな字」を「すごい!」と褒めています。いいですよね。子どもたちの言葉や行動にアンテナを張って、たくさん褒めることで、子どもたちの行動はよりよい方向に進んでいくと思います。(褒めるのに困ったら「見えない力」を意識してみてください!!)
 
 一方で、B先生は「元気に登校したこと」を「うれしかったよ」と伝えています。…褒めているわけではありませんね。「登校することなんて当たり前じゃないの?」と思うかもしれません。でも、「うれしかったよ」って言われれば、あったかい気持ちになります。これは褒めるというより認めているのだと思います。また、「ありがとう」も、認める言葉としてかなり有効です。
 
「会えてうれしいよ。」「手伝ってくれてありがとう。」
→先生のためになっているよ。役にたっているよ。君には価値があるんだよ。と暗に伝えられる(*^-^*)

アイ(I)メッセージとユー(YOU)メッセージ

 ちなみに、B先生の黒板で使われている「うれしかったよ」は、アイ(I)メッセージと言われるものです。

アイメッセージとは、簡単に言えば、「主語を自分にして、自分の気持ちを伝える言葉」です。反対に「主語を相手にして伝える言葉」がユー(you)メッセージです。怒っちゃいそうな場面でも有効です。

例えば子どもが騒いでいるとき…。

Youメッセージ 
→(あなたは)いつまで騒いでいるの!?(あなたは)静かにしなさい!!
Iメッセージ  
→ 先生(私)困るな。みんなに伝えたいことがあるんだけど…。
  【静かになったら】(私は)助かるよ、ありがとう。

 「褒める」と「認める」。どっちがいいという話ではありません。「温かい言葉をかけて子どもを伸ばそう」とすることを、先生が意識していることが大事なんだろうと思います。 

「褒める」とき気を付けなければならないこと。

 ただ、「褒める」ときには、気をつけなければならないことがあります。先生方は、次のようなとき、子どもたちのやる気を引き出すために、どんな声掛けをしますか?

☆Aさんが、「先生!プリント配るの手伝ってあげる!」と、お手伝いをしてくれました。
 ①いい子だね。シールをあげるね。
 ②もうちょっときれいに配りなさい!
 ③お手伝いして、えらいね。
 ④ありがとう、助かるなあ。

正解(というか、デメリットが少ないもの)

①いい子だね。シールをあげるね。 → △

 先生のために働いていたのに、シールのために働く子にしてしまうおそれがあります。
 ①は、先生方ならダメなのはお分かりだと思います。全くやらない子の最初の動機づけのために、ごほうびを使うのは1つの方法です。(その場合その後シールとは異なる報酬【人の役に立っている・成長している等】に結び付けていく作業が必要になります)。
 ※下の記事に詳しく書いたのでよかったら見てください。

 ただ今回、Aさんは「先生のために」という思いをもって行動しているのです。それが「シールのために」に変わってしまう恐れがあります。

②もうちょっときれいに配りなさい! → △ 

  注意(しかる)ことで、その通りに動くようになりますが、怒られないと動かない子になるかも。
 ②は、言わずもがなですね。④で後述しますが、「もうちょっときれいに配ってくれると、先生うれしいな」「もうちょっときれいに配ると、みんな喜ぶんじゃない?」ならいい感じですね。

③お手伝いして、えらいね。 → △

 ただ褒めるだけでは、なぜ褒められたのか分からず「褒められるために動く子」にしてしまうかもしれません。

 ③は、悪くないのですが…うーん。以前私は、子どもを褒める時、けっこう「えらいね」という言葉を使っていました。
 でも「えらいね」って「なんでえらいのだろう?」と考えた時、微妙な言葉だなと思ったのです。「お手伝いをしているから?」「大人のいう通りにしているから?」「ルールを守っているから?」…間違ってません。

 でも、それをするとなぜいいのかは伝わりません。子どもの行動は強化されるかもしれませんが、「どうしてそれをするといいのか」が伝わらなければ、褒められなくなったら止めちゃいますよね。

 子どもに分かるように伝えるなら「お手伝いをして、先生やクラスのみんなの役に立っているね、えらいね。」「ごみひろいをして、みんなが気持ちよく過ごせるようにしているね、えらいね。」「大きな声であいさつをして、みんなの気持ちがよくなるし自分もやる気がでるよね、えらいね。」などとなるのですが、こんなに長い言葉言ってられないですよね…。

④ありがとう、助かるなあ。 → ◎

 この言葉から、子どもは「役にたてた喜び」を感じられます。人のために動こうとする子に育つでしょう。
 ④の「ありがとう」は、言葉の経済効率が高いですよね。たった5文字なのに、その行動の価値(人の役に立っている)と感謝の気持ちが伝えられるわけですから(上越教育大学の赤坂真二先生も「ありがとう」の大切さについては著書で述べられていました)。だから、私は「ありがとう」をたくさん使うようにしています。

 下の記事で、何を褒めるかという話をしました。

 「見えない力に目を向けて、自分の成長を感じられるように褒めればいい」としましたが、実は褒めなくたっていいのです。何のために褒めるのか。それは「自己肯定感を育むため」です。それなら、これまで述べてきたように、褒めるのでなく「ありがとう」といって「認める」ことでも自己肯定感を育むことはできると思います。

まとめ

 今回の内容は、以前、生活指導主任だったときに、下の本を参考に保護者向けに作成したスライドがもとになっています。

  全部で3つあって、「①子どものやる気を育てる言葉がけ」「②私メッセージで子どもの言動を改めさせる」「③幸せ気分でするしつけ」です。このうちの、①をもとに作りました。機会があれば、②、③もnoteにまとめ直します。

終わりに

 こんな立派なことを書きながら、私自身、この通りに行動するのは難しいです。イライラして叱ってしまうこともありますし…。「笑顔」を大切にしてがんばりたいです。まずは、教室に鏡をおいて自分の表情をチェックするところから始めようかな…。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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