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漁師をしてわかった地域の安売りとふるさと納税について

こんにちは、本保です。

2月下旬~3月はリモートで仕事を受けつつ、地元の方の漁のお手伝いをしながら生活しています。

先日、TwitterやFacebookでギンバソウの投稿をしたら、知人から予想以上にギンバソウ買いたいとありがたいお声をいただきました。中にはリピートしてくださった方もいまして、大変ありがとうございました。

おかげさまで今月だけで200kgくらいのギンバソウを知人に送らせていただきました。地元の漁師と話していて思ったことがありました。

今日はそのことについて書こうかなと思います。

ずばり、「安売りしてると地域が衰退する」と言うことです。
これは身を持って実感したので、

地方創生の狂犬、木下さんが既に記事にしていることがまるっと当てはまったので木下さんの記事のほうが100万倍良い記事なのですが、

自己の整理のためにも自分で体感したところの気づきを書こうと思います。

ちなみに木下さんの記事は以下です。

目次
①市場価値を知らないから、値段設定があいまい
②安売りするのは簡単、だけどそれじゃ未来に何も残らない
③喜んでもらことも大事だし、同じくらいお金稼ぎも大事
④ふるさと納税の訳あり品による安売り合戦
⑤訳あり品が地方衰退に関係する理由
⑥まとめ

①市場価値を知らないから、値段設定があいまい

まず地元のおっちゃんたちと話をしてると、全国の市場がいくらかを知らないんですよね。

「楽天 ギンバソウ」とか「ギンバソウ 相場」とかで調べれば、よその地域が「いくらで」「どのようにして」売っているのかわかるのですが、そういうことをしていない。あとは実際に市場にいって市場調査するとか。

相場を知らないと適切な値段設定ができないわけですが、地元のおっちゃんに普段いくらでやってるのかを聞いてみると、二束三文にもならない値段でやっていました。

この値段設定では、ガソリン代、人件費、箱代、とかのコスト考えると全然割に合わないのが正直なところです。

なので稼ぎをつくるためには、たくさんギンバソウを取らないといけなくなって、人も時間もたくさんかけなければいけないなと実感しました。

②安売りするのは簡単、だけどそれじゃ未来に何も残らない

①に繋がりますが、相場を知らないから世の中よりも全然安い金額で出荷をします。島の場合、今はまだ体制的に知人にしか送れないし大々的にやっていないので自力でなんとかなります。

でも世の中に出回ったときに、当たり前ですが安い方が選ばれやすい。でも薄利多売、利益率低い商品をどんだけ出しても全然手元にキャッシュが残らないので、こんな仕事やってられっかってなります。

そうなると、稼げない商売なんて誰も引き継がないわけですから、誰も事業を継続しません。結局安売りしてたら、後継者なんて育たないし、育つ前に食えないので辞める。
地域おこし協力隊できても3年後は食ってける未来がないので根付かないというのは目に見えてることなわけです。

③喜んでもらことも大事だし、同じくらいお金稼ぎも大事

地元の人たちは、自分が採ってきたものを食べてもらって美味しいと言ってもらうことが最大の満足。それはそれですごく良いことだし、自分も生産者の立場になったからわかるんですが、やっぱり美味しいって言ってもらうのってすごくすごく嬉しいし、それだけでやりがいのある仕事。

でも、そうやって人さまにものを送り続けていくためにも、適正な対価をもらうってこともすごく大事。

自分だけ自己犠牲して、他人に喜んでもらうなんての偽りの幸せでしかなくて、短期的にはそれで良いのかもしれないけど、中長期的に考えたら破綻する。商売も恋愛も誰かの自己犠牲は誰の幸せにもつながらないと思う(恋愛はしらんけど)

つまり、今の島で足りないのは、ちゃんとお客さんが喜んでくれてちゃんと自分たちの事業が持続可能な状態になる適正対価をいただくってことだと思った。

僕の島だけじゃなく、地方全体でいかに「稼ぐ」ということが大事なのかをふるさとに戻ってきたからこそ実感した。

④ふるさと納税の訳あり品による安売り合戦

この「安く・多くが良い」みたいなのってふるさと納税でも全国で起きていて、地域の安売り合戦が目立つなぁと思ってます。何かというと「訳あり品」の返礼品の増加。

訳あり品とは、通常の商品よりも見た目やカタチが悪くて一般市場には出せないけど、味は通常の商品と変わらないB品みたいなもの。なので、通常の商品と同じ金額だけど、量が少し多かったりというのが多い。それがふるさと納税でも訳あり返礼品で人気なコンテンツになってます。

各ポータルのランキング見てもらえばわかるように訳あり品ってすごく多い。まとめサイトでもたくさんそういうのがありますよね。

ここ最近はコロナ禍で大変な事業者さんが全国にいらっしゃるので、訳あり品の数もかなり増えているように見える。

訳あり品は、「生産者の売上にもつながるし、寄付者としても量が少しお得にもらえてハッピーだし、自治体も寄付が集まりやすいし、三方良しだよね」と思うかもしれないけど、果たしてそうなのでしょうか?

大前提として「本当に困っている」事業者さんには良いと思います。

しかし、訳あり品の行き過ぎた増加は、結果的に事業者の営業力や商品力を落とすことになり、ひいては地域全体のビジネスの力を落とすとことになるのではないかとおもうので、あまり良くないと思っています。

なので、僕個人の意見としては、訳あり品にもある程度の数量制限をかけるとか、条件を設けることをして出品するほうがいいだろうと思っています。

⑤訳あり品が地方衰退に関係する理由

訳あり品は中長期的に見て、事業者の利益率が悪いと思うから、というのが最大の理由です。以下の例で説明します。

例)牛肉の返礼品(返戻率3割)
▼通常の品
1万円の寄付で、100gのお肉がもらえる
⇛事業者売上:3000円(30円/g)

▼訳あり品
1万円の寄付で、150gのお肉がもらえる
⇛事業者売上:3000円 ⇛(20円/g)

上記の場合、寄付者は同じ寄付で1.5倍もらえるからハッピーです。自治体も同じ1万円の寄付をいただくのでハッピーです。
では、事業者の売上はという同じ3,000円の売上になりますが、g単価の売上が変わります。

何が言いたいかというと、単純な話、訳あり品がでれば出るほど、事業者の利益率は落ちますということは同じ金額を稼ぐにも1.5倍多く生産をしたり労働したりしなければいけないということになります。

単純な訳あり品の話なので、該当しないものもあるかもしれないのですが。

ふるさと納税ではお得な返礼品のほうが寄付が集まりやすく、聞いた話によると、ある事業者はあえて通常品を訳あり品のようにしてお得な状態で出しているとのことも。それはもう訳ありなのが通常ということでしょ。笑

こうやって利益率を下げるよりも、訳あり品を活用して商品開発したり、通常品の販路開拓を頑張って売上を増やしたほうが中長期に見れば事業は安定するのではないでしょうか。

僕の大好きな百貨店バイヤーさんは、

『価格』ではなく、『価値』で勝負する

と言ってました。正直、値段や品質などをさげればモノは簡単に売れますが、それでは価値が上がらず、持続的な事業になりません。そんなことがでいるのは大手の大量生産できる企業くらいです。

再度お伝えするように、本当に困っている事業者さんが訳あり品として出しているなら支援すべきと思います。

しかし、訳あり品が流行だから乗っかる的なことをすると、事業者を疲弊させたりなおさら安売り合戦に身を投じて、地域自らが衰退の道に行くのではないかということを危惧しています。

また、自治体にとっては通常品の1万円も訳あり品の1万円も歳入としては同じ1万円です。だから事業者の利益率を考えているところがどのくらいあるかは疑問です。つまり、自治体も事業者もふるさと納税の委託を受けてる中間事業者もそこのところを考えて訳あり品の取り扱いを考えることが、地域の未来をつくることですごく大事なことだと思います。

⑥まとめ

ということで、漁師を経験してわかったことと、前職のふるさと納税にいたときに疑問に思っていたことがつながったのでまとめて書きました。

ここからじゃあ本保はどうするんだという話ですが、まずは粟島の漁業を稼げるような仕組み体制づくりや、新しい展開をしていこうとおもいます。
これまでに書いたような安売りせずにちゃんと地域に価値を残すということをまずは自らがテスト検証していかないとなというところです。

地方における安売りが続くと、ふるさとに戻りたくても仕事がなくて戻れない人が大勢いる(と思っている)ので、そういう人たちがいつでも戻りたいときに気軽に戻ってこれるような仕事環境を整備できるように頑張ろうと思います。

ではまたの更新をお楽しみに!

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