なぜ学生は公共機関が大好きなのか?

私がまだ若いコンサルタントだった頃、よく新卒採用のお手伝いとして大学生の集まる説明会の後の懇親会などに駆り出されたことが多かった。学生に囲まれながらたくさん質問を受けるのだが、その中で意外にもかなり多い質問が「公共部門へのコンサルティングはどれほどあるのですか?希望すれば関われるのですか?」というもの。

コンサルタントというのは別に公共部門でも一般ビジネスの会社でも組織改革のテーマなど共通することは多いからどのコンサルティング会社でもクライアントに公共機関を持っている。

ただコンサルティング料を支払える大手企業から危機意識が高いビジネスの戦略立案に関する依頼を受けて期待に応えなければならない戦略コンサルティングでは、やはり民間ビジネス部門がメインではある。

だが、学生の希望になぜか公共部門のコンサルティングに関わりたい意思を強く感じたものだ。公共部門のコンサルティングの方が社会的意義が高いというニュアンスで言ってくる学生さえいた。

確かに変革が求められるという点では公共部門のコンサルティングの意義は大きい。私の関わった中央官庁案件では、民営化する組織をどうKPI(つまり数値化指標)を持って管理するか、というテーマだったので、売上や利益目標という概念がなかった公共部門にそのマネジメントを浸透させることの意義は非常に高いと今でも思う。

官僚になっても組織を動かせる40代後半以降まで待てない、だったら外からコンサルタントとして、という気持ちもわかる。

しかし、私が学生からの質問に感じた違和感は、公共部門=公共性=意義が大きい、という三段論法にある(かなり単純化しているのは承知の上)。

そのまま単純化して言うならば、この対抗軸は、ビジネス=金儲け=公共性はない=儲けても意義は小さい、と言う潜在意識を感じる時がある。

一方で私のいる(&いた)グローバル企業では、自分たちのやっていることに意味を感じさせることが実に上手だ。

例えばソーシャルメディアであれば一人のユーザーの小さな声が、災害時には命を助けることになり、セクハラ被害者であれば大きなムーブメントを起こすことになり、障害者のリアルな生活を世の中に知らせることにつながる。

E-commerceであれば、買い物を便利にすることで今まで簡単には商品が手に入らなかった山間部の村民が便利さを享受できることで生活を豊かにする縁の下の力持ちであることが映像などで紹介される。

そうしてその世の中を良くするために社内でどんな人がどう業務を支えていて経営陣がそういったUnsung Hero(目立たないヒーローたち)を賞賛する言葉や映像が流れたりする。

売上や利益といった企業として絶対に追わねばならない数字にコミットすることはもちろん大前提である。だから首切りを含めたリストラもこう言ったグローバル企業はバンバン行う。売上・利益に貢献できなければ職を失う。だがそれとビジネス自体が社会に役に立ち少しづつ世の中を良くすることに1ミリずつでも近づける企業努力をすることは何も矛盾しない。

特に昨今はGAFA中心に「儲けるだけでなく社会に貢献を」と言われることが多いが、そんなことは当人ははなから承知で、どちらかと言うと古典的日本企業よりもはるかにビジネスを通じた社会への貢献を最初から意識しているし実際に投資している。

昔グローバルのCEOが社内のミーティングでさらっと言った「We are not profit machine」と言う言葉はずっと印象に残っている。そのわずか20分前まではずっと来期にどれだけの利益拡大をしたいかを具体的にプレゼンして厳しいことを熱弁振るっていたのに、だ。

そもそも利益が生まれるためにはそこに原価以上の価値を感じる顧客がお金を払わなければ成立しない。そこには世の中の役に立つ価値は最初っからあるのだ。

翻って、なぜか中学生、高校生、大学生に対してビジネスがどう世の中を良くするために役立っているかを知ってもらう機会が実に少ない。

医薬品メーカーとか、都市開発などは中高生にもわかりやすい。一方でお菓子メーカーや飲料メーカーもわかりやすいだろう。

しかしソーシャルメディア、旅行予約サイト、派遣会社、保険会社、システムインテグレーター、穀物輸入会社、などどうだろう?

どれだけの中高生がこれらのビジネスの社会的意義を理解しているか、どれだけの大人がそのビジネスの世の中での意義を面白くワクワクさせられるように説明できるだろうか?

これはビジネス側の責任であると思う。我々はもっと社会に対して(ポジショントークにならない程度に自然な形で)ビジネスが成立している意味や顧客の笑顔をもっと伝えていかねばならないし、そこに投資しなければならない。それも表面的にではなく人の顔が見えるくらい生々しく伝える。

それをまさにソーシャルメディアで発信していけばいいのであり、中高生は単に芸能人アカウントや友人アカウントと繋がるだけでなく、こう言ったビジネスアカウントの情報を例え広告で流れてきた投稿であったとしても理解する素養が必要だし、親や教師たちは中高生が常にバイアスを持たずに将来を決められるようこう言ったビジネスアカウントが発信する情報を理解するために手伝いをしていかなければならないと思う。

まずは企業がソーシャルメディアを使いこなすことから支援するとしよう。





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