アールト大学の授業-1- ロシアでのビジネス展開(Doing Business in Russia)
アールト大学のMaster(大学院)は、フィンランドの他の大学とは異なり、ほとんどの授業が英語で開講されています。
School of Businessに限って言えば、ビジネス法専攻の授業以外全て英語開講です(ビジネス法はフィンランドの法律について学ぶので、フィンランド語が必要なのは当たり前っちゃ当たり前)。
というわけで、交換留学生は何でも授業取り放題。今回は、自分の専攻とはちょっと違いますが、マーケティング専攻の科目として開講されている"Doing Business in Russia(ロシアでのビジネス展開)"について取り上げます。
"Doing Business in" シリーズ
このシリーズは、ある国でのビジネス展開について、フィンランド(ヨーロッパ)から見て特異な国について取り上げ、フィンランドの企業(あるいは、より一般的にEU域内の企業)がどのように展開すべきなのかを考える授業です。2017年度には、以下の2種が開講されていました。
・Doing Business in China
・Doing Business in Russia
日本が無いのは残念ですが、やはりマーケットとしては小さいのでしょう…。
取り扱う範囲は、法制度や商習慣、マーケティング戦略、消費者行動などに加えて、汚職や賄賂の実態と対処法など、多岐に渡ります。
「ビジネス環境の一部として見る汚職」
授業の構成
アールト大学School of Business(以下Aalto BIZ)での授業は、基本的に以下の構成になっています。6単位科目(日本で言うところの、4単位科目)は基本的に同じ構成です。
A.知識のインプット
次回の授業に関連する論文を2本ほど読み、まとめて提出(教員が採点)
↓
授業内で疑問点等について討議
B. アウトプット
授業内で、実際に企業に関する事例課題が与えられる
↓
授業時間外に、グループで作業
↓
最終回に企業側にプレゼン、企業側が採点
アールト大学では(Aalto BIZだけではなく全学的に)、知識のインプットにはあまり力点が置かれません。Book Examといって、本が数冊指定され、試験日が設定されて、その日までに独学で勉強してこい、という科目もあるぐらいです。
授業時間もそこまで長くないのですが、そのかわり、グループワークがとても長い時間かかります。
このDoing Business in Russiaでは、
「あるフィンランド企業が、実際にロシアに展開しようとしている。どのような戦略をとるべきか提案しなさい。」
というお題が与えられ、この件を実際に受注しているロシアのコンサルタント会社に採点される、という形になっていました。
中間発表、最終発表の場が設定されており、中間発表でFBを受けて、最終発表で形にする、というスケジュールが組まれていました。
中間発表は、サンクトペテルブルクで
びっくりしたのは、中間発表の場所です。
Doing Business in Russiaというからには、実際にロシアの雰囲気を感じる必要があるということで、サンクトペテルブルクにあるホテルの一角が発表場所に指定されていました。
しかも、一泊二日。旅費(ヘルシンキ―サンクトペテルブルク間の新幹線代、ホテル代、バス観光代)、ビザ代、食費(夕食と朝食)は大学持ちでした。
Pietari、がサンクトペテルブルク
地元のコンサルタントの方と、ロシア式のディナーを頂いたり、観光地に案内してもらったりと、初ロシアを堪能させてもらいました。
このディナーの場では、ロシア系フィンランド人が多くいたのですが、ロシアのLGBT問題などから発展して、「日本の女性の権利」や「日本のLGBT保護」について深く質問されるという展開になってしまいました。追求、というより「どんな感じなん?」というものでしたが、自分の無知さを感じたのと同時に、こういった会話が一般的に行われるということにも驚きました。
何を得たか
まず、この授業がアールト大学でほぼ初めての授業だったので、Aalto BIZの授業がとても実践的なことに驚きました。理論と実践の往復運動を行うことで、単にビジネススクール、単に学術研究、のどちらでもない授業を展開していました。
第二に、フィンランド人のプレゼンのうまさにも驚愕しました。流石中学・高校から発表慣れしているとあって、プレゼンのデザイン力の高さ、発表の際のハキハキとした展開には「勝てないな…」と思ったものです。
第三に、授業の内容そのものについて触れると、(当たり前ではありますが)「フィンランドから見たロシア」という、全く新しい視点を得られました。日本側からロシアを見ていると、「ウラジオストク」とか「中古車の輸出」とか「天然ガスの輸入」とかに注目されますが、フィンランドから見れば、「サンクトペテルブルク」、「家具などデザイン品の輸出」、「生活用品の輸入」になるわけです。生活用品なんて、普通の人が日帰りで物価の安いロシアに行って買ってくる、なんて日常茶飯事なようです。
最終レポートは、しんどかったという思い出しか無い
以上です。
次回はアールト大学の名物、デザイン・ファクトリーについて取り上げます。
フィンランドのこと、アールト大学のことをより知ってもらうために書いてます。応援していただけるととても嬉しいです。