#1644 トップダウンとボトムアップの力量形成~演繹的アプローチと帰納的アプローチの往還~
教師の力量形成には「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」があるように思う。
トップダウン方式では、教師は周りから何らかの「教育原理・理論」「指導技術」「ハウツー」を学ばされる。
それは「先輩教師からの教え」かもしれないし、「手にとった教育書からの学び」かもしれないし、「研修内容」かもしれない。
その教師が「必要だから」という理由ではなく、周りから「必要だよ」と言われ、トップダウンで学ぶことを意味する。
そして、「いつか必要になる」「いつか活用する」と信じ、それをメモや記憶に残したりする。
しかし、このようなトップダウン方式「だけ」を採用することは、自分の役に立たないものを学ぶ可能性が高いため、非効果的な方法と言わざるを得ない。
一方、ボトムアップ方式では、教師は自分の「必要」に応じて、「教育原理・理論」「指導技術」「ハウツー」を学ぶことになる。
現状に応じて、「先輩教師からの教え」を乞うたり、「必要な教育書」を読んだり、「必要な研修会」に参加したりする。
自分の「未熟な面」を少しでも成長させるため、教師として「足りない部分」を補うためなど、自分の「必要」に応じて、ボトムアップで学ぶことを意味する。
そして、「必要」に応じて学んだ事柄を明日からの実践に生かしていく。
しかし、このようなボトムアップ方式「だけ」を採用することは、学ぶための時間がかかるため、非効率的な方法だと言わざるを得ない。
「トップダウン」でも「ボトムアップ」でも、どちらかに偏ってしまうと、非効果的or非効率的な力量形成になってしまうのだ。
ではどうしたらいいのか?
それは両者をミックスすることである。
「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」を連関させるのである。
私は自分の興味・関心に合う教育書を見つけたら、とにかく片っ端から読む時期があった。
それは「将来のため」「いつか活用するため」であった。
まさに「トップダウン方式」である。
これだけでは、本当に学んだことが活用されるか分からないので非効果的である。
しかし、実際に教育現場で実践をしていると、うまくいかないことにぶつかる。
失敗したり、自分の未熟さを痛感したり、実践の「穴・不備・不足・弱点」を見つけたりする。
つまり、「問題」にぶつかるわけである。
そんなときに、「問題を解決してくれる教育書」を探すのは手間がかかる。
教育書を探し、購入し、読むための時間がかかるのだ。
「ボトムアップ方式」は、とても非効率的なのである。
そこで活用するのが「トップダウン方式」で蓄積しておいた学びである。
私は教育書を読んだら、このようにnoteにまとめるようにしている。
それも、「個別具体的な場面」でしか使えないハウツーではなく、「より広範囲な場面」で汎用的に使える原理・理論を残すようにしている。
だからこそ、自分が教育実践で壁にぶつかったときは、過去に蓄積しておいた学びをもってきて、それを活用するのである。
前の記事では、「自己の実践の大反省会」をしたわけだが、全ての項目で「過去の自分の記事」を引用・紹介している。
この記事のように、わざわざ新しく教育書を読まなくても、「過去の学び」をもってきて活用することができるのである。
私は今でも、自分の興味・関心に応じて、気になった教育書を複数購読している。
「トップダウン」の力量形成を続けている。
また、自分の実践の「穴・不備・不足・弱点」が見つかったとき、「過去の学び」で解決できない場合は、新しく教育書を購読するようにしている。
「ボトムアップ」の力量形成も続けているのだ。
このように、「トップダウン」と「ボトムアップ」を相互に連関させることで、効果的・効率的に力量形成を図っていくことができるのある。
そして、このような「トップダウンとボトムアップの往還」により、教師として重要な「概念的知識」を獲得していくことができるのである。
このことは、「授業実践」「子どもの学習」においても当てはまるように思う。
学校教育では、「学習指導要領」「教科書」があるので、どうしても「トップダウン」で教育内容が決まることが多い。
これでは、本当にその子どもの役に立つか分からないし、学習意欲も湧かない。
しかし、「いつか役に立つ」「いつか活用できる」可能性を残しておくことができる。
特に大切なのは、「個別具体的な知識」ではなく、汎用的に活用できる「概念的知識」や「教科等特有の見方・考え方」である。
しかし、これも「必要な場面」がなければ、「宝の持ち腐れ」となる。
そこで重要になるのが「ボトムアップ方式」である。
いわば「総合的な学習の時間」「生活科」「特別活動」などの「探究的な学び」である。
このような学習は「子どもの生活」「子どもの実態」「子どもの興味・関心」に根ざしている。
その中で、子どもが「壁」にぶつかり、「問題」を生起させたりする。
その問題を解決する際に、必要な「知識・技能」をいちいち学んでいたら効率が悪い。
そこで必要になるのが、「教科教育で学んだ知識・技能」「概念的知識」「見方・考え方」である。
つまり、「トップダウンで蓄積しておいた学び」である。
このように、子どもが「ボトムアップ方式」で必要と感じた知識・技能が、「トップダウン方式」で学んだ知識・技能と合致することが重要となる。
これにより、「知識・技能」「概念的知識」「見方・考え方」を活用することができ、それがより強固で、幅広く、奥深い「概念」に変容していくのである。
まさに「トップダウンとボトムアップの往還」が必要なのである。
以下では、関連する過去の記事を紹介する。
上記の記事で述べられている通り、「トップダウン方式」は「演繹的アプローチ」である。
一方、「ボトムアップ方式」は「帰納的アプローチ」である。
「演繹的アプローチ」だけを採用しても、「学習の転移」が生じない事実的知識を学ぶことで終わってしまう。
また、「帰納的アプローチ」だけを採用しても、目の前にある問題解決をすることはできるが、それが「概念的知識」となることはない。
必要なのは「両者のアプローチの往還」である。
「演繹的アプローチ」では、転移が生じない「事実的知識」だけではなく、転移可能性のある「概念的知識」を指導する。
「概念的知識」は抽象的なので、「いつか活用できる」「転移する可能性がある」と言えるのだ。
そして、「帰納的アプローチ」では、子どもの生活・経験から問題を見出し、それを解決するために、「演繹的アプローチ」で学んだ「概念的知識」などを活用していく。
だからこそ、これからの教育では、「帰納的アプローチ」が自然にできる「総合的な学習の時間」や「探究的な学び」が重視されるのだ。
この「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」が往還することで、「概念的知識」がより強固なもの、幅広いもの、より深いものとなっていく。
このような「三次元カリキュラム」を導入することで、子どもは概念の「一般化」「永続的理解」に到達するのである。
この構造は「教師の力量形成」でも同様なのである。
教師は自己の力量形成として「トップダウンとボトムアップの往還」を続けていく。
そして、授業実践においては、「演繹的アプローチと帰納的アプローチの往還」を意識し、子どもに「概念的知識」を獲得させていく。
この「両者の往還」がとても重要なのである。
ぜひ上記のことを念頭に置き、さらに精進していきたい。
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