#1720 這い回る主体的学習!?
最近、中堅教諭資質向上研修というものに参加した。
研修会の中で、学習指導について他校の先生方と交流する時間があった。
その中では、なんとも素晴らしい「今のご時世らしい実践」がたくさん聞かれた。
「問いづくりを大切にしています」
「探究のプロセスを踏むようにしています」
「子どもたちに単元づくりを委ねています」
「ICTをばんばん使っています」
このような話題に溢れていた。
うん、確かに「今のご時世らしい実践」ばかりで「聞こえ」はよい。
しかし、課題点も挙げられた。
「上記のような、子ども中心の主体的学習を進めているのに、学力が身に付かない」
「基本的な知識・技能が習得されない」
このような課題が話題に挙がったのである。
つまり、今流行りの「主体的学習」を展開しているのに、それが「這い回る」だけのものとなっているのだ。
活動をただしているだけで、肝心の「学力」が身に付いていないのである。
これでは、「本末転倒だなあ」と感じた。
そして自分も昨年度、ICTをばんばん使い、「主体的学習もどき」のような実践をしており、学力が二極化していたことを思い出した。
「問いづくりを大切にする」
「探究のプロセスを踏むようにする」
「子どもたちに単元づくりを委ねる」
「ICTをばんばん使う」
このような実践は、確かに今流行りのものであり、現場に求められている実践ではある。
このような、子ども中心となる「主体的学習」を進めることが、今現在求められている授業スタイルである。
しかし、そこに基本的な知識・技能などの学力が伴わなければ、まさに「羊頭狗肉」となる。
このような「羊頭狗肉的な実践」を打破し、子どもたちに学力も保障するためにはどうしたらよいのだろうか?
以下で、3点の策に整理していく。
1 子ども個々の見取りとオーダーメイドのフィードバック
おそらく上記のような「主体的学習」の実践では、
「問いづくりを大切にする」
「探究のプロセスを踏むようにする」
「子どもたちに単元づくりを委ねる」
「ICTをばんばん使う」
こと自体が目的化してしまっている可能性がある。
しかし、目的は子どもたちの学力向上である。
つまり、子どもたち個々の学習状況を把握し、形成的評価を働かせることが必要となる。
まずは、いわゆる「見取り」が必要なのである。
「この子は、目標に対して、現在どの位置にいるのか?」
このような視点をもち、個々の子どもの学習状況を丁寧に見取ることが求められる。
そして、見取りが終わったら、個々の子どもの現在地に応じて、その子どもに合ったフィードバックをすることが重要だ。
いわゆる「オーダーメイドのフィードバック」である。
「目標からの現在地が遠い子ども」に対しては、つまずきを解消するために、教師が個別指導をする。
「目標からの現在地が中くらいの子ども」に対しては、子ども同士の学び合いを促すように声をかける。
「目標からの現在地が近い、またはすでに到達している子ども」に対しては、モチベーションを維持させるような声かけをする。
このように、「子どもの現在地と目標との差」に応じて、オーダーメイドのフィードバックをすることが求められるのだ。
そうすれば、最低限の学力保障は可能なはずである。
今流行りの「主体的学習」をなぞるだけではダメなのだ。
子どもの個々に対する「形成的評価」こそが、学力を保障するのである。
これを文科省では、「指導の個別化」と呼ぶのだ。
2 資質・能力の質的段階を踏ませる
学習活動を組織する際に必要なことは、「最低限の明示と上限の解放」である。
これを実現してあげるには、資質・能力を質的段階に分け、共有化を図ることが重要だ。
➀知る段階
②できる段階
③説明する段階
④創る段階
このように、資質・能力を段階的に分ける。
最低限の学力保障としては、➀と②を全員の子どもに習得させるようにする。
これは「1」で述べた「形成的評価」「見取りとフィードバック」「指導の個別化」により実現させる。
そして、上位層の子どもたちには、③や④の段階にいけるようにする。
知って、できるようになった学習を他人にわかりやすいように説明する。
できるようになった学習と同じ構造の問題を創ることができる。
このような状態になったとき、真に「わかる」ようになるのだ。
つまり、「事実的知識が概念的知識になった」と言える。
このように、「資質・能力の質的段階」を共有し、最低限の明示と上限の解放を実現するのである。
学級の子ども全員を同じステージに到達させることに躍起になる必要はない。
最低限の基準に到達させ、あとは子ども個人の能力に応じて「いけるステージ」にまで登ってもらうのである。
これを文科省では、「学習の個性化」と呼ぶのだ。
3 「見方・考え方」で指導の個別化と学習の個性化をつなぐ
ここまで、「1」では指導の個別化を、「2」では学習の個性化を話題にしてきた。
この両者を橋渡しする役を担うのが「見方・考え方」である。
教科等特有の「見方・考え方」を教師が明確に意識することが重要となる。
そして、それを子どもが働かせるように促したり、無自覚に働かせたことを自覚させたりする。
これにより、子どもが自在に「見方・考え方」を活用できるようにする。
このような「見方・考え方」が機能することで、「知る」だけの事実的知識から、「わかる」という概念的知識に変容するのである。
つまり、主体的学習の中に「見方・考え方」が含まれているかどうかがポイントとなる。
「主体的学習」をなぞるだけに終始するのではなく、「見方・考え方」が機能するように、教師も子どもも意識することが必要なのだ。
それが「指導の個別化」と「学習の個性化」をつなぐことになり、確かな学力の定着につながるのである。
以上、「這い回る主体的学習」にならないための策を3点整理した。
主体的学習を志向しつつも、子どもたちの学力保障ができるよう、上記のことを意識して、授業実践を進めていきたい所存である。