見出し画像

#1883 見方・考え方を可視化・蓄積・活用せよ

現在の学校教育において、「個別最適な学びと協働的な学び」がトレンドワードとなっている。

最近の教育書には、このワードが少なからず含まれている。

しかし、「個別最適な学びと協働的な学び」を実現すること自体が「目的」なのではない。

「個別最適な学びと協働的な学び」は「主体的・対話的で深い学び」を実現するための「手段」であるのだ。

そして、「主体的・対話的で深い学び」こそが、子どもたちの「資質・能力」を育成することに寄与するのである。

詳しくは過去の記事で述べた通りである。

このように、最終的な目的である「資質・能力の育成」のためには、「主体的・対話的で深い学び」を実現しなければならない。

そして、「主体的な学び」は「個別最適な学び」によって、「対話的な学び」は「協働的な学び」によって、それぞれ実現することができるだろう。

しかし、問題は「深い学び」の実現である。

ここが一番の肝となる。

「深い学び」を実現しなければ、「資質・能力の育成」という目的を達成することはできない。

では、「深い学び」の実現のために、必要となる要素は何か?

それがまさしく「見方・考え方」なのである。

上記の過去記事でも述べた通り、「見方・考え方」こそが「深い学び」を生み出す絶対条件なのである。

また、子どもたちに身に付けさせるべき「学力」は三層構造と言われる。

①知っている・できるレベル
②わかるレベル
③使える・創造するレベル

の三層構造である。

➀は「事実的知識」「手続き的知識」と言われる。

しかしこのような知識は、個別具体的なものなので、文脈を越えて転移させることができない。

つまり、③のような「学習の転移」「知識の活用」を実現できないのである。

そこで必要となるのが、②の「概念的知識」つまり「見方・考え方」なのである。

このような汎用的な知識を習得することができれば、③のように文脈を越えて転移・活用させることができる。

子どもたちにより深い「学力」を形成させるためにも、「見方・考え方」は必要不可欠な要素なのである。


ここまで、「見方・考え方」の必要性・重要性を整理してきた。

以上のように、「深い学び」「資質・能力の育成」「学力の形成」のためには「見方・考え方」という要素が最重要なのである。

しかし、ここまで重要な「見方・考え方」であるのに、現場の教室ではあまり重要視されていないことが多い。

これまで通りの旧態依然とした一斉授業においても、ICTをフル活用した子ども主体の学習においても、その教科等特有の「見方・考え方」が重視されているとは言えない。

これでは、前者においては「昔のまま何も変わっていない」し、後者においては「ただ流行に乗っているだけ」としか言いようがないのだ。

「見方・考え方」を教師も子どもも意識できていない授業は、全く本質的ではないのである。


そんな課題意識をもっていた私は、過去記事でも述べた通り、今年度より、「見方・考え方」を教室に掲示するようにしている。

しかし、この実践にも限界が見えてきた。

教室の壁の面積には「限り」がある。

重要な「見方・考え方」を多く取り上げ、それを掲示していくのにスペースが足りないのである。

さらに、「見方・考え方」の重要性を教師だけが意識しても意味がないのだ。

実際、「見方・考え方」が「子どもたち自身のもの」になっていないので、教室に掲示されたものを子どもたちは見ようとしないのである。

「見方・考え方」について、子どもの自己選択・自己判断・自己調整の機会がなかったせいである。

なので、子どもたちはそれらを活用することがなかったのだ。

では、どうしたらよいか?

教師だけではなく、子どもたちにも「見方・考え方」の重要性を意識してもらい、活用してもらうためにはどんな工夫が必要か?

それは、「見方・考え方」を子ども自身の表現で可視化するということである。

これは、前回の記事で紹介した、樋口万太郎氏の「カード実践」から着想を得た。

樋口氏は、「カードに書く」というアナログの実践をしている。

しかし、私はデジタルでの実践に挑戦したい。

デジタルを使えば、文字の入力・修正が容易となる。

そして、算数科の学習だけでなく、様々な教科等でも活用していきたい。

そのため、デジタルの方が、整理・保存・蓄積しやすくなるだろうと考える。

このように、教科等の学習ごとに、自分なりの言葉で「見方・考え方」を表現・可視化し、デジタル機器に蓄積させていく。

そして、当該教科等の学習の際に、デジタル機器を開き、必要な「見方・考え方」を目の前の課題・問題に活用してもらう。

このような実践に挑戦していきたいのだ。


現在、巷では「個別最適な学びと協働的な学び」「ICTやAIの活用」といったトレンドワードを使った書籍がたくさん溢れている。

しかし、このようなトレンドワードに飛びつき、キラキラしたように見える実践を追試してもあまり意味はないと言える。

追試すべきかどうかを見極めるポイントは、やはり「見方・考え方を重視しているかどうか」である。

「見方・考え方の重視」がない実践は、残念ながら、トレンドにただ乗っかっている「価値のない実践」と言うしかないだろう。

私がこれから授業を構想する際は、「見方・考え方」を重視するようにし、「深い学び」の実現を目指していきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?