#1679 今の学校教育で求められていることを勝手に解釈してみた
『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、 協働的な学びの実現~(答申)』では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」という新しい概念が打ち出された。
まずは、「個別最適な学び」とは何かを整理していく。
同答申では、以下のように2つの原理から成り立つことが書かれている。
つまり、「個別最適な学び」は「指導の個別化」と「学習の個性化」から成り立つということだ。
前者は、学習指導要領による最低限の目標に対して、子供個々のペースに応じて到達させることを意味する。
後者は、子供個々の興味・関心に応じて、探究的な学習を保障することを意味する。
このように「指導の個別化」と「学習の個性化」を実現することで、子供たちの「個別最適な学び」を保障することができる。
次に、「協働的な学び」とは何かを整理する。
つまり、子供一人一人や関わる他者たちがもつ「異なる考え方」が組み合わさり、それぞれの子供が「よりよい学び」を生み出していくことが「協働的な学び」と言うことができる。
そして、ここまで整理してきた「個別最適な学び」と「協働的な学び」は対立する概念ではない。
同答申では、両者を一体的に充実させることを強調している。
このように、両者を一体的に充実させながら、「主体的・対話的で深い学び」の実現につなげていくことが重要である。
そして、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現する際は、「GIGAスクール構想」で整備されたICT機器を効果的に活用することが求められる。
上記のように、ICT機器の適切な活用により、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現がスムーズに進むのである。
では次に、「個別最適な学び」と「協働的な学び」により実現させるべき「主体的・対話的で深い学び」について、『学習指導要領 総則編』により整理していく。
まずは、「主体的な学び」である。
上記のように、「主体的な学び」においては、
➀学習に興味・関心をもつこと
②見通しをもって粘り強く取り組むこと
③自己の学習活動を振り返ること
が重要であることが分かる。
これは「個別最適な学び」との関連が非常に強い。
「個別最適な学び」を実現することで、学習が子供にとって自分事となり、興味・関心をもったり、見通しをもったり、学習を振り返ったりすることにつながる。
次に、「対話的な学び」である。
上記のように、「対話的な学び」では、
➀子供同士の協働・対話・交流
②大人との対話・交流
③参考図書の活用
が重要であることが分かる。
これは「協働的な学び」との親和性が非常に強い。
様々な他者がもつ「異なる考え方」が組み合わさることで、それぞれの子供の学びが広がったり、深まったりするのである。
そして、重要な「深い学び」である。
上記のように、「深い学び」では、
➀知識を相互に関連付けてより深く理解すること
②情報を精査して考えを形成すること
③問題を見いだして解決策を考えること
④思いや考えを基に創造すること
が重要であることが分かる。
そして、このような学びを実現するための条件として、「見方・考え方を働かせること」が強調されている。
つまり、「深い学び」の実現には、「見方・考え方」が必要不可欠であることが分かる。
ということで、ここからは「見方・考え方」について深堀りしていく。
同じく『学習指導要領 総則編』より整理していきたい。
上記のように、「見方・考え方」とは「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方であることが分かる。
また、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなし、学習と社会をつなぐための重要な概念であることが分かる。
よって、教師の専門的な教材研究が必要とされ、教師が各教科等特有の「見方・考え方」を意識することで、それを子供たちにも働かせていくことができると言える。
上記のように、「見方・考え方」を子供が働かせることで、
➀知識を相互に関連付けてより深く理解すること
②情報を精査して考えを形成すること
③問題を見いだして解決策を考えること
④思いや考えを基に創造すること
という「深い学び」を実現することができるのである。
そして、「見方・考え方」は「個別最適な学び」と「協働的な学び」においても重視すべきものであり、それにより「深い学び」が実現される。
なぜなら、「個別最適な学び」と「協働的な学び」は、「主体的・対話的で深い学び」を実現する手段であるからだ。
よって、「主体的・対話的で深い学び」にするためには「見方・考え方」が必要であるため、必然的に「個別最適な学び」と「協働的な学び」においても、「見方・考え方」は必要不可欠になるのである。
そして、「主体的・対話的で深い学び」の実現は、「子どもの資質・能力の育成」のための手段でもある。
つまり、上記のような「主体的・対話的で深い学び」が実現されることで、子どもの資質・能力を育成することができるのだ。
最後に、「育成すべき資質・能力」について整理していく。
まずは、「知識・技能」である。
上記のように、「知識・技能」は単独では成立しないことが分かる。
「知識・技能」の土台があることで、「思考・判断・表現」が可能となり、「学びに向かう態度」も涵養されていく。
逆に、「思考・判断・表現」の実現や「主体的に学習に取り組むこと」により、「知識・技能」が必要となったり、それらがより確かなものとして習得されるのだ。
また、上記のように、「知識・技能」は個別的で事実的なものだけであってはならない。
知識や技能同士が関連付き、他の学習や生活の場面でも活用できるような質の高い「知識・技能」である必要がある。
このような「概念的知識・技能」を獲得していくためには、やはり「見方・考え方」を重視することが求められる。
「見方・考え方」を働かせることで、知識・技能同士が有機的に関連し、概念的な知識・技能に変容していくのである。
次に、「思考力・判断力・表現力」である。
上記のように、「思考力・判断力・表現力」とは、既得の知識・技能を活用する力であることが分かる。
さらに、「知識・技能」のところでも整理したように、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」は互いに関連し合うものである。
「思考・判断・表現」により、深い理解を伴う知識が習得されることが分かる。
これは「見方・考え方」を働かせる「深い学び」にも関連する。
「深い学び」の例に「知識を相互に関連付けてより深く理解すること」が挙げられている。
つまり、「見方・考え方」を働かせる「深い学び」を実現することで、深い理解を伴う知識(概念的知識)が獲得されるのである。
そして、「思考・判断・表現の過程」として次の3つの過程が規定されている。
これをよく読むと、「深い学び」の残りの3つの例と重なることが分かる。
端的に言うと、
「情報を精査して考えを形成すること」
「問題を見いだして解決策を考えること」
「思いや考えを基に創造すること」
である。
つまり、「見方・考え方」を働かせる「深い学び」を実現することで、「思考・判断・表現の過程」を経ることができ、結果的に「思考力・判断力・表現力」を育成することにつながるのである。
「思考・判断・表現」をする際は、「見方・考え方」を働かせることが欠かせないことが分かる。
最後に、「学びに向かう力・人間性等」である。
このように、「学びに向かう力・人間性等」は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」という資質・能力をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける要素である。
つまり、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」という能力を身に付けたとしても、それを適切な方向に働かせることができないのであれば、それは「宝の持ち腐れ」になることを意味する。
よって、2つの資質・能力を支え、社会や世界と関わったり、よりよい人生を送ったりするために資質・能力を発揮していくという態度面を意味する重要なものなのである。
また上記のように、「学びに向かう力・人間性等」の例として、
・主体的に学習に取り組む態度
・メタ認知能力
・多様性を尊重する態度
・協働する力
・リーダーシップ
・チームワーク
・優しさや思いやり
などが規定されている。
これらは、近年注目されている「非認知能力」とも重なる部分が多い。
体験活動や探究的な学びを通し、様々な他者と協働することで、上記のような態度や情意を養っていくことができるだろう。
ここまで「個別最適な学び」「協働的な学び」「主体的・対話的で深い学び」「資質・能力」について整理してきた。
このような学習を成立させ、子供たちの資質・能力を効果的に育成していくためには、その基盤が必要である。
その基盤とは、ずばり「学級経営」となる。
上記のように、学習や生活の基盤としての「学級経営の充実」が謳われている。
「協働的な学び」を進めながら、「個別最適な学び」を実現していくためには、子供同士の良好な人間関係が必要不可欠となる。
学級経営が充実することで、「主体的・対話的で深い学び」がよりよく機能する。
やはり、学級経営を充実させることが、「個別最適な学び」「協働的な学び」ひいては「主体的・対話的で深い学び」を実現する土台となっていくのである。
この視点も忘れてはいけないのだ。
以上、『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、 協働的な学びの実現~(答申)』と『学習指導要領 総則編』の記述を引用し、私なりの解釈を添えてみた。
ここまで整理して気づいたことは、どちらの文書にも「けっこう重要なことが書かれている」ということである。
現場で働いていると、なかなか上記のような公文書に目を通す機会や時間がない。
なので、授業改善がなかなか進まず、旧態依然のままであることが多い。
しかし公文書には、それなりに重要なことが書かれているのであり、それを読み込み、解釈することが必要である。
今回、そんな機会を得ることができ、スッキリすることができた。
ざっくりと今回の学びをまとめてみたい。
➀「指導の個別化」と「学習の個性化」から成る「個別最適な学び」を実現する。
②学びが孤立化しないよう、子ども同士が協働・対話・交流する「協働的な学び」を実現する。
③「個別最適な学び」と「協働的な学び」を進める際は、ICT機器を効果的に活用することで、その質やスピードが高まる。
④「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させることで、「主体的・対話的で深い学び」が実現される。
⑤「主体的・対話的で深い学び」の鍵は「見方・考え方」であるため、どのような学習においても「見方・考え方」を重視していく。
⑥「見方・考え方」を働かせた「主体的・対話的で深い学び」の実現により、子どもたちの「資質・能力」を育成することができる。
⑦「資質・能力」の三本柱である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性等」は互いに関連するものであり、相乗的に高まっていくものである。
⑧このような学びの基盤・土台として、「学級経営の充実」が必要不可欠となる。
このように整理してみると、やはり重要な概念は「見方・考え方」であることが分かる。
「見方・考え方」を働かせることで、「深い学び」が実現され、それが子どもの「資質・能力」を育成していくことにつながる。
今後の教育改革では、この「見方・考え方」がさらに重要視され、前面に打ち出されることだろう。
今のうちから、「見方・考え方」を重視した授業実践を心がけていきたいものである。
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