見出し画像

部下を評価するときに最も重視していたことは?【監査ガチ勢向け】

人を評価することは難しく、いつも七転八倒していました。ただ、大枠として大事にしていた目線があります。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

「人が人を評価できるのか」「しょせん好き嫌いで決まるのでは」など人事評価についてはいろいろ言われます。しかし限界は感じつつも、評価しないわけにはいきません。

人事評価の中でも最も影響の大きい、昇格可否判定について私が持っていた目線をお話しします。
シニアスタッフ以下、マネジャー、シニアマネジャーで目線は違えていましたので、それぞれ説明していきます。


シニアスタッフとスタッフの評価

シニアスタッフとスタッフについては、すべての評価項目について昇格レベルに達しているか、達していなければ何が問題で、どうすれば改善できるか、という目線で評価していました。

評価項目とは、例えば次のようなことです。

  • 監査や会計のテクニカルスキル

  • クライアントとのコミュニケーション

  • 監査チーム内のコミュニケーション

  • 人材育成

  • プロジェクトマネジメント

次のような状況になれば昇格有望です。

評価項目が8つあることを前提に、緑の線が評価結果、黒線が昇格レベルを表したレーダーチャートです。
この図ではどの項目も評価結果が昇格レベルを超えています。

ところが、どうしても不得意な分野が克服できない場合もあります。

先ほどより全体としては好成績なのですが、1項目が大きくへこんでいます。

へこんでいるのが監査・会計スキルだとして、全体的に優秀だが退職給付会計だけ苦手、といった場合もあります。努力次第で改善できる可能性が高ければ、期待含みで合格点をつけることがあります。
ところが、会計が全般的に弱い、となると改善には相当な困難を伴うため、昇格候補として推薦しづらくなります。

逆に、こんなケースはどうでしょうか。

1項目は抜群なのに、ほかは全滅。
個人的には、このような人を生かすことが組織の腕の見せどころとは思います。ただ、監査はいわば総合格闘技なので一点豪華主義はなかなか難しいところです。


マネジャーの評価

マネジャーについては、どの評価項目も高いレベルでクリアしている前提で、それに加えて何ができるかを中心に評価しました。

これはシニアスタッフ・スタッフで最初にお示ししたレーダーチャートから、昇格レベルを取り除いたものです。
とてもバランスよく、全体的に高いレベルになっています。

若手マネジャーの間はこれで十分なのですが、だんだん評価されづらくなってきます。
今後何で法人に貢献するのか、見えづらいためです。

評価されるためには、ほかの人にはない強みが求められます。

一つ突出した項目があります。
「突出した」とはどんなことでしょうか? シニアスタッフ・スタッフでご覧いただいた評価項目を例に、ひとつずつ考えていきましょう。

  • 「突出した」監査や会計のテクニカルスキル
    ⇒不正案件など難易度の高い監査を十分な品質で終えることができた

  • 「突出した」クライアントとのコミュニケーション
    ⇒クライアントとの信頼関係が壊れているチームに途中から入って関係を再構築し、CFOから高く評価されている

  • 「突出した」監査チーム内のコミュニケーション
    ⇒新規クライアントで寄せ集めのメンバーによる監査チームをうまく束ね、メンバーが達成感を得て監査を終えることができた

  • 「突出した」人材育成
    ⇒ほかのマネジャーの下では評価が低かった部下を次々と成長させることに成功し、人材再生道場と呼ばれている

  • 「突出した」プロジェクトマネジメント
    ⇒突発事項が重なりメンバーがほぼ全員交代となる中、監査を遅延なく終えることができた

これ以外にIPOの監査ができる、グローバル対応ができる、特定の業種に強い、といったこともカウントできます。

全部コンプリートするとスーパーマンになってしまいますので、そこまでは期待していません。
1つでも2つでも達成していると、次のステップが近づいていると言えます。


シニアマネジャーの評価

シニアマネジャーの上は通常はパートナー。立場が違いますので、シニアマネジャー昇格までとは見方も違ってきます。
端的に言うと、次のような目線で見ていました。

このシニアマネジャーがパートナーになると、どれだけの貢献が見込めるか

そしてパートナーになれる人数には制限がありますので、候補者から絞る際に予想貢献度が大きな検討項目になります。
「予想貢献度」は影響する範囲の大きさと需要とで考えていました。

  • 自ら業務執行社員として担当するクライアントの監査を改善するよりは、多くの監査チームを指導して監査を改善できる方が予想貢献度は高い(影響する範囲の大きさ)

  • 得意な業種が、すでに十分なパートナーがいる場合よりも、不足している場合の方が予想貢献度は高い(需要)

うまくトレンドに乗るとパートナーに推しやすくなりますが、目指してがんばっているうちにトレンドが終わってしまうと推しづらくなってしまいます。


おわりに

実はこのお題はモニスタさん(noteX(Twitter))からリクエストをいただいたものです。
モニスタさんは「ここだけ見れば部下の評価はだいたい分かる」というような斬新な切り口を期待されていたように思いますが、残念ながらそのような技は持っておらず、地道なお話しに終始してしまいました。

とはいえ、監査法人にいて上を目指そうと思っている人のお役に立てれば幸いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?