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監査スタッフからパートナーまで~昇格したら見える景色【監査ガチ勢向け】

昇格すると、仕事の内容が変わるだけでなく、見える景色も変わります。スタッフとしてのスタートからパートナー昇格まで、それぞれの景色がありました。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

監査法人に限らないと思いますが、昇格すると役割、権限、責任が変わり、それに伴ってそれまで見えなかったことが見えるようになります。
組織のより上層部の動きが見えたり、入ってくる情報が変わるからだと思います。
これを私は「景色が変わる」と例えています。

監査法人に入社したときからパートナー昇格時まで、どんな新しい景色が見えたのか、思い出しながらお話しします。



監査法人入社

受験生が晴れて会計士補(今の公認会計士試験合格者)になるわけですから、何もかも変わりますよね。

私の受験生時代は、知り合いに会計士がまったくいなかったので、合格後どうなるのかまったく分かりませんでした。
勉強のモチベーションを上げるために想像しようとするのですが、まぶしすぎて何も見えなかったのです。

合格して大手監査法人に入社すると、見るもの、聞くもの新しいことばかり。
私の場合前職もなく、はじめての社会人経験だったので、なおさら新鮮でした。
「新しい景色」をながめる余裕もなく、ただ目の前の仕事をこなすスタッフでした。


シニアスタッフ昇格

スタッフも年数が経つと、その日監査現場にいるメンバーの中で一番年長になることが増えます。
日常的な現場の管理やクライアントとの対応は自分が率先してやることになります。

シニアスタッフに昇格することで、名実ともに現場のリーダーとなります。
生まれて初めて「昇格」というものを経験し、もっとしっかりしないといけない、という自覚も芽生えてきました。

そんなときに、監査現場でスタッフ同士が雑談しているのを見ると、とても悲しい気持ちになりました。
現場のリーダーであり、スタッフとは一段違う職位にいる私が目の前にいるのに。このスタッフたちには私はシニアスタッフだと認められていないのだろうか、と思ったのです。

すぐに慣れてしまい、機嫌よく仕事を仕上げてもらえれば気にならなくなりました。


マネジャー昇格

どうでもいい話ですが、私はいつマネジャーに昇格したか分からないんです。
シニアスタッフのときにアメリカに駐在に出て、アメリカではなぜか「シニアマネジャー」の名刺を渡され、駐在を終えて戻るとマネジャーになっていました。その間に、昇格の辞令は受け取っていません。

マネジャーとしての動き方

監査マネジャーらしい仕事をしたのは帰国後です。
監査現場に張り付いていたシニアスタッフまでと違い、複数のクライアントの間でどのように動いてよいか分からず戸惑いました。
次々と難題が勃発するジョブに集中していると、担当している別のジョブのパートナーから、シニアスタッフに任せすぎだと怒られました。初日と、最終日と、真ん中の1日くらいは現場に行けとのこと。

困ったのは、各ジョブにべったり張り付けないにもかかわらず、往査したときには状況を把握している前提でクライアントと話さないといけないことです。
特にはじめて担当するクライアントでは勝手が分からず、苦労しました。
できるだけ往査し、シニアスタッフやスタッフから情報を収集してクライアントからの質問や依頼に備えました。

監査の全体像

監査自体については、個別科目の積み上げだけじゃないんだ、ということがはじめて分かります。分かったきっかけはいくつかありました。

  • 監査計画を本格的に担当した。当時、シニアスタッフやスタッフのときには監査計画にかかわることが少なく、監査の全体像が見えていなかった。

  • シニアスタッフやスタッフが監査手続(特に実証手続)をはじめる前に、重要論点はマネジャー主導でさばくものだと知った。

監査チームの扇のかなめ

監査チームの中で、パートナーよりは現場に近く、シニアスタッフやスタッフよりは経験のあるマネジャーがジョブ全体を回す役割を果たします。

上には複数のパートナーがいて、下にはシニアスタッフとスタッフがいる。
普通のサイズのジョブでは、マネジャーが一人で「扇のかなめ」をとなる。重要な役割です。

パートナーには指示に従っているように見せながら、「この件については、○○さん(パートナー)からCFOに話していただけませんか?」など、パートナーの限られた時間をどこで投入するのが効果的かをデザインします。

この、「監査チーム全体を自分が回している感覚」がマネジャーの醍醐味だと思います。


シニアマネジャー昇格

シニアマネジャーは、マネジャーよりも大きなジョブや複雑なジョブを担当することが増えます。
しかし当時の私は「パートナーに近づいた」という自覚がなかったため、シニアマネジャーに昇格しても監査のジョブでは新しい景色は見えませんでした。

それよりも監査法人の部門運営の役割を担ったり、内部のプロジェクトに参加する機会が増えて、法人のことが見通しやすくなりました。
例えば、所属部門のシニアスタッフ、スタッフのアサインの責任者になったときは、部門全体のリソース配分の難しさや、監査部門全体の課題が見えてくるようになります。


パートナー昇格

パートナーは、監査法人のトップなのか?

「パートナーになったら監査法人のトップに上りつめた」というのは大間違いで、私が入社時にパートナーだった人もまだパートナーでいるわけですから、とてもその方と「同僚になった」とは思えません。
例えて言うと、上級生として威張っていた中学3年生が、高校に進学してかわいい1年生になったようなものです。

監査業務においても、上場企業の監査を中心に上にベテランパートナーがいることが通常ですので、何でも自分で決められるわけではありません。

監査法人の内部情報

とは言え、監査法人の経営状態や課題に関するより詳しい情報が入ってくることになります。

それまでシニアマネジャーとして、「問題があるのに、パートナーはどうして何もしないんだろう。問題があることも分かっていないんだろうか」と憤りを感じていたことが、簡単に解決できないことも分かってきます。

それをできるだけ職員に伝えるのも、パートナーとしての自分の役割だと思うようになりました。

パートナーとしての監査への関与

監査業務については、マネジャー以上に個々のクライアントに関与できないのに、無限責任を背負ってサインしなければならないことがとてもこわく感じました。
はじめてサインするときは、ここに自分の名前を書くことで、自分のなけなしの財産を失ってしまうリスクを負うのか、と思うと一瞬手が止まりました。

とは言え、人間、何事も慣れてくるものです。
自動車を運転するときのことを考えると、人命にかかわる事故を起こしてしまうかもしれませんので、リスクが顕在化したときの影響度は極めて高いと言えます。しかし、事故が発生する確率は低いため、みんな日常的に運転しているわけです。
パートナーとして監査報告書にサインするのも、これに似ています。


おわりに

それぞれの昇格時の思いをつらつらと書いただけで、結論も落ちもない記事になりました。
昇格して見える新しい景色がテーマでしたが、「景色」をそのまま描くことは難しく、心情を伝えることになりました。

シニアスタッフ以上を経験した皆さんは、ご自身の昇格時はいかがでしたか?


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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