公認会計士のキャリアについての一問一答
先日の出版記念セミナーで取り上げられなかったご質問の一部にご回答します。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。
もう2週間も前になりますが、8月24日の出版記念セミナーには、会場、オンラインで多数の方々にご参加いただき、どうもありがとうございます。
※セミナーは終了しています。
事前に、そしてセミナー中にたくさんのご質問をいただき、イベントを盛り上げていただきました。
私が1時間30分のうち1時間20分しゃべってしまったので、取り上げることができなかったご質問が多数あります。その中で、キャリアに関するご質問について、こちらで回答します。
なお、いずれも「私はこう思う」というだけなので、異論があって当然です。意見が異なる場合は下のコメント欄などで記載いただくと、読者の皆さまの参考になると思います。
🖊️キャリアに関する3つの質問
【質問❶】
妊娠出産や健康を害しての休職によってキャリアを一旦中断されて、その後復職し、ご活躍されている方がいらっしゃいましたら、様子を伺えないでしょうか
まず、育児休業からの復帰についてお話しします。
男性の育児休業も増えていますが、育児の負担はまだまだ女性のほうが大きいことが多いので、女性を前提に進めます。
一昔前は出産を機に退職する女性が一般的でしたが、今は逆に少なく、産前産後休業、育児休業を取得し、時短ベースで復職するのが当たり前になりました。
そのような過程を経て活躍している女性はたくさんいます。
しかし、育児も会計士としての仕事も、どちらか一方だけでもたいへんな仕事。
実際のところ、育児をしながら監査法人で活躍している女性は、家族や有料のサポートをうまく使って工夫しながら、それでも相当な犠牲をはらって破綻寸前のところを踏ん張っている、というイメージです。
厳しい言い方になってしまいましたが、通常は育児は一生続くものではなく、悩みもありながら喜びも大きい営みです。
一方で仕事の方も、世の中から女性の一層の活躍が求められていることから、これまで以上に活躍の場が広がっています。
健康を害しての休職、特にメンタル不調による休職からの復帰はかなり複雑です。
そんなことがあったのがウソのように活躍している方がおられる一方で、将来への不安や職場に迷惑をかけているという思いから早期復帰を焦り、休職と復帰を繰り返すこともあります。
もともとは非常に責任感が強く、体調さえ許せば活躍できる方が多いように思います。復帰に向けて、医師のアドバイスを受けながら長期戦で臨むことが重要なようです。
【質問❷】
大手監査法人の監査部門で、どのような方が定年まで勤める(勤められる)と思われますか?
パートナーにならず、職員のままで定年を迎える方もいらっしゃいますが、数は少ないと思います。そこで、パートナーとして定年を迎える方、という前提でお話しします。
監査パートナーになり、長く勤める方には、おおむね次のような特徴があると思います。
オールラウンドに優秀
特に監査の場合は、監査や会計のテクニカルスキル、クライアントとのコミュニケーション能力、監査チームをまとめる力などが一定水準以上求められます。
誰にでも得意・不得意がありますが、著しい不得意分野があると監査で長く続けることは難しいと思います。心身ともにタフ
スタッフのころからタフな働き方をしている方もいらっしゃいますが、一般には職位が上になるほど量・質ともに厳しくなります。その中で、体と心の健康を維持することはとても重要です。
業務量については、AIなどの技術の利用によっていずれは緩和されると思っています。(あるいは、量はそのままで、給料が◯倍、ということになるかもしれません)
一方の質の面では、しびれるような難しい監査判断、厳しい局面でのクライアントとの対話、あるいは監査法人の経営のかじ取りなどはパートナーの仕事であり続けると思います。明確な強みがある
IPOに強い、海外経験がある、特定の産業に詳しい、修羅場でも監査を仕上げる能力がある、など誰にも負けない強みを持っている人が多いと思います。
ただ、ニーズが十分にある「強み」でないといけません。得意な産業が衰退して仕事がなかったり、特定の業務を担当するパートナーが大勢いたりすると、パートナーの就任や継続が厳しくなります。
【質問❸】
ファーストキャリアとして、中小監査法人やFASなど大手監査法人以外のキャリアの選択について、どう思われますか?(論文式試験受験生からのご質問)
あくまでも一般論としてお答えします。
大手か中小か:
大手の方が制度がしっかりしている、中小の方が融通が利く
監査法人かFASかに関わらず、大手の方が研修プログラムは充実し、ほかの制度もしっかりしていることが多いと思います。
一方で、中小は監査以外の仕事ができるチャンスが多かったり、制度外で融通を利かしてくれたり、といったメリットがあるでしょう。大所帯か小さい所帯か:
大きな事務所・部門の方がより高度で複雑な業務に関与できる、小さな所帯の方が面倒見がよい
一般に、大きい事務所・部門の方が規模の大きなクライアントを相手にしていたり、非常に専門性の高い業務を抱えていたりすることが多いと思います。
反対に、小さい事務所・部門であれば、若手まで目が行き届きやすく、また若手にがんばってもらわないと替えが効かないので、面倒を見てもらえるでしょう。監査かFASか:
選択をいつするのか
最初からFASを選ぶということは、FASの世界で生きていくことを覚悟することになると思います。FASからほかの道に進むことはできると思いますが、監査よりは選択肢が狭いと感じます。
監査は、どの業務に進むにも必要な基礎力を鍛えるためにはよい仕事だと考えています。監査をしながら、やりたいことを探すのが一番成功確率が高いように思います。
ただ、これはずっと監査にいて、監査の立場でFASなどと関わってきた私の意見なので、異論は多々あるかもしれません。
🐣おわりに
いつも思うのですが、こうやってご質問をいただくと、私の頭の中も整理され、とてもありがたく思っています。
なお、一つのご質問についてはすでに取り上げて回答していますので、ご参照ください。
キャリアについては、唯一絶対の正解があるわけではなく、正解に近そうな答えも時代や状況によって変わります。
私の回答には、納得のいく部分、納得いかない部分、よく分からない部分があるでしょう。「アドバイスを受ける」と言うよりも、これを考えるきっかけにしていただいて、自分なりの進み方を模索していただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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