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あばらぐらむ

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読んだ本の感想をかきます。
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#西加奈子

踊らされず、踊れ。

本を閉じて、短く息を吐いた。体から出てきた二酸化炭素には、抱えてきた苦しみが少しだけ混じっている。読み終えるまでずっと張りつめていた気持ちが少しだけ緩んだ気がした。

自意識過剰という言葉が服を着ている。『舞台』の主人公・葉太はそんな奴だ。周りの目なんか気にしたことがない、何でもかんでもソツなくこなしてきた。サラリと器用に生きていく。そんな風に見せておいて、ソツなく見せるための努力は不断だ。周りに

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『きりこについて』について話そう

会社訪問がえりの長い電車の中での暇つぶしに。と、 電車の中で読み切れそうな薄い文庫本を手に取ったのがきっかけ。

不自由だと気が付いた瞬間に、私たちは自由になれる。そんな風な気持ちになることのできる物語でした。

まず、目につくのは主人公きりこが「ぶす」だということ。しかも、このぶすという言葉は全編を通して太字で書かれ続けます。

全編を通してきりこは賢く強い女性であり続けますが、私が好きなのはき

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