Smile【倩兮女】
いつも笑みを浮かべる女が居た
歩く時も、食べる時も、煙草を吸う時も
寝る以外は虚空を見て薄ら笑う
村の者は女の意味の無い笑みを気味悪がった
女は孤児で寺の住職に座敷牢にて飼われていたが
時折、座敷牢から抜け出しては村を徘徊していた
女には3人の子供が居たが
女にも、女の亭主にも捨てられたらしい
ある日、住職が女に
「貴様は、なぜいつも笑っている」と聞いた
しかし女は、口元から微かに漏れる吐息と低い唸り声以外
何も発してはくれなかった。
住職は、
人の話を聞けないのか、はたまた
人の耳に入らない話だったか、等と心中に思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?