見出し画像

夏休みの課題 ① ~作文~

平成元年生まれの卒業生が高等専門学校を卒業する年の冬のある夜、

メールで

「卒論につける英語の要約文が終わらないので、助けてください。」

言ってきたことがある。

私は、その日大風邪をひいていて、やっと帰って寝られるとホッと一息をついたときにやってきたメールに、内心「げっ」と思いつつ

「いつ提出?」

と、返すと、なんと

「明日」、、、、それも、朝7時に家を出る前に完成させたいとの返事が、、、。

温かい布団が遠のいていくのを感じながら

PCに日本語文と自分が今まで取り組んだものを送れと言って

とりあえず、家に帰った。

メールと添付ファイルを見ると、彼の苦心のあとが見えた。

同時に
彼の書いた工業系の内容の日本語文の方が私にはちんぷんかんぷんで笑ってしまった。

日本語文を翻訳のサイトで翻訳し、用語だけ取り出して、彼の英訳も参考に、小一時間かけて英訳をし、「次回があるならもう少し早く連絡して!」というメールと共に文書を送り、午前1時過ぎにようやく布団に入った。

小中学生の夏休みの宿題に作文の宿題が出る。

人権作文が
税についての作文が
読書感想文が

と、夏休みが始まると言い出す生徒たち。今年も、いろいろと作文の題材のアイディアを出しながら、ふと、この15年ほど前の出来事を思い出した。

私が、久々の大風邪、それこそ、この卒業生が中学3年生の年末年始をネパールで過ごしてひいた風邪以来のひどい風邪だったのに、彼のお願いを聞いたのは、彼が最初から丸投げしたわけではなく、彼にできる努力をすでにしていたからだ。

私は、それをする限り、自分を頼ってくれる人を放ってはおけない。

私は、最後の仕上げを少し手伝っただけだ。

先日、「夏の勉強部屋」で早々に「人権作文」を終わらせた生徒がいた。

「最後の表現は亀井先生にもらった」

と、言っていたらしいが、これも、彼がなんだかんだと自分で考えたことを口に出し、私が知っていることをアドバイスして、また彼自身がそれを調べ、とりあえず自分の文章を作った。規定の文字数を確保するために、加えられるようなものを考えたり、こんな表現があるという話をしたけれど、最後にまとめたのは彼自身だ。おかしな表現や直すべき点もあったし、それを助言したけれど、それを受け入れるか入れないか、直すか直さないかは、彼の判断にゆだねた。

私は、あくまで彼らが必要ならここにいる
ーそんな人でありたい。



この記事が参加している募集

いただいたサポートは、子どもたちの学ぶ環境づくりに使わせていただきます。よろしくお願いいたします<m(__)m>