放送後記 『ちゃぶ台のラジオ』 #1
出会った頃は、こんな日が...
「いつかラジオに出てみたかった♡」
無類のラジオラバーで、ホントにそれだけの理由だったらしい。
立場的にも『東久留米と中目黒の格差そのものぢゃね?』くらいに感じていて、正直声かけするイメージはほぼ皆無... それがあるキッカケから「ノリ」でコメントしたら、あれよあれよとことが運び... まさかホントに来てくれるとは...(!)
「まさか」なその人は、アートディレクター・グラフィックデザイナーの
小熊千佳子 さん。(とっくに民放に出ててもおかしくない人だと思ってた)まぁまずは黙って見てください。作るものがとにかくカッコイイ!
順番が前後するけど先にプロフを。
アートディレクター・グラフィックデザイナー。
日本大学 藝術学部 美術学科 絵画専攻 卒。
グラフィックデザインを基軸に、ブックデザイン、練馬区立美術館 展覧会広報デザイン、神田明神 「薪能幽玄の花」 アートディレクション、保育園、
CI(*)、VI(*)、サイン計画、イベントグラフィックなど幅広く手がけ、
国内外のポスター展覧会の参加多数。
2020年は20の展覧会にてポスター作成展示。
チューリッヒ・デザイン・ミュージアムにてポスター収蔵。
「グラフィック・ポスター・アニュアル2018」にてプラチナ賞 受賞。
ほか多数。
出版活動として、2011年から2016年まで写真家の一之瀬ちひろさんと共に、
Little Book Label PRELIBRI主宰。 2017年よりYOU ARE HEREを主宰。
国内外のアートブックフェアに多数出展。
(※)CI = 直訳すると企業の存在価値や独自性の意。ロゴ・マークの刷新として使う場合が多いが、ロゴ・マークは企業理念を象徴するシンボルの一つで、企業理念や哲学、行動指針、企業が発信するコンテンツ全般を指す。
(※)VI = Visual Identity の略。企業の価値やコンセプトを可視化した、ブランドシンボルやブランドロゴなどを中心に、色見本や使い方のオプション、ブランドを象徴するデザイン要素一式のこと。
....「素人のため」を謳うなら余計な英字表記とか横文字は翻訳しないとね...
(スミマセンもっと勉強して喩え力を磨きます)
亀の歩み... で、また失敗w (惜しい!)
度重なっていたオープニングの失敗も聞くに耐えるくらいにはなったか...w
少しの雑談のあと「これしかないでしょう!」という一曲目。
実これも小熊さんとも関係のある1曲。僕がラジオ番組を持つことになり、その本放送最初のゲストに小熊さんが来てくれた。
まさに「出会った頃は、こんな日が来るとは思わずにいた!」....
1曲目:ハナレグミ 「オリビアを聴きながら」
憧れの「イントロ曲紹介」はバシっと決まったかに思えたが...
実際の放送では「普通にイントロが聞こえただけ」。またしても直前でプチパニック....「カフ下げっぱなし」という失態をやらかしてたっぽい?
信じてもらえないかもしれないけどマジで良い感じにキマったんすよ...
なのにまたやっちまった... (泣)悔しい....
実この楽曲収録のアルバム『だれそかれそ』のジャケデザインが小熊さん。知り合うきっかけとなったポスター展の打合せ帰路、その事実を聞かされた時の驚きったらもう...(!)
『出会った頃は..』 の話と 『農家と料理人』 の喩え。
小熊さんが(ジェーン)スーさん好きなのが窺い知れた(もともと僕も「生活は踊る」的ロックステディは割とツボ)ので「SOULFUL STRUT」をCM明けに持ってきてみた。
先述のポスター展の話に。界隈ではいくらか話題になったか、デザイナーとイラストレーターがペアを組んで作ったポスターを展示するという育成型・プロジェクトベースで進めるユニークなもの。
当時(2012〜3年頃)ヒマだった僕は、毎日1枚 Facebook に描き下ろしをアップしていた。自分の「素材」の魅力的な「調理法」を見出せずに踠いていた時期。最大の関心事は『自分の絵がどう《料理》されるのか?』敢えて「誰と当たるか分からない状態」を選択。小熊さんとのコンビ結成に至る。
これまででいちばん「仕上がりをイメージできなかった」案件だったかも(もちろんいい意味で)。予想を遥かに凌ぐ、自力では絶対できないアウトプットを目にして(展示会恒例の公開プレゼンってのがありまして..)
大衆酒場しか行ったことなかった男が、突然彼女ができて代官山か中目黒のバーに通い始めたような気持ち。
とコメントした。普段は「ダサカッコ」を好んでいるのもあって、意外すぎるカッコ良さに「当たり前だけどデザイナーってスゲェな」と。印刷のプロセス(シルバー × 蛍光インクの話も出たけどコレが結構な荒技)の写真もあるのでぜひご覧いただきたい。(放送中ブースに貼っとけばよかったな...ちなみにこのポスター、のちに国際コンペの入選を果たし「ただ描いてただけ」の僕まで引き上げてもらった。もう感謝しかない!)
他にも「調理法」は無数にあるのがデザインの難しくも面白いところ。
昨年くらいからか「喩えるならイラストレーターは《農家》、デザイナーは《料理人》みたいな関係か」... 今のところ「分からない」と言う人たちに説明する時、一番伝わりやすい喩えではないかなと思う。
もらって嬉しい名刺☆
放送前に挨拶した番組スタッフから『名刺の制作意図を知りたい』と
(いい質問!)。基本「はじめまして」とセットで手渡される名刺。
デザイナーを名乗りながら名刺に拘らないというのは、テキトーな包丁で仕事する料理人みたいなもので...
とは小熊さんの談。イラストレーターなら自分の絵をそのまま配置するのが割と王道なやり方か。結局見てもらうのが一番なので許可を得て画像掲載。いやぁカッコイイ。
正円にホログラムの箔押し加工。「キラキラしてるだけでも《ビックリマンシール》の強いキャラみたいなレア感があるでしょ?」
(印象込みで)『引っかかり』を作る、思い出してもらう、単純に「もらって嬉しい」ものに仕上げる。当然それなりにお金もかかる。僕らにはその想像ができるけど、クライアント側はこのへんのプロセスを知る機会自体なかったりもあるだろうから、いかにも出そうな質問をぶつけてみた。
中にはこれを見て「金あるから作るんでしょ?」的な勘違いをする人がいそうだけどそういうワケじゃないんですよね?
当然イエスなのだが、大事なのはその「価値」を見出しているということ。「クライアント=自分」案件というのを活かし「印刷加工の実験(箔押しの小さい文字がどこまで耐えられる?とか)の機会にする」など、明確な意図を持っているからそれを「消費」と捉えていない。
デザインは「投資」。番組を通して広げていきたい認識でもある。
誰にとっても他人ごとではない名刺。それだけに実は多種多様で奥が深い。
(1枚いくらだと思います? ご興味ある方は 31日 17:00 再放送で☆)
「老婆心ながら...」の特別講義
冒頭で書いた、出てもらうことになったあるキッカケ。母校の日芸で後輩の学生さんたちに特別講義をした時の Facebook 投稿。嬉しい反響だったようで、ならばと資料を見せてもらったところのこのタイトル。
自分を知らない学生さんを「この人の話を聴いてみたい」と思わしめるためにガッツリ考えたと言うタイトル。講師に決まって以降、これでもかと課題に向き合っていた姿勢。そしてそれ故か、想像以上に伝わった感触を噛み締めているのが窺えて、堪らず僕は「ラジオ出て欲しい〜」とコメントしてしまっていたw
「天才ではない」と自覚したからと、それが諦める理由には全くならない。むしろ気づいた時に何ができるか?どんなことをやってきたか?こういうことはあるかもしれないからちょっと心しておいた方が良いとか...老婆心ながら「おせっかい」なことも含めてギュッと詰め込んでみた PDF 133頁
とのこと。
(以前から「努力の人だな〜」と勝手に思っていたけど...)結局時間の都合であんまり掘り下げられずだったのだけどカッケー!自分もこんな先輩に出会いたかった!
溢れ出る「星野源」リスペクト
(2曲目:持ち込みリクエスト) 星野 源 「創造」
「デザインには理由がある」ということで選曲理由を聞くことをルール化。
「スーパーマリオ」の35周年記念に書かれた、星野源による任天堂へのリスペクトソング。(ファイヤーボールを放つ、敵を踏ん付ける、ステージBGM 等々...)ありとあらゆるゲームの「音」、元社長の岩田聡さん、ゲームボーイの生みの親・横井軍平さん、3代目社長の山内溥さんそれぞれの言葉、もともと「花札を作っていた会社」などの歴史を想起させるワードなどなど... 情報満載でありながら考え抜いて何層にも重ね、しかも最終的にポップで敷居が低い。大人も子供も楽しい入りやすさを持ちながらも深掘りできる情報がこんなにもある。ものづくりとして凄く難しいことと思われるそれを軽やかに多作する星野源すげぇ!と思って。
この日最高?と言えそうなハイテンション。「星野源で膨らませすぎ!」と総ツッコミを浴びそうだがここにもちゃんとヒントがあった。
一方的に膨大な情報を突きつけられた受け手はどう感じるか?言わんとしてることが全然入ってこないか拒絶したくなるか... そんなところだろう。
たくさんの情報を、入り口は優しく、整理整頓や順序づけして、最終的に「簡単に」「楽しく」伝える。デザイン的にお手本のような構図だなと。ゲストの立場で音楽の話であれば別に「なんか好きだから」程度の回答でも十分。そこに多少の準備はあったにせよ、こんなにもしっかり回答をしてくれるあたりはさすが。何より語るご本人がエラく楽しそうなのが尚ステキだ。
もれなく今後も星野源には注目である。
【選書】無理解無関心の「元凶」を打破するヒント?
星野源の話を半ば強引に切ってでも紹介したかった書籍。
大人がいま最優先で学ぶべき科目は「美術」
乗っけからこう断言しているのだが、まえがきの時点で納得できるのではないだろうか?
仕事をしててたびたび起きる『話通じねぇなぁ..』感。実力不足もあるだろうが、それでもなお感じる違和感。モヤモヤしながらも個人的に、一つの仮説が浮上して数年。
小中学生の授業で『美術って楽しくない』を植え付けてしまっている...
結果ものづくりへの無関心を増産していないか... この土壌がいわゆる「クソ発注」や「リスペクトを欠いた」トラブルの元凶なのではないか...?
本来なら日常生活に根ざしてこそ「文化」。悲しいかなその日常でガッツリ「一部の得意な人(才能の一語で片付けられること多々...)とそうでない人」の間に引かれた境界線の存在を感じることが少なくない。
本書によると美術は「中学生の嫌いな教科ワースト1」。中には小学生の時は大好き「だった」という子も多いという...。そんな子たちが大人になり「嫌い」「無関心」のまま、やがて発注者になっていく。自身の「仮説」も強ち間違えてないかも?と思わせてくれたと同時に、番組を始めようという思いを後押しした一冊でもある。全てを学校教育のせいにはできないが、アート鑑賞の「とっかかり」を知る機会すら持てなかった全ての人が読んでも良いと思える書籍。
(さらに教育話が面白く派生。ご興味ある方は 31日17:00 〜 再放送で☆)
* * * * *
メロディがしっかりしててレゲエアレンジであればほぼ間違いない(主観)のと、この人の作品としては意外?と思って... という理由。
3曲目:山崎まさよし 「HOBO Walking」
『デザインってみんなのもの』をあらためて
まずなにより、ゲストの小熊さんが終始楽しそうなのが伝わってきたのが(僕も放送の素人ですが...)冥利に尽きるし眩くさえあった。
最後に聞いてみた。
「デザインってみんなのもの」ということを伝えるために小熊さんならどんなふうに話しますか?
デザイナーって、ただ「きれいにする」だけではなくて、あなたは「誰に・何を(どう)伝えたいの?」を整理して形を与えてあげる人で。
発信者(クライアント)が『本当はどうしたいの?』がないままだと良いものは生み出せない。『どうしたい』がないように思える相手でも丁寧に話していれば意外と出てくるもので、実はコンサル的要素も強い。
さすがのご名答。(僕は自分が人の話を聞ける人間ではないと自覚していて
しかも思わず「コレがないとタチが悪いんだよね〜w」と吐露してしまいました)さらにありがたくも、番組の取り組みそれ自体にも「スゴイなぁと思って」なんて言葉もかけてもらい、その後のインスタ投稿でも書いてもらってこちらまで嬉しくなりますね。
どれだけ影響力があるかなんて分からないけどゼロではないことだけは確か。ゼロには何をかけてもゼロだけど、少なくともそうではない。それでいて単純に自身が楽しくできているのだから、当然ながら続けたいと思う。(次は台本ガン見しないようにね...w)。
7/31(土)17:00 〜 再放送があります。(※次回予告は下記のとおり)
『ちゃぶ台のラジオ』 〜 みんなのデザイン
8/16(月) 21:00 〜
ゲスト:石川 睦美(bigcrunch.jp / くるめアパートメント、ほか)さん
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