サッカー選手に多いハムストリングス肉離れ
サッカーJリーグや関東大学サッカーリーグも後半戦に突入し、高校生年代ではスーパープリンスリーグや高校サッカー選手権の地方予選など徐々にサッカーのある日常が戻ってきました。
そんな中、最近よく目にしたり耳にするのは、選手が肉離れをしたというニュース。
自分が所属するクリニックにも肉離れの症状で来院される患者さんが増えていきている印象です。
以前、こちらのnoteでサッカー選手に多いハムストリングスの肉離れについてケガの特徴などをまとめさせていただきました。
この記事でも触れているようにハムストリングスの肉離れは、サッカー選手に多い肉離れであり、なおかつ症状が改善しても高い確率で再発してしまうアスリートにとっては非常に厄介なケガです。
まだ明確な予防法など確立されていないケガでもありますが、これまで多くの研究者たちの努力により、ケガの危険因子などが明らかになってきています。
今回のnoteでは、これらの研究からハムストリングス肉離れを起こしやすい人の特徴や予防に必要なトレーニングについてまとめていきたいと思います。
ハムストリングス肉離れが起きやすい動き
ハムストリングス肉離れが起きやすい動きは大きく分けて2つあるとされています。
(引用:「肉離れの現状」)
|スプリント(疾走)型
ランニング動作で大きく足を前方へ振り出した際に、過度にハムストリングスが伸ばされると肉離れにつながる。
|ストレッチ型
ステップや切り返し動作時の衝撃で過度に股関節が曲がった際にハムストリングスが伸ばされ肉離れにつながる。
これら共通して言えるのは、ハムストリングスが伸ばされながら強い力が加わった際に肉離れが起きやすいという事です。
ハムストリングス肉離れの危険因子
ハムストリングスの肉離れの危険因子には予防できない因子と予防できる因子があります。
その危険因子が以下のようなものになります。
|年齢
オーストラリアンフットボールの選手を対象とした研究では、23歳以上の選手では肉離れのリスクが4.4倍上昇していたと報告。
年齢を重ねるごとに肉離れの発生率は高まります。
|既往歴
初回受傷時の筋の修復状態などが関係しているとされていますが、前シーズンにハムストリングス肉離れを発症した選手は11.6倍再発する確率が上昇すると言われいてます。
|筋力低下
マウスでの動物実験結果になりますが、筋力の弱い方が肉離れしやすいと言われています。
この因子に対しては予防介入効果が示されており、遠心性収縮トレーニングは肉離れリスクを軽減する効果があると示されています。
|筋力不均衡
ハムストリングスに対抗する大腿四頭筋(太もも前)との筋力比(HQ比)が低いとランニング時のハムストリングスへの負担が増大するとされ、HQ比が0.50以下だと肉離れのリスクが増大すると報告されています。
|筋の柔軟性
柔軟性が高いとハムストリングスの中でも肉離れをしやすい部位のエネルギー吸収量が増大するため、肉離れのリスクを軽減することができるとされています。
|筋疲労
肉離れは、試合やトレーニングの後半で発生率が高いとされています。
これは反復運動などによる筋疲労がハムストリングスの過伸張につながり肉離れのリスク増大につながると考えられています。
このように様々な要因が絡み合ってハムストリングスが肉離れする危険性が高まりますが、予防介入できる要素もあるので日頃からそれらに対してケアやトレーニングを行なっていくことが重要だと考えます。
肉離れになりやすいカラダかセルフチェック
先ほど筋の柔軟性は、肉離れの危険因子の1つと挙げましたがハムストリングス肉離れも例外なく柔軟性などの状態が影響していきます。
サッカーのプロ選手を対象にしたハムストリングスの柔軟性と肉離れの発症率の関係性を研究したものでは、SLRが90°以下の場合肉離れ発症と関係があると報告されています。
また、ハムストリングスの肉離れでクリニックに来院する選手は、反り腰の姿勢を取ることが多く、そのような姿勢の原因でもある大腿四頭筋などふともも前や付け根の前にある筋肉の硬さ、背筋の硬さがあるケースも多い印象です。
このような姿勢や筋肉の硬さは、それ自体がハムストリングスへ負担をかけてしまい肉離れにつながりやすいのではないかと考えられます。
そのため、そのような要素も含めカラダの状態を確認することがオススメです。
|SLR(ハムストリングス柔軟性テスト)
膝を伸ばしたまま足を一直線にして持ち上げます。
この際、膝が曲がらないで90°曲げられれば理想的です。
|HHD(大腿四頭筋柔軟性テスト)
うつ伏せになりかかとをお尻に近づけるように膝を曲げ、この際にお尻の頂点とかかとまでの距離が10㎝以内であることが理想です。
ハムストリングス肉離れ予防トレーニング
ハムストリングスの肉離れを予防するには2つのポイントがあります。
|ハムストリングスの状態を整える
先ほどもお話ししたように、プロサッカー選手を対象にした研究ではハムストリングスの柔軟性が低下すると肉離れの発症リスクが高まることが報告されています。
また、ハムストリングスにかかる負担に対抗するためにもお尻周りの筋肉(大殿筋)を含めて筋力を鍛えていく必要があります。
筋力の中でも特に筋肉が引き伸ばされながらも力を入れる遠心性収縮という力の入れ方を鍛える必要があるとされています。
<ハムストリングスストレッチ>
|Lv.1
伸ばしたい足を前にして片膝立ちとなり、両手を床につけてお尻を後ろへ引いていきます。
この際、前足の太もも裏が伸びている感覚があればokです。
10回を目安に行なっていきましょう。
| Lv.2
Lv.1同様に片膝立ちとなり、その姿勢からお尻を天井に向けて持ち上げていきます。
この際にハムストリングスが伸びている感覚が感じられると思いますが、その状態を維持したまま前足側の方へ上半身をひねっていきます。
こうすることで最大限にハムストリングスをストレッチすることができるので、一回一回お尻が下がらないよう注意しながら10回頑張ってみましょう!
<ハムストリングス・大殿筋筋力強化>
|Lv.1
鍛えたい足を膝を立てて仰向けになり、お尻を持ち上げていきます。
この際に太もも裏やお尻に力が入る感覚であればokです。腰や太もも前に力が入っている感じがする場合は、うまくトレーニングができていない証拠ですので注意しましょう。
|Lv.2
鍛えたい足を前にして前足を後ろ足均等に体重をかけます。
その状態から背筋が曲がらないようお尻を真下に下げ、スクワットしていきます。
この際に前足側の太もも裏とお尻に疲労感があれば適切にトレーニングができている証拠になります。
|Lv.3
鍛えたい足を前にして体重の7割ぐらいを前足にかけ、背筋の伸ばした姿勢を保ちながらお辞儀するように上半身を股関節から曲げます。
この際に前足側の太もも裏が伸びるような感じがすればokです。お辞儀と同時に前足の膝が前に出ないよう注意しましょう。
|ハムストリングスにかかる負担を減らす
先ほどお話ししたように、日頃の何気ない姿勢でもハムストリングスへの負担がかかり、肉離れになるリスクを高めている可能性があります。
とくに、反り腰の選手はハムストリングスの肉離れにつながりやすい印象です。
反り腰は、背筋の硬さや付け根の前の筋肉の硬さが関与していると考えられますので、日頃からこれらの筋肉はストレッチなど行いケアを徹底していきましょう。
<背筋ストレッチ>
|Lv.1
横向きになり下側の肘をつき、上側の足は膝を立てて下側の膝の前につく。
上側の手は膝の内側につけて肘を伸ばしながら肩を床の方へ近づけるよう体をねじります。
背中側が伸びて入ればokです。
|Lv.2
足を前後に開き、前足側の手は膝の内側に置いて後ろ足側の手を肩幅よりやや広めの感覚で前足側の横につく。
後ろ足は膝を伸ばしたままキープした状態で肩を床に近づけるように体をねじります。
Lv.1同様に背中が伸びて入ればokです。
<付け根の前ストレッチ>
|Lv.1
伸ばしたい側の足を後ろへ引いて足を前後に開きます。
後ろ足のつま先は床に立てるようにして、体重を前足側へかけます。
その状態から両手をバンザイし、上体を前足側へ横に倒して脇腹から付け根の前の筋肉をストレッチしていきます。
|Lv.2
Lv.1と同様の姿勢をとり、体重を前足側へかける。この重心移動と同時に上半身を前足側へねじって付け根の前の筋肉をストレッチしていきます。
後ろ足のつま先で床を蹴るようにすると重心が前へ移動しやすく、より効率的にストレッチすることができるようになります。
まとめ
今回は、サッカー選手に多いハムストリングスの肉離れについて怪我しやすいカラダの特徴からその予防トレーニングについてまとめました。
自分自身もこのケガを経験したことがありますが、競技復帰するまでに時間がかなりかかりますし、ケガする前と同じような状態に戻すにも本当に時間のかかる厄介なケガです。
時間に限りのある学生スポーツをされているアスリートの皆さんにとってこの時間のかかるようなケガは避けたいものです。
そのためにも、今回ご紹介したようなセルフチェックから予防のためのトレーニングを日頃から取り入れるのをオススメします!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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ライタープロフィール
公式Twitter:https://twitter.com/tepez0130
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