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なななななな、なななな。

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ままならぬ感情や個性を持て余す歯車たち。 ないならないで手持ち無沙汰、あったらあったで持て余す。 激しく、時に凪ぐ“感情”について描いた掌編、短編集。
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#小説

カキモトという男について

カキモトという男について



 カキモトという男について語る。
 カキモトは、いつも夜にやってきた。
 毛布にくるまって、うとうとと心地良い微睡みに身を委ねようとしている時に、チャイムを鳴らしてやってくる。
 すごく腹がたつのだけれど、何故か素直に鍵を開けてしまう。
 カキモトは「やあ」とか「遅いのに悪いね」とか当たり前に思える言葉を持たず、ずかずかと部屋に上がり込んでくる。
 それから流しに汚れっぱなしにおいてあるコップ

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市松人形

市松人形

 目の裏に焼き付いてはなれない映像がある。雑多な小物のなかに一体だけ寝かされている小さな日本人形。合羽橋にあるお気に入りの骨董屋での出会いだったが、普段特に人形など興味はなく、幼い頃から怖いと思って避けていた私にとって、その日本人形に一瞬で目を奪われたのには少し不気味な感じがした。
「日本人形だ」
 それを指さして、彼に伝える。彼は振り返りもせず、
「却下」
 と言った。ほとんど反射的と言ってもい

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