鍵を忘れたら(スペイン田舎の場合)
「鍵を家の中に置いたまま、外に出てしまいました」
日本語のクラスで、そんな一文が教科書に出てきた。
3人の生徒さんが「ああ、これやったことあります!」と手を上げた。
ホテルなどでの経験かなと思っていたら、全然違う話だった。
「子どものとき、鍵を忘れて外に出ました。仕方がないから窓を割って入りました。ハンマーを使いました」
子どもがハンマーで窓を割ったのかとびっくりしていたら、家族で出かけるときに鍵を忘れたようで、ハンマーを使ったのはお父さんだった。
ちなみに、その窓は後で全部新しいものに換えたので大丈夫ですと言う。
いや、そこじゃないんだと思いながら、それにしてもスペイン田舎ではハンマーが日常的に出てくるのだなと考えていたら、次の男子が続ける。
自分たち家族も鍵を忘れて外に出てしまった。そのため、マンションの上の階の人にお願いし、その人の家に入らせてもらった。その家のパティオ(中庭のようなもの)から、下にあるうちのパティオまで(1階分)父がジャンプした。無事、パティオから中に入って鍵をあけることができた。
ちょっともう、なんといっていいかわからない。
窓を割るとか、1階分飛び降りるとか、そんな話を聞いていたら、日本語の文法などどこかへいってしまった。
もう1人は、近所の人に鍵の複製を渡していたので、それを使って入ったとのことだった。
一番普通そうでいて、よほどの信頼関係がないと近所の家族に鍵の複製を渡すなんてできないなと思う。
そして、その3人に共通しているのは、家族全員鍵を忘れたまま外に出たことであって、のどかなアンダルシア田舎の様子が感じられる。
ともかく皆さん怪我がなくてよかったですねえ、とよくわからないコメントをし、「~たまま」の練習を続けた。
その後も私だけが「ハンマー」、「パティオからジャンプ」に引っ掛かりすぎていまひとつ集中できなかったが、皆それぞれおもしろい例文を作って新しい文法をマスターしていたので、まあよかったことにした。
今日も21度、もう春なのかこの町は。
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