見出し画像

新しい趣味について

新しいものを求める時私は必ず本屋に行く。
最近悩んでいることがあって、それは趣味が欲しいということである。
私の趣味は、人に言う時は平易に料理、得意な料理はグラタン、と答えることに決めているが、(無論事実ではある)これ以外に人に話して突っ込まれない趣味がないというのが本当のところである。自分の趣味について人に説明したり、追求され、時に自分の価値を値踏みされるような時間は、とても疲れることである。
見栄を張ってエントリーシートに嘘の趣味を書いたらそれだけのせいとは思わないが見事に落ちた。

本当のところの趣味は、正直いって料理よりも、自分の身近な人間の人間性の考察であり、その次にアイドルのおっかけ、読書、短歌、執筆、シーシャ、散歩、ショッピング、美容と続く。
でも最近これは趣味というよりライフワークであり生きるすべであることに気づいて、もっと単純に娯楽を追求したい。「人間観察」「文学」「贅沢」から離れたところでなにかに没頭してみたくなった。
そういうわけで、ある日の私は新宿の紀伊国屋に足を運んだ。

エントリーシートに書いた嘘の趣味とは、シルクスクリーンであった。そのESの提出日の三日前に私の好きなクリエイターさんがシルクスクリーンのワークショップをやっていて、そこに参加したからだ。趣味にしたいと思った気持ちは本当である。まだ趣味になっていないだけだ。
というわけで、5階の美術コーナーに向かう。
シルクスクリーンのはじめ方やシルクスクリーンの画集を手に取りながら、だんだん中学の美術の授業が楽しくなかったことを思い出して顔色が悪くなってきた。
思えば中学時代と言えば、あなたはなんでも出来る、なんにでもなれる、私たちの宝物だ!と大事に大事に育てられ巨大化した自己肯定感がありえない速度でバキバキとへし折られた時期であった。勉強も大して出来なければ、絵も上手くなかったし、歌も上手くなかったし、部活も全然馴染めてなかった。はあ。いかん、そんな暗い過去での自慰行為に耽けることを趣味にしてはいけない。せめてエッチで出来れば明るいもんでするべきです。
簡単なイラスト集を手に取ってめくってみたけど、なんかこれお手本にするならTwitterでフォローしてるアーティストのイラスト全部写経したらいいかなという気持ちと共に、なんだか急にバカバカしくなって、最終的に私に美術は無理かも…という気持ちを持って階下へ降りた。
群像の最新刊でも買って帰ろうと、いつもの文学コーナーへ足を運ぶとホーム感があって無性に安心する。群像を探していると、新訳古典コーナーで、敬愛する川上弘美のまだ読んでないやつをめちゃくちゃ久しぶりに見つけた。新訳伊勢物語だった。隣には角田光代の新訳源氏物語!3冊買うとなんかもらえるらしかったけど古事記だったのでやめた。あと文学コーナーの端っこでとても素敵なブックカバーを見つけたけれど5000円もしたので我慢した。
というわけで新しい趣味どころか「文学」「贅沢」のライフワークに原点回帰した回だった。

後日突然始めたホットヨガにややハマっている。
これを障害の趣味としていきたい気持ちは若干あるが、運動系の習い事は半年経つと情熱が失われがちなので注意深く自分を観察する必要がある。
それから、友人と話して書道教室もいいかもなーということになった。字を書くのは割と好きだ。ただお稽古の時間が小学生や主婦層に合わせられているのがネックである。
果たしてわたしは「人間観察」「文学」「贅沢」の三本柱から脱した趣味を見つけることが出来るのだろうか。次はまず本屋に行くところから辞めてみたい。
なお絵は1枚も書いていない模様。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?