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【事例紹介】顔認証技術を使ったコンテンツは2011年には早すぎました

この記事の作成担当:株式会社テンタス 代表取締役 小泉智洋

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みなさん顔写真を使ったアプリで遊んだことってありますか?

自分の顔の【性別を変更】したり、猫耳などの【アイテムを追加】、背景などの【画像を変更】したり出来るアプリで、私も何度か遊んでみたことがあります。

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(Faceappで私の写真を男性→女性に変換)

この機能は顔認証技術を使っており、AIの進化によって最も恩恵を浴びた技術の一つです。

顔認証技術は監視カメラなどですでに実用化されている為、携帯のお遊びコンテンツでもかなりの精度を出すことが出来るレベルまで成長していますね。

2011年の顔認証技術

最初は良くある普通の企画の相談でした。

「タレントさんの顔画像を使って何か面白いことできないかな?」

確かご相談を頂いてから企画を出すまでに3日しかなかったような気がしますが、特に予算の提示もなかったので大小含めていくつかの企画を提出しました。

【1.予算小】顔のパーツを使ったデジタル福笑い

【2.予算中】モーフィング技術を使った加齢シミュレーション

【3.予算大】顔写真を使った合成コンテンツ

確かこんな感じだった記憶があります。

結果、プランナーさんに3の企画を気に入ってもらい、顔写真を使った合成コンテンツを作ることになりました。

企画の詳細はこれです。

タレントさんとユーザーの顔写真を使った赤ちゃん生成コンテンツ

はい、言葉にするだけでヤバい感じがしますね。

1.好きなタレントさんを選択
2.自分の顔画像をサーバへアップ
3.二人の子供が生成される

といった内容でしたが、当時はまだ顔認証の技術が発達していなくて顔写真から顔のパーツの輪郭を検出する顔キーポイントを設定する能力が非常に低い為、予め設定しているパーツ毎の特徴との類似性で顔写真を振り分けをしていました。

「この人の眉は細くてハの字型だから、眉パターンはAの23パターン」

みたいな感じでパーツ毎に顔認証エンジンで振り分けていました。

こうすることにより顔認証エンジンがしっかりと特徴を捉えることが出来なかったとしても、近いパターンのパーツに振り分けることが出来、「似てない」けれども「それっぽい」画像の生成を可能にしました。

さらにランダムで

眉はタレント
鼻はユーザー
輪郭はタレント
唇はタレント

のようにどちらに似せるかを内部的にランダムで決定して、さらに男の子バージョンと女の子バージョンの決定をして生成し、正確な桁数は忘れましたが数千万通りの生成を可能にしました。

そしてできあがった画像は、、、


合成例_板野_ユーザー似男

ものの見事に不気味の谷の谷底へ落ちていきました。

不気味の谷とは

ロボット工学者の森政弘が1970年に提唱した。森は、人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。人間の外観や動作と見分けがつかなくなるとふたたびより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚えるようになると考えた。
外見と動作が「人間にきわめて近い」ロボットと「人間とまったく同じ」ロボットは、見る者の感情的反応に差がでるだろうと予想できる。この二つの感情的反応の差をグラフ化した際に現れる強い嫌悪感を表す谷を「不気味の谷」と呼ぶ。人間とロボットが生産的に共同作業を行うためには、人間がロボットに対して親近感を持ちうることが不可欠だが、「人間に近い」ロボットは、人間にとってひどく「奇妙」に感じられ、親近感を持てないことから名付けられた。
wikipediaより抜粋

結局は顔認証はパーツの振り分けにしか使わなかったため、現在のAIベースの顔認証技術のように生成時にパーツ毎ごとの最適化や全体の最適化を行うことが出来なかったため、「一見赤ちゃんに見えるとっても怖い画像」が生成されてしまいました。

イラストなどであれば多少は不気味さが薄まった思いますが、実際の赤ちゃんの画像をパーツごとに分解して画像を生成したことが不気味の谷に落ちてしまった決定的なポイントだったと思います。

当時はその不気味さも相まってそれなりに話題になったコンテンツでしたが、いま同じ仕組みを作ろうとすると最新の顔認証エンジンを使って本当に簡単にできてしまいます。

今回の事例は【技術の進歩には多くのトライ&エラーがある】というキレイなまとめ方で終わろうと思います。

うん。

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