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秀山祭九月大歌舞伎『祇園祭礼信仰記/金閣寺』で残暑の夏着物ウォッチング

歌舞伎座で、夏着物ウォッチング。盛夏とは別の九月の夏着物。小物より、着物を変えれば安心ね!

はて、さて。一幕目の演目は中村歌六・米吉丈の『金閣寺』。桜の木に縛られた雪姫が、地面に集めた花弁に、爪先で、サササッと描いたネズミが現れて、縄を噛み切るというアレである。

緞帳にも、満開の桜が

人形浄瑠璃を元に創られた「義太夫狂言」。三色の定式幕が開くと、ドンと中央に二階建ての金閣寺。大ゼリにのっていて、最後のくだりで、建物全体が動くのだ。そして、上手には廊下で繋いだ別棟、手前に太夫座(だゆうざ)があり、人間国宝・竹本葵太夫の迫力の語りで、場が進んでいく。座敷には憎き、松永大膳(まつながだいぜん)が、家来の赤っ面(あかっつら・赤い顔の化粧をした悪役)の鬼藤太とふたり、新しく家来になりたいという男・此下東吉(このしたとうきち)の到着を待っている。「ヒマだから、雪姫を口説こう」などと、不届き至極な、物言い。

そして、格子がスルスルと開き、雪姫が俯いて座っている。葵太夫の語り「顔を上げ」に合わせてフッと顎を持ち上げ、首を傾ける米吉丈の仕草に、ゾクッときた。その後、自ら部屋を出て大膳との交渉に赴くが、相手は見たことのない男と囲碁に夢中。二階には、恩義のある慶寿院(けいじゅいん)が捕らえられていること、そして、最愛の夫の存在が語られ、柱にもたれかかって「ああ、どうしよう」とあがく雪姫が、うわぁ〜ん、美しい。

でも、滝が見えない。歌舞伎座って、いつもどこかが見えない…。桜の木が下手にあったので、ネズミは見えるのかしらと心配になるが、桜の木に縛られた雪姫の太い縄が、犬のリードのように長く伸びて、花道だの、舞台中央だのまで、来てくれた。爪先は見えなかったけど、白いネズミがパカンと割れて、中から花弁がこぼれ出てくるところまで、バッチリ、見られた。

二幕目の『土蜘蛛』は独特の見得があるし…

右上のカットが、それ

「千筋の糸」は客席まで、飛んで来るかと思うくらい、大きかった。空中に放った瞬間、後見の人が片手の手首に巻きつけ、巻き直してくれたので、水族館のシャチのショーで水を浴びるような事態には至らない。それから、私、幸四郎丈が地鳴りのようなというか「勧進帳」を読み上げる時の「ぶぶぶぶ」となる感じを、想像して行ったのだけれど、本物はもっと、静かで、ヌメっとしていて不気味だった。

『土蜘蛛』は「松羽目物(まつばめもの)」なので、舞台の正面に長唄の皆さんが沢山、座っていらっしゃる。私はカルチャーで三味線を習っているので、足掛けの大薩摩(おおざつま)も選んで、何度か見たけど、今回は席が良かったので、一番(杵屋勝七郎さん)好きだった。

結論として、私も歌舞伎座デビューには、一階席をオススメします。チケットが高額なので、お友達を誘いづらいけれど、最近は松竹オンラインで、アフターケアのサービスもあるらしいです。幕見席以外は、映画館と同じような手順です。

それにしても、温室効果ガス。三連休の東京は、真夏日の数を更新中。終演時間が西日と重なる昼の部の歌舞伎座は、夏着物を継続中。ほとんどが紺(つまりは藍)で、カラーはワインレッドで、紗合わせかどうか確信が持てないが、絽目のないオーガンジーに似た素材。とにかく「実は、薄物なんです」というコーデが中心。透ける羽織やコートの方もいて、お一人だけ、白髪の美しいお婆様が下に着ていたのは、染めの単衣だったように思う。

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