「エイリアン」(実写映画)

視聴環境:Amazon prime video

【内容】
ネタバレします。

地球に向かって帰還中の宇宙船の乗組員は、救援信号の出ている宇宙船に調査に向かうが、そこにいた凶暴なエイリアンに襲われてしまう。エイリアンに襲われた乗組員を母艦入れたことで、船内に侵入したエイリアンが次々に乗組員を襲い始める。

【感想】
しっかりとした世界が構築されているので、古さを感じずに今観てもすごくリアルに感じられました。
映画公開の1979年当時の最新技術感のある演出と、それだけでは終わらない冒頭の日常感のある船内の描き方の何気なさは後に効いて来るようにシナリオが構成されていたりするのも良くわかりました。コールドスリープから目覚めたシーンや、乗組員での会食シーンなど、その後の展開の振りになっていたり…
乗組員のする会話で、ボーナスや法律がどうのとかといった日常的な感覚の会話が、その後の劇的な展開の振り幅としてよく効いていたり。

エイリアンというとギーガーのデザインしたモンスターの造形やその特撮に意識が入ってしまい、映画全体としてちゃんとみていなかったなあと思ったりしました。
こんな「エイリアン」みたいな映画や「ブレードランナー」みたいな映画、それから「オデッセイ」…SF分野だけでどんだけエポックメイキングな作品作っているんだと、改めてその凄さを感じたりしました。

昔、こうした映画を観て、自分がある程度の年齢になった頃には、普通にこうした宇宙船で宇宙旅行をする時代が来ているんだろうと、思っていたことを思い出したりしました。
技術的に難しいこともあったとはあるのでしょうか、歴史のどこかで分岐があり、こうした未来(現代)を選択出来なかったのかも知れないですね。
この頃はこうした遠洋に旅立つように宇宙旅行に出て出稼ぎをする未来を、普通に描き、それをエンタメとして消費する状況があったんだなあと…
今はこの手の世界観は、その時代時代で創造された頃のものをブラッシュアップする形で、良くも悪くも更新されいく。それはそれで観ていて楽しいけれど、この頃にあった熱のようなものはそれほど感じないうような気がします。まあ、自分がおっさんになって、自分が思春期に刷り込まれた興味の湧くもののと、今、作られているコンテンツがずれて来ているってことなのかも知れませんが…

とはいえリアルSF映画のテイストの無期的な近未来感のある空間に、ギーガーの強烈な造形センスが対比として使われることで、それまで存在しなかった世界観を作り上げたのだと感じました。
ギーガーの描く人間が潜在的に持っている様々な恐怖を、具体的ビジュアル化するという能力の高さ。そして、それが宇宙船という閉鎖空間で、乗組員の体内に入りこんだりしながら、ヒタヒタと迫って来る。
絶妙な緊張と緩和と、斬新なアイデアによる展開…
暗い閉鎖空間での火炎放射器を使ったバトル展開と、単色の示される位置情報のデジタル表示の対比。炎使って、凶悪なモンスターを倒すという古典的なモチーフは、ビジュアルとしてもはえるし、盛り上がる。
情報の開示方法も、乗組員の腹の中からの飛び出して来るエイリアン、情報集積されたコンピュータから開示される極秘任務、乗組員の科学者から流れる白い血…
物語上の話の展開のきっかけがいちいち気が利いていました。極端にグロテスクなものと、無機質なものを交互に提示される。

事態を掻き回す、船内を歩き回る猫の存在も作劇上、よく効いていました。
この猫の存在によって、3幕構成の2〜3幕目のどれだけ細かく盛り上げられたのかということも感じたりしました。
シナリオ段階で、どれだけ緻密に作品を作り上げたんだろうなあと…

主演のシガニー・ウィーバーの落ち着きリラックスした演技から、ボロボロになり鬼気迫る演技へと変わっていく対比。今回の鑑賞で改めて、ホラー映画は役者の恐怖の演技の重要さを感じたりしました。
あと、主人公を女性にすることで、宇宙空間での心細さや、凶暴な男性の象徴のようなデザインのエイリアンとの対比にもなっていることにも気付かされたりもしました。
配役や造形全てが作劇上の振りになっているんだと気付かされました。
過去の物語や象徴を利用することで、作品に普遍性を持たせるということの重要性を感じたりもしました。

ライティングも後半に向かって、暖かい色調のライティングから、青白い寒色系のライティングへ、そして、警告を表すチカチカとしてライティングへと変わっていくというビジュアル的なわかりやすさ。

物語構造自体は、至ってシンプルなモンスターものなのに、設定やアイデアでそれまでのものとか全く違った世界を作り上げてしまう。
これが43年前の作品なんだと思うと改めて、その凄さを感じたりしました。
映像の企画の種みたいなものは、こうした古い名作映画の中にまだまだ沢山眠っているんだろうなあと…

あと、家の環境で見ていたのですが、これはやはり映画館で観るべき作品なのだろうということはすごく感じました。
冒頭だけちょっと観ようと思ったのですが、一気に全部観てしまいました。

https://movies.yahoo.co.jp/movie/2752/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?