公立と私立の違い(入試問題作成編)
公立校では入試問題の作成に携わることはあまり無いと思います。
公立の小学校・中学校に入試はありませんし(※一部の中等教育学校などは除く)、公立の高校でも一部の先生が問題を作成しているということを耳にしたことがあります(独自問題を作成している学校は私学とあまり変わらないかもしれませんが‥)。
一方で、私立校はほぼ毎年のように入試問題の作成に携わることになる場合もあります。
いずれにしても、熾烈を極める業務の1つです。
私立学校における入試問題の意義
1つには、もちろん生徒を選抜するため。
他にも広報的な側面もあります。
最近では減ってきた印象もありますが、「シカクいアタマをマルくする」というような電車の中吊り広告もありますね。
入試問題はある意味では学校の顔。
限られた出題範囲の中から、如何に面白い問題を作るか。
そして世の中から認められて興味をもってもらえれば、受験してもらえるかもしれない。
私立学校は、良くも悪くも中小企業です。
生徒がいなければ、学校運営・学校経営は成り立ちません。
そして優秀な生徒を確保することができれば、より安定した授業展開だったり、発展的な学習展開だったりを導入できる可能性が上がるかもしれないわけです。
合格実績が1つのわかりやすい指標になることが少なくないですが、良い(※定義は様々ですが)生徒を集めて、レベルの高い授業で伸ばし、合格実績を出し、評判が上がり、さらに優秀な生徒が入学する‥という好循環になることを目指している学校は少なくないと思います。
入試問題の作成で気をつけること
ただし、公平に選抜できるようにするための出題範囲や出題内容の確認、試験時間との兼ね合い、解答数、配点、言い回しや誤字・脱字チェック、など入試問題の作成では気にすることが多いです。
見下すような意味合いで使われることも少なくない「てにをは直し」ですが、入試問題の作成ではかなり重要です。
日本語の文構造も意識しますし、主語と述語のねじれも意識します。
1つの文章の長さも長過ぎず短すぎないように気をつけます。
また、通常の国語の意味とは異なる使い方をする各教科の用語もあったりします。
違う言い方を考えたり、過去の出題や小中学校の教科書や参考書を調べたり、他校の過去問を研究したりもします。
入試問題は絶対にミスの許されない作業です。
やはりプレッシャーも大きいです。
当然、採点基準や模範解答の作成も定期テストの数倍気を遣います(※定期テストに気を遣わないというワケではもちろんありません)。
入試問題の作成の分担
学校によっては、誰がその年の作問担当者なのかを学校内でも公にしない学校もあります。
情報漏えいを避けるためだとは思いますが、作問担当者どうしだけがわかっているという状況です。
マンモス校などで専任教諭の人数が多い場合には、数年に一度の割合で担当が回ってくるという学校もあります。
逆に、小規模校だったり、社会や理科など細かく学科が分かれている教科については、毎年のように担当者にならざるを得ないという学校もありました。
作問会議の実態
毎日のように、22時とかまで残って会議をする学校もありました。
学校によって、施錠の兼ね合いもあるので、21時までとか、23時までとか、様々な話は聞いたことがあります。
ある特定の時期(夏休み中とか10月と11月とか)に短期集中で行うという学校もあるようです。
一方で、年間を通して、毎週1~2回の会議を重ねていく学校もありました。
会議の場所も、学校の会議室だったり、教科の準備室だったり、校長室だったり、学校によって様々なようです(ただし生徒に聞かれないように配慮はしている学校が多いハズ‥)。
教科特有の悩みも枚挙に暇がありません。
国語や英語は、使う教材選びの時点で苦労しています。
他校が既に出題していたとかもありますし、同じ出典から近隣の他校が数年以内に出題していたとかも気にする場合もあります。
著作権の問題なども絡んできたりすることもあるようです(詳細は不明ですが、許可が降りなくて使えなかったという学校にいたこともあります)。
社会や理科は図や写真を準備したりするのも大変です。
そして昨今は、生徒確保のために中学入試を日程を分けて複数回行う学校が増えており、当然その回数分だけ問題も作成しなければいけないわけで‥
おわりに
今回は私立学校特有の入試問題作成業務について記事を書きました。
一部の学校では、作成を外注するということをしている学校もあるという話は聞かないでもないですが、情報漏えい等のリスクを考えると、どうなのかと思ってしまいます。
私は入試問題を作成する私学に4校いましたし、同僚の過去の勤務校など他校の様子もちょくちょく聞いていますが、やはり一定レベル以上の学校の入試問題作成業務はどこの学校でも熾烈を極めると思います。
サポートいただければ幸いです。いただいたサポートは記事制作のための交通費や文書費などに充てさせていただきます。