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小さな事故が事件に変わるまで(1)一般市民の民事裁判初体験記【2】自転車は空を飛ばない

2017年10月4日(水)
隣のY氏より、在宅していたうちの娘に一報があった。ピンポン鳴ってドアを開けた娘に向かってY氏はこう言った。

「(自分の車の)ドアを風にあおられて、(お宅の車の)ドアに当ててしもうた。ごめんな。修理代は払うから言うてな」

娘はそのあと、仕事に出かけないといけなかったので、妻の耳に入ったのはその日の昼頃。私が知ったのはその日の夜であった。妻も私もその夜に車両の状態については、確認することはなかった。翌朝、車を見てみると、確かにハッキリ分かる傷があった。

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 「こりゃ、デカいな!」というのが第一印象であった。

Y氏とは隣り合わせに住んで、この時点で10年程の月日が経っていた。正直なところ、親密というほどではないが仲が悪いというほどでもない。顔が合えば、挨拶し合って、たまに立ち話をする程度のごく普通のご近所付き合いだった。年齢は私たち夫婦とほぼ同年代。子どもの年も近く、お互いに犬を飼っている共通項があった。敢えて我が家との違いを言えば、Y氏はご主人とこの数年前に離婚して、シングルマザーであることだった。ただし、マザーといっても、子どもはもうとっくに成人している。

2017年10月5日(木)か6日(金)だった 18時頃
帰宅した妻にY氏が声をかけてきた。謝罪の言葉あり。妻は、その言葉を受けながら「ディラーさんで見積もりをしてきますので、しばらく待っていてください」と返答した。

この時点で、私たち夫婦は事を荒立てずに、穏便に済ませる方針を固めていた。誰が見ても分かるデカい傷を付けられていながらも怒ることも怒鳴ることも一切しなかった。相手は自らの過失を認めて、謝罪もしている。それを責める必要はないとした。今後の近所付き合いを考えると、穏やかに進めていくのが最良の策と信じて疑わなかったのである。

しかしながら、振り返れば、この時点で、私たちのこの温情主義は大きなミスを起こしてしまっていたのであった。

つづく


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