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突然、弁護士がやって来た(1) 一般市民の民事裁判初体験記【9】自転車は飛ばない

2017年11月9日(木)11時頃
妻の携帯に1本の電話が入る。妻は知らない番号であった。
相手は、Y氏代理人と名乗るKという弁護士であった。中高年いや、もっと年配の男性。驚くべきことに、K弁護士は、妻に事務所に来いとの要望を突きつけて来た。しかも妻だけではなく、夫の私も一緒にと。

 妻はもちろん拒絶である。夫の同席についても「ホットラインがあるでしょ」と至急連絡を取ることを求めたらしい。妻にすれば、電話がいきなりあっただけでも驚愕だったのだが、相手が訪問したいということで、解決を進めるべく、自分の職場(妻は店を経営していた)へ来てもらうことを承諾した。

 このあと、どうなったかは、書き綴っていくが、ここで教訓である。

 相手が弁護士を指し向けて来たのなら、素人が直接、相手をする必要はない。ビビる必要は一切ないのだ。別に会わないといけない義務はない。読者の皆さんはお気づきだろうが、本件の被害者は当方だ。呼びつけるとは失礼千万ではないか。

 この時の妻はビビッた訳ではなかったが、解決を早めたい一心で、会うことを決めたのであった。果たして、その日の16:30頃、その弁護士はやって来た。こちらは、妻に加えて、娘も義母も同席することとして、三人で迎えることとした。

 妻は、この時点でも夫の私には一報していない。毎日、仕事に追われて出張中の私に、この件を背負わせることを避けて、自分で解決を図ろうとしていたのであった。私にしても、そういう連絡をこの時点でもらっていたとしたら、怒り狂って、仕事に多大な支障が出ていたような気がする。

 来訪した弁護士は、中高年と呼ぶよりもっと年配の男性であった(後に、この時点で75歳であったことが判明)

 K弁護士は開口一番「こういうのは、私が来たら2週間で解決します」と豪語して、またしても夫の私と連絡がつかないかと執拗に妻に迫った。

 妻は毅然と「連絡はつきません。この話は私が聞きます」と答えた。

 ちなみに、話の冒頭に、娘の方から「この話は録音していいですか」と申し入れてあったので、私は後日、この時のやりとりを詳細に確認することができた。ここは娘のファインプレーであった。
 さて、このK弁護士。いきなり「お宅、最近、大きな車に替えはったそうじゃないですか」と切り出して来た。いきなり発砲である。

 K弁護士は切れ者の押し出しの強い風貌ではなく、小柄で、声は聞き取りにくく、迎え撃ったうちの三人組の見方では、しょぼくれたおじいさんといったものであった。

 K弁護士は、さらに、何を言っているか容易には分からいにくい不明瞭は物言いで、話を重ねて来た。

① お宅の車はY氏宅地側にはみ出て駐車している
② お宅の植木がY氏側宅地に侵入している
と、連続パンチを繰り出しである。

① については、そんなことはかつて1回もなかった。
② については、1本の草木がY氏の玄関表札にまで伸びている写真を示していたが、当方は、この年の6月に庭師の方に来てもらい、庭の植木は、全面的に剪定済であった。1本の草木でそのことを主張するのか。
 妻と娘は臆することなく、即座に否定していた。

 どうやら、Y氏は、これまでいかに迷惑をかけられていたかの被害者になって、当方を責め立てる作戦に出たようであった。それにしても、論証がしょぼすぎだ。論証どころか、事実誤認なので、ハッキリ言って言い掛かりレベルのものであった。K弁護士は、妻と娘の反撃で即座に沈黙となった。

 Y氏代理人のK弁護士の主張の本丸は実は別にあった。なんと、両家の宅地のセンターラインに塀を立てたいというのである。

甲2号証 - コピー (2) - コピー - コピー

 しかも、またまた、「なんと!」と使わせてもらう。その費用は当方にお願いしたいと。Y氏側は負担しないので、お宅で頼むと。

 お気づきだろうか。ここまでの話で、くだんの当方車両の修理代の話は、まったく出ていない。一体、この弁護士は何をしに来たのだろうか。

 たまりかねて、妻が問いかけると、

 K弁護士「奥さんは自分のことばかり話される。Yが賠償金を払ったら、塀やY車両のバンパーの件は解決しないでしょ」とのたまった。

 ここで、例のバンパーが登場である。Y氏はK弁護士に、当方の自転車がY氏の車両のバンパーに当たったと主張していたのであった。驚くことに、この主張をするのに、この弁護士は物証を全く示さなかったのである。依頼人の言うことを、真偽を確かめることなく、そのまま伝えていた。

 それまで静かに様子を見ていた義母がここで、K弁護士に一発打ち込む。

 「現場は見られたのですか?」と問いかけられたK弁護士は驚くべき答えを返した。

 K弁護士「わたしぐらいのベテランになれば、見なくても分かります」と。

 もう話にならないが、これが、Y氏が送り込んできた解決への使者だったのだ。

 この弁護士、一向にひるまない女三人に詰め寄られて、形成不利と見たのか、妻が、一瞬、席を離したのをきっかけに、コートも忘れて、逃げ帰ろうとしたのである。

話は終わってなんかいない。もちろん、妻たちは引き留めた。とりあえず、この席での話は、双方で協議することにはなった。K弁護士からは「最後は覚書の案を作成します」との話があった。

 この日、そんなことが巻き起こっているなどとは露知らず、私は出張先にいた。その週は月曜日から土曜日まで出張の連続だったのである。妻はそんな私に負担はかけまいと、この日の話の結末も自分でつけようとしていた。

 ここで教訓(まとめ)
1. 弁護士が出てきたら素人が相手をするなはお伝えしたが、
2. もし、会わないといけなくなったら、一人ではダメ。必ず、
  複数で会うこと。
3. そして、記録(録音)をしておくこと。言った言わないになると証明が困難になる。

そして、次の4つ目がとても大きなものになるのだが、それは次回に。

 妻がこれをやってしまって、このあと、非常に苦しむことになった。

つづく


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