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これからの作曲家の生き方を本気で考える。

こんにちは。
作曲家の天休です。

今回は以前書いたnote↓

この記事の後半で触れた作曲家の生き方について深掘りしていきたいと思います。

最初に釘を刺しておきますが、これはあくまで僕個人の見解なので、テキトーに取捨選択をお願い致します。

1.劇伴作曲家になる

恐らく、これを目指している人が多いんじゃないでしょうか?
トップの劇伴作曲家になれれば、おそらく年収数千万円も夢じゃないです。

そもそも劇伴作曲家の収入はどこから得られているのでしょうか?

まず分かりやすいのがドラマやアニメを作る際の音楽制作費から支払われる分ですね。
一応お金の流れを整理しておくと、

スポンサー → テレビ局 → 映像制作会社 → 作家事務所 → 作曲家

という感じです。

そして二次使用料というものがあります。
実は、こちらの方が作曲家の収入のメインになることが多いと思います。

二次使用料とは、ドラマなどで作ったサウンドトラックが、バラエティ番組などで使用された際に払われるお金です。
バラエティ番組でスターウォーズの曲とか聴いたことありませんか?
あの度にジョン・ウィリアムズにお金が入っているというわけです。
お金の流れ的には、

使用者(テレビ局など) → 著作権管理団体(JASRACなど) → 作家事務所 → 作曲家

なので、有名な曲はドラマで使われて終わりではなく、何度も二次使用され、お金を持ってきてくれるというわけです。
そして、使われやすい曲を作れば作るほど「お、この曲いいな!」から「お、この作曲者いいな!」となり、二次使用がされやすくなります。
バラエティ番組の選曲家の方も、無数にあるサウンドトラックから曲を探すのは大変ので、お気に入りの作曲家の曲の中から選ぶことが多いはずです。

裏を返せば、無名な作曲家は二次使用がほとんどありません
なので収入はほとんど音楽制作費のみなので、劇伴の仕事を受け続けないと食べていけません。

……え?

仕事がないから無名なのに、仕事を受け続けないと食べていけない……。

ここに劇伴作曲家になるための最大の壁があります。

そしてコロナの影響でドラマは中止、スポンサーも広告費を削っているので音楽制作費も下がります。
さらに縮小された枠を、有名劇伴作曲家が奪い合っている状態……。
ネットアニメやネットドラマが増えればこの枠も増えるのでしょうが、保守的なテレビ業界が本格的にネットに乗り出すのはもう少し先になりそうです。

劇伴作曲家になることの難しさ、ご理解いただけかと思います。

それでも志高く、絶対に劇伴作曲家になるという方は止めはしません。
しかし、何らかの戦略がないと、事務所に入れたとしても生きていくのは難しいです。(そもそも事務所に入るのも難しいですが……)

2.ゲーム音楽作曲家にな

ドラマやアニメ、映画ではなく、ゲーム音楽の道を目指す方もいらっしゃると思います。

ゲーム音楽のほとんどは、ゲーム制作会社所属の作曲家か、ゲームがメインの作家事務所によって製作されていると思います。

例えば任天堂やカプコンなどはほぼ毎年サウンドクリエイターを新卒採用していますし、日本ファルコムなんかは通年で募集しています。

一方、ゲーム音楽がメインの作家事務所の一例としてノイジークロークを挙げておきます。

劇伴作曲家との大きな違いは、働き方がサラリーマンと変わらないということです。(ノイジークロークがどうかは知りません……スミマセン……!)

以前、任天堂で働く作曲家の方にお会いしたことがあるのですが、どんなにヒットする作品に携われても、給料は変わらないと仰っていました。

これはゲーム音楽が劇伴に比べ二次利用されにくく、されたとしても権利がゲーム制作会社にあるため、著作権使用料が作曲家に反映されずらいことが原因なのかなと考えています。

もちろん大手ゲーム会社に就職できたら、そこら辺の企業よりは高給取りになれるでしょうが、劇伴作曲家ほどの夢が見れる感じではないと思います。

そして近年、インディーズゲームの台頭やスマホゲームの普及で、ゲームの本数自体増加傾向にあるようです。

これは、年間通して本数が決まっているドラマやアニメと大きく違う点です。

5Gの登場でゲームのクラウド化が進み「Google Stadia」の進化版のようなサービスが出れば、もはやゲーム機すら要りません。
この先結構伸びてくる業界のような気がします。

作曲家としての知名度は上がりにくいかもしれませんが、会社員としてまっとうに生きる道も良いですね。
ゲーム制作会社から独立してフリーになる人も大勢いるので、とりあえず会社に入ってみるという手段も悪くありません。

3.CM音楽作曲家になる

CM音楽作曲家についてはあんまり詳しくないのでさらっと書かせていただきます。

CM音楽は、CM音楽がメインの作家事務所の作曲家が担当することが多いようです。

スポンサー → CM制作会社 →作家事務所 → 作曲家

CMは劇伴などと違い尺が短いことが多いため(15秒~30秒)、やはり二次使用されにくく、買い切りになるケースがほとんどのようです。
なので、後述する資産になる曲が作りにくいのかなと個人的には考えています。
なのでこちらもサラリーマン的な働き方になると思います。
(もしこの記事を読んでいるCM音楽作曲家の方がいたら教えてください……)

ただ、CMの尺や本数は増加傾向にあるのかなと思います。
今や大手企業でもYouTubeチャンネルを持っている時代です。
CMだけでなくPVを制作し、YouTubeチャンネルで公開する。
こうした企業が増え、長尺のCM音楽を作ることができれば、二次使用されやすく…………ならないか。

いずれにせよ、CM音楽で安定して食べていくには、CM音楽系の作家事務所に入ることが一番近道のような気がします。

4.AudiostockやYouTubeで稼ぐ(フリーランス)

最近伸びを見せているAudiostockやYouTubeで稼ぐ生き方もあります。

例えばこおろぎさん↓

Kazumasa Aramotoさん↓

今まで紹介してきた仕事との違いは企業に雇われない生き方ということですね。

さて、AudiostockやYouTubeの強みは、制作した曲が必ず資産になるという点です。

先にも述べましたが「受注された曲を作って、その制作費をもらって終わり」だと、一生仕事を受け続けなくてはいけません。
そういった生き方を否定はしませんが、資産になる曲を作れば、そのラットレースから解放されます。

1曲1000円でいい。
毎月1曲1000円売れる曲が200曲あれば、それだけで生きていけます。
仕事を受ける必要もありません。
残りの人生を、あなたが作りたい物、愛したい人と謳歌できます。
別に仕事を受けて、さらなる収入増を目指すこともできます。

時間(=人生)を切り売りするサラリーマン的な生き方よりも、資産を作る生き方のほうが自由な人生は歩めるでしょう。

でもぶっちゃけ、毎月1000円売れる曲を200曲作るのは難しいです。
ってかシンドイです。

しかし、AudiostockやYouTubeで生きていくなら、個人という生き方を目指すなら、これぐらい覚悟がないとやっていけないと思います。
毎日曲を書き、1日1曲。1年で300曲。3年あれば900曲。
900曲中3割が売れればいいのです。
3年頑張れば自由になれます。
継続さえできれば人生は変わるでしょうね。

ただ、お金の流れは意識しておく必要があると思います。

例えばYouTube。
YouTuberの人の大半は広告収益で稼いでいます。

企業 → Google(YouTube) → YouTuber

企業が広告費としてYouTubeにお金を払い、広告が表示された回数に応じてYouTuberにお金が入ってくるシステムですね。

ただ、ここでもコロナの影響が出ています。

コロナの影響で各企業の広告費が削減されている話は先ほど述べました。
その影響が各YouTuberに広がっているわけですね。
じゃあコロナが落ち着けば広告収入は元の金額まで戻るのかというと……。
僕は戻らないと思います。

YouTubeで有名企業のCMを見るようになったのは去年の下半期ぐらいからだと記憶しています。
今までテレビで広告を出していた有名企業が、ようやく「あれ? もしかしてYouTubeって良いのでは?」と乗り出してきたんだと思います。

つまり、YouTube広告の価格の相場が定まっていなかったんだと思います。
恐らくテレビの広告などと同じかやや低いくらいの値段をつぎ込んでいたのでは? と勝手に思っています。

そして、それがコロナの影響で削減された。
一度削られたものは元に戻りにくいです。
これからは、減った今の金額こそがYouTube広告の価格の相場になるでしょう。

なのでかつてのYouTuberの栄光を夢見ている人は、少し冷静になってYouTuberを目指した方が良いと思います。


そしてAudiostock

利用者 → Audiostock → 作曲家

こちらもシンプルですね。

さて、スポンサーからの広告費が減ったことで、小さい制作会社などは制作予算を切り詰めなければなりません。
当然音楽制作費も削られます。

そうなると、サントラを使って著作権使用料を払うより、Audiostockで似たような曲を探す、といった制作会社が出てくるはずです。

無名の作曲家が、有名作曲家からパイを奪える唯一のチャンスといっても過言ではないでしょう。

そしてこれは海外の制作会社にも言えます。
国境をまたいでいることがAudiostockの強みです。

来年のオリンピックいったいどうなるのか、日本のいまの状況はどうなのか、もし開催可能なら日本にどんなスポットがあるのか?
そんな番組を作る際、日本的なBGMが必要になるかもしれません。
予算がなければ、日本の音楽販売サイトを探る会社があってもおかしくありません。

***

いろいろ書きましたが、大切なことは資産になるものを作ることです。
資産さえあれば働かなくても、資産がお金を引っ張ってきてくれます。
数年間努力したあと、残りの人生を謳歌する、という生き方も悪くありません。

5.支援者を集める

さて、さきほど「毎月1曲1000円売れる曲が200曲あれば、それだけで生きていける」と書きましたが、果たして本当にそうでしょうか?

それは50年後もAudiostockが存在し、Audiostockの利用者がいれば、そうかもしれません。

でも、僕はほぼ確実にAudiostockは無くなると思います。
というかAudiostockだけではなく、劇伴作曲家という職業も無くなると考えています。

なぜなら、技術の進歩とともに音楽の価値は下がっているからです。

蓄音器がなかった時代。
クラシック音楽は貴族だけのものでした。
高いチケットを払い、コンサートホールに行けるものだけが、クラシック音楽を聴けたのです。

それが蓄音器が出てくるとどうでしょう。
レコードさえあれば、わざわざコンサートホールに行かなくても、家でクラシック音楽が楽しめます。
でも、まだまだ蓄音器もレコードも高級品だった。

カセットテープとコンポの登場で、音楽の価値は急落しました。
SONYがWALKMANを発売すると、もはや家にいなくても音楽が聴けるようになります。

現代はどうでしょう?
もはや音楽がデータとなり、クラシック音楽なんかはYouTubeで無料で聴くことが可能です。

作曲技術だってそうです。
昔は高等な音楽教育を受けなければ、作曲家になれなかった。
でも今は作曲の指南書はネットに山ほど転がっており、iPadさえあれば曲が作れます。

僕はこれから先、AI技術の進歩により、映像に付随する音楽はすべてAIが作曲するようになると考えています。
もはや劇伴は、人間が作る価値すら失うと思います。

AIは映像を解析し、秒間に何万曲という曲を作曲するでしょう。
いま見ている視聴者の心情や、性格、部屋の温度や明るさによって、一人ひとり個別にベストな音楽を提供することだって可能です。

バラエティ番組だって、AIに任せれば、選曲家もサウンドトラックも必要ありません。
全てが一瞬で、完璧に仕上がります。

ちなみにAI作曲はこのレベルまで来ています↓

商業作曲家がいなくなる。
そんな時代がいつか必ず来ます。
それが10年後か、20年後か、もしくは数年後にはそうなっているかもしれない。

人類の歴史の中で、非効率的なものはどんどん排除されてきました。
商業作曲家は非効率な、排除されるべき職業なのです。

悲しいですが、たぶん、そうなると僕は思います。

***

それでも作曲家として、愛する音楽を作りながら生きていきたい。

だから僕は、支援者を集めます。

僕に毎月500円支払ってくれる支援者
劇伴が無くなろうが、Audiostockが無くなろうが、たとえYouTubeが無くなっても、僕が作るものや僕自身に価値を感じ、お金を払ってくれる人たち
支援者が400人いれば毎月20万円。
これだけで生活できます。
スポンサー企業のお財布事情で収入が左右されることもありません。

そして僕はこの400人のためだけに生きます
企業から仕事がもらえなくても、有名な仕事ができなくても、僕にはこの400人がいます。

もちろん現状、400人の人が毎月500円支払ってくれる価値は、僕にはありません。
400人の人たちをどうしたら楽しませられるか、どうしたら喜んでくれるか、どうしたら幸せだと思ってもらえるか
それだけのために懸命に考え、生きていきます。
それが劇伴なのか、映像作品なのか、はたまたモノを書くことなのか分からない。
でも、それを悩みながら創作活動をしていくのも、悪くない人生じゃありませんか。

以前の記事でも書きましたが、これから閉じたインターネットの時代が来ます。

今は兆候があるだけですが、急速に加速しているように感じます。
今なら、誰でも閉じたインターネットを作れる可能性があります。
僕はここに布陣を敷きたいのです。

これが僕が考える、AIと競合しない、唯一の生き方です。

6.おわりに

ちょっと熱く語ってしまいましたが、以上が、僕の考える作曲家の生き方です。
もちろん他の生き方もあるだろうし、AIに仕事が奪われる日が来ないかもしれない。
数か月後には僕の意見も変わっているかもしれない笑

あなたがどの人生を選択しようが、あなたの自由です。
いろいろと思うところはあるかもしれませんが、ぜひ生き方の参考にしていただければ幸いです。

というわけで、支援者になってくれる方を募集中です↓

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それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!!

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