見出し画像

地産地消について

地産地消について

近年、農家から直接買い付けできる「食べチョク」や、食品ロス削減を目的とした規格外野菜等が購入できる産直ECサイト等も増え、消費者と生産者の相互理解を深める取り組みがさまざまに行われています。
その中でも今回は、「地産地消」の取組みについて調べてみます。

地産地消とは?

「地域生産-地域消費」の略語で、地元でとれた農林水産物をできるたけ地元で消費するという意味です。
日本で地産地消という言葉が使われ始めたのは1980年代頃で、歴史は浅いです。農産物の自給率の低さが課題として取りあげられるようになり、「国内地域でつくられた農林水産物を、その地域内で消費することを推進しよう」という動きが活性化しました。
具体的な取り組みは、直売所や量販店での地場農産物の販売、学校給食、福祉施設、観光施設、外食・中食、加工関係での地場農産物の利用などが挙げられます。食料自給率の向上に加え、直売所や加工の取組などを通じて、6次産業化にもつながります。

近年は特にSDGs目標の達成に深くかかわる取り組みとしても、注目を浴びています。
SDGsと地産地消については後述します。

地産地消と似た用語

「身土不二(しんどふじ)」との違い

「身土不二」とは?

「身と土、二つにあらず」、人間の体と人間が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという意味の言葉で、「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い」ということです。

仏教用語では「しんどふに」と読みます。

これまでにしてきた行いである「身」と、その身が拠りどころとしている環境である「土」は切り離せないという考え方です。

お隣、韓国でも1980年代末から、「身土不二(韓国語読み:シントブリ)」の概念は広く知られています。

千葉大学大学院・園芸学研究科のレポートによると、韓国で身土不二は『郷里の食材や地元の食文化を大切にすることが、健康上も望ましいし、自然環境の保全、さらには生活の安定・向上にもつながる』という意味に解釈されており、日本よりも広義にとらえられているそうです。

「スローフード」との違い

「スローフード」は、イタリアで1980年代に始まったその土地の食文化を守るための社会運動です。

その地域でしか食べることのできない食材を守り、次世代につないでいくことが、持続可能な社会を築くために重要だと考えられています。

インスタント食品や、注文すればすぐ食べられる「“ファスト”フード」ばかりではなく、食べ物をじっくり見直すことから、生活に豊かさを持とうという運動で、食品添加物を使わず、伝統的な食材やその土地ならではの素材を活かした食べ物をとることなどを差します。

日本の代表的なスローフードと言えば、お米をはじめ味噌や醤油といった調味料のほか、各地の伝統野菜、お正月などの年中行事の際に食べられる料理もスローフードの1つになります。

地産地消のメリット

1:新鮮で栄養価の高い食品が手に入る

農林水産物は鮮度が命と言っても過言ではなく、採れたてを食すに越したことはありません。
地産地消では、地域で獲れた農林水産物が地域内でそのまま出回る為、新鮮で栄養価の高い食材を手に入れることができます。

2:消費者と生産者の距離が近くなり、お互いの「顔」が見える

消費者は、生産者の顔が見えることで食の安全性に対する、不安軽減につながります。
生産者は、消費者の反応や評価が直接届くことで、モチベーションアップや品質改善につながります。

3:地域経済の活性化につながる

生産者と消費者が直接やりとりすれば、消費者の声からビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。
消費者の希望を生産者側が実現できれば、新たなニーズを掘り起こせます。
このように、“6次産業化”が進めば、農林漁業者の所得は増え、地域経済の活性化につながります。

4:地域の食文化を後世に伝えやすくなる

地産地消で地域の食材が地元に根づけば、独自の文化の継承にも役立ちます。旅館や民宿などでは観光資源としても提供できるようになります。

5:環境への負荷を低減できる 

食物の輸送距離は短くなるため、エネルギー

地産地消のデメリット
地産地消にはデメリットもあります。

1:【消費者側】価格が高くなる恐れがある

大量生産の恩恵を受けられなくなり、食物の価格が上昇するリスクもがあります。また「地域差」という課題がついて回ります。
地域で生産される食品以外を入手しようとすれば、当然手間や価格はアップします。入手できる食材に偏りが生じやすい地域では、地産地消の推進は難しいと言わざるを得ません。

2:【生産者側】生産以外のコストや手間が発生する

地産地消となると、梱包や出荷は生産者の負担となり、その分労働力が必要となります。
つまり生産者は生産以外の部分でも「販売スキル」や「宣伝活動」など様々な能力が求められることになります。

3:【生産者側】安定生産に向けた課題がある

地産地消の取り組みとして、近年注目されているのが学校給食です。
メリットは多いものの、一定の量を安定供給するのが難しいという課題もあります。

地産地消とSDGs

地産地消は、近年注目されるSDGs(持続可能な開発目標)との関連性も深いです。
17のゴールと16のターゲットを掲げ、地球上の誰一人取り残さない取り組みを誓うSDGs。

地域で獲れた農林水産物をその地域内で消費する地産地消は、さまざまなゴールと密接に関連しています。

特に深く関わるのはこの2つです。
※ゴール14「海の豊かさを守ろう」
※ゴール15「陸の豊かさも守ろう

海産物も農産物も、地域で消費する分のみを生産すれば、土地や環境に過度な負荷がかかることはなく、貴重な資源の保護にもつながるでしょう。

また、世界が抱えるエネルギー問題や環境問題とも関連します。
※ゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
※ゴール13「気候変動に具体的な対策を」

運搬時のCO2削減を担う地産地消の推進は一定の効果が期待できます。

地産地消と「6次産業化」
6次産業とは、
1次産業を担う農林漁業者が、自ら2次産業である「加工」や3次産業の「販売・サービス」を手掛け、生産物の付加価値を高めて農林漁業者の所得を向上する取り組みを指します。
1次産業に、ほかの産業を掛け算して6次産業としています。

6次産業 = 1次産業(農林漁業)×2次産業(加工)×3次産業(販売・サービス)

代表的な取り組み
■1次×2次×3次の例
・農産物の加工・販売:販売。商品開発からパッケージ、販路の開拓まですべてを農家が行う。
・農家レストラン

■1次×2次の例
・農産物の1次加工:企業や飲食店が使いやすい形に農産物を加工。例:カット野菜やカットスイーツ、原料用にペースト状に加工。

■1次×3次
・直接販売:卸売を通さず農家が直接通販サイトや道の駅などで販売。
・観光農園:農園やほ場を訪れた観光客に「体験」を提供。収益は体験料や入園料として得ることができます。
・農家民宿:民宿などの宿泊施設を運営し、宿泊客に農業体験を提供。

今回は地産地消について考えてみました。
これからの社会において、さまざまな観点から外食産業も地産地消の取り組みも必要になってくると考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?