ねこまふらー
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なみだってなんでしょっぱいんだろうね。おいしくないし、なんだか悲しくなっちゃうあじ。もっとおいしい味だったらもう少し元気もでるだろうに。
馬鹿だな、涙がおいしかったらきっともっと胸が苦しくなるぞ。
皮肉なほどに星降る夜に、ベランダの隅で泣きながらそう笑う彼女を見て、俺は少しため息をついた。やれやれ、これで何度目の失恋だ。俺はベッドから降りて彼女の元へ行くと足元にすり寄った。
「わ、クロ、くすぐったいよ。」
お前が泣いているからだろう。
「おなかすいたの?」
どうしてそうなるんだ。
「励ましてくれるの?」
うぬぼれるな、お前が泣いてると落ち着いて食事ができないだけだ。
「猫って何も考えてなさそうでいいわね。」
いつも心配ばっかりかけさせる奴が何を言ってるんだ。
「クロは優しい、ね。」
そういって俺を抱き上げて、散らかった机の上を見た。
「そうだ、あげるはずだった手編みのマフラー…クロにあげる。」
残り物はごめんだね。
「クロが彼氏だったらよかったのにね。」
無茶言うな。そして落ち着き始めてたのにまた泣き始めるな。全く…。
そしてまた彼女は空を見た。皮肉なほどの満天の星に、初めは恨めしげだった彼女の瞳も、今は少しだけ優しい。腕の中の俺はできるだけ眠っているふりをした。こうすると、彼女は安心して、つられて眠くなることまで俺は熟知しているのだ。ほら、だんだん目がとろんとしてきた。もう寝なよ。残り物のマフラーも、しっかり俺の寝どこで活用してやる。明日も明後日も、しょうがない、エサとぬくもりのためだがそばにいてやる。だから寝なよ。
「ふふっ、クロったら変な寝顔。」
うるさい。はやく寝ろ馬鹿。
「…ありがと。」
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