tenmontamago
サックリ読める短いお話。
日々のエッセイ。
お星さま関連の投稿をまとめています。
***このノートは投げ銭式です。無料で全文公開しています。*** 「ふふん。いいおまじない知っちゃったんだー。」 ポニーテールを左右に揺らしながら通学鞄をふりまわす彼女は、そういってだいぶ置いてきてしまった僕の方を振り返った。彼女の顔を隠す逆光を恨めしく思いながら、僕はため息をつく。 「本当にそういうの好きだねえ。きみだから可愛いとも思えるけど。」 「なにかいった?」 「何も。で、今度はどんなおまじないなの?」 「石鹸に願い事をかいてそれを使い切ると願いが叶うの
***このノートは投げ銭式です。無料で全文公開しています。*** 「もう、いい加減にしてよ!」 平和な午後に、私は公園の噴水越しに呼びかけた。水面に映る書生風の男は、始終私の背後で頬をゆるめっぱなしだ。彼は私の背後霊であり、ここ二週間ずっとつきまとわれている。 「だって、若くして死んだ僕にこんなに可愛いひいひ孫がいると分かったからには守らなきゃ!」 「だからって度が過ぎるんです!」 私にちょっかいを出した子どもは泣かせるし、ぶつかった人には勝手に怒るし、挙げ句の
「ついに新しい星にたどり着いたぞ!」 「いよいよ新しい星にたどりついた!」 「なんだこの星はどこもかしこもおいしいぞ!」 「本当だどこもかしこもおいしい。」 「素晴らしい星だな!」 「ああ、素晴らしい星だ。」 「どこも俺の大好きなリキュールの味だ!」 「どこも俺の好きな生クリームの味だ。」 「「えっ。」」 ***このノートは投げ銭式です。無料で全文公開しています。*** ブログ:全自動ビッグバン http://www39.atpages.jp/~stskn
***このノートは投げ銭式です。無料で全文公開しています。*** しぐれ しぐれ 聞いておくれ わたしは ねむれなかったわけではないのです わたしは わたしは 結局眠ってしまうのです でもね しぐれ ひとたびあの人のことを夢にみると 悪夢でもないのに目が覚めてしまうのです 起きてしまうと もう眠れない 眠らない うっすらあける朝を待つだけ しぐれ あの人は今どこにいるの? (しぐれに寄する叙情へ 佐藤春夫) しぐれ しぐれ もし あの里を
冬休みっていいよね。実家は快適だし、親戚のいとこたちはかわいいし、一人暮らしの身としては家事から解放されるだけでも幸せ。まあ冬休みは最高なわけだが…… 【私は今、冬休みが無期限延長してる。】 事の発端は仕事始めの日のこんな連絡だ。 「派遣先の会社から派遣会社への支払いが延びてる。給料が払えるか分からないし、今きてもタダ働きになるかもしれないから自宅待機していてくれないか。」 私は一応ライターなんだが、派遣会社からの派遣として内勤として働いている。ただ派遣先からの支
「俳句雑誌みたいに、俳句に写真をつけてみようかなー。」 それが最初の出来心でした。画像処理ソフトはよく弄っていたし、お気に入りの句などの素材もそろっていたので難しそうに思いませんでした。 そして出来上がったものをnoteやツイッターに掲載していたのですがだんだん愛着がわいてきて (*゜Д゜)<これのポストカード欲しいいいいいいいいいいいい!!!! となりました(笑) というわけで作りましたよ!ポストカード! やり方は簡単で、セブンネットプリントではがき印刷してみま
***このノートは投げ銭式です。無料で全文公開しています。*** 真っ暗な世界であんずシロップがたんまり入ったスプーンを思いっきりほおばる。上下左右もわからないほどに甘くさわやかなかおりが広がって、痛みに多い被さるようにのどにはねっとりといつまでも存在感を残すようだ。そのときふと遠い日の光景を思い出した。今日のように風邪をひき、あんずシロップを口いっぱいにほおばりながら、怖くて寝れないと、母にだだをこねた。側に入れない母は困った顔をして私の部屋にCDをかけてくれた。母のお
***このノートは投げ銭式です。無料で全文公開しています。*** 彼女は小さな店の小さなテーブルの隅で少しだけ乾燥する肌をこすりあわせて天井を見つめた。きっともうすぐ運命の人が現れて私をもらっていってくれる。最初に体を裂いたその人が運命の人なのだ。やがて一人の少年が現れて彼女にふれた。さあ、早く私に誓いの口づけを!しかし少年は彼女に手をかけた後、残念そうに「ああ、失敗だ」とだけつぶやいて、他の娘にまた手をかけた。彼女は知らなかったのだ。自分が使い捨ての割り箸であることを。