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「シティポップ」で紐解く映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』

イシグロキョウヘイ氏の最新映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』。

所々に見つかる80年代感、いわばシティポップ感が最高に気持ちいい一作だ。


今作はアニメ『四月は君の嘘』の監督イシグロキョウヘイ氏によるオリジナルアニメ映画作品。
今作の監督が私の大好きなアニメのひとつ「君嘘」と同じイシグロ氏だとは、あとで気づいた。

知っている方が関わっている作品だとより愛情と親しみを覚えるこの現象が好き。監督にお会いしたわけでもないのに。

ポスターや予告などでもわかるように、ビジュアル的にすごくポップ。
パステルカラーぽく、カラフル、といえばいいのか。

声優を務めるのは、市川染五郎と杉咲花。
アニメ声優が本職ではない、表現者として大注目の2人が演じる。

そして、主題歌がnever young beachの『サイダーのように言葉が湧き上がる』。
ネバヤン大好きな私が観ようと決めた後押しになったのはこれが大きい。


映画館には実に幅広いお客さんがいた。
右隣の席には高校生カップル、うしろには男子高校生のグループ。
左隣には60代くらいの男性。
劇場全体見回しても、幅広い世代で観に来ていた。

気になった人は今すぐ映画館で観てほしいと思う。




以下では、ネタバレを含んで綴っていく。

作品の中で見つけられたシティポップ要素を中心に綴れたらと思う。


シティポップとはなにか。
音楽のジャンルのひとつで、70年代後半から80年代にかけての都会的で洗練された音楽をさす。
山下達郎、竹内まりあ、大瀧詠一、大貫妙子、吉田美奈子を中心としたアーティストがこれにあたるといわれている。
とはいえ、曖昧な定義で明確な線引きはない。

このシティポップと呼ばれる音楽が近年注目を浴びている。


まずはビジュアル。
作画から、色使いまで80年代シティポップの雰囲気がそこにある。
ジャケットなどで使われるビジュアルから連想されるような、オシャレで洗練された感じ。
最高にポップで涼しげで。大好き。

余談ですが、帰りに本屋さんで永井博のイラスト集「Time goes by...」を買ってしまいました。
シティポップを象徴する1枚『A LONG VACATION』のジャケットを担当したイラストレーターです。


テーマ。
フジヤマのレコードを探す、という一連の騒動。
まさに昨今のシティポップブームを表しているように感じてしまった。

というのも、シティポップは日本の音楽でありながら、海外で評価される風潮がここ近年かなり強い。
2017,2018年にYouTube上で竹内まりあの『Plastic Love』、2021年初めにサブスクを中心に松原みきの『真夜中のドア~stay with me』が爆発的にヒットした。
この事実はシティポップの再評価を如実に示している。
それによって、海外の熱心なファンはサブスク未解禁の音源を求めて日本のレコード盤を買っているようなのである。
つまり、本国にいても盤を手に入れるのが困難な状況になっている。

この状況がフジヤマと似てはいまいか。
近い(近かった)場所にいるはずなのに、そのレコードを手に入れられずに探して求める感じが。
すぐそばにいた奥さん(藤山さくら)の音源を手に入れるために奮闘する姿は胸を熱くした。


大貫妙子」の起用。
前述したとおり、シティポップを支えた一人として、大貫妙子というシンガーがいる。
その彼女がこの作品に深く入り込んでいるのだ。
FUJIYAMA RECORDSでレコードを探しているとき、スマイルが手にしていた1枚が大貫妙子の名盤『SUNSHOWER』なのである。

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YouTubeに公開されている特番の動画でも確認できる。
(23分46秒~)


そして彼女は探し求めていたレコード音源の藤山さくらとして、劇中歌『YAMAZAKURA』を歌っているのだ。
もう、完璧な演出だ……


主題歌『サイダーのように言葉が湧き上がる』。
シティポップにリスペクトをし、ときにネオシティポップに分類されるnever young beachがこの主題歌を務める。
すごく適任だと思うし、曲自体も最高である。
この選出は「わかってるね~」といいたくなってしまう。


最後に、粋なパンフレット。
これは実際に購入して確認してもらいたいのだが、パンフレットがレコード盤『YAMAZAKURA』をモチーフにしている。
探し求めていたアレである。
実際に、カバーも切り抜かれたようになっている。
これはなんとも粋すぎないか?

(30センチ×30センチで大きくて困ったというのも本音)



今年は映画館に足を運んで映画を観る機会が非常に多いが、トップクラスに好きな作品となった。
私の好みにドツボだった。

ストーリーやその他の仕掛けもたくさん綴りたいのだが、このnoteではこのへんで。

また来週もきっと今作についてだと思う。

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