囚人のジレンマって何?
「囚人のジレンマ」は協力する方がいい結果になるのに、協力しない状況に落ち着いてしまう面白い状況を説明するもので、ゲーム理論の説明の際に定番として使われています。
共犯者の運命は?
銀行強盗をやった二人組が捕まりました。銀行強盗の証拠が無いので軽い窃盗での別件逮捕です。捜査官はなんとかして銀行強盗について自白させようとしますが2人とも口を割りません。
二人組は一蓮托生
窃盗だけなら1年の刑期で済むけど、銀行強盗を自白すれば10年の実刑は確定
これだと両方口を割りませんね。そこで捜査官は、取引を持ちかけます。
「もし相手が自白したらお前は10年の実刑だ、でもお前も自白すれば3年に減刑してやろう。もし相手は自白せずお前だけが自白してくれた場合は、お前は無罪放免にしてやろう。」
この取引の持ちかけで、一蓮托生だった2人の状況が変わります。二人は考えた結果「ん?どっちにしても自白した方が得ってことだな」という結論に到達します。
相手が自白した場合
自分が黙秘 : 10年、自分が自白 : 3年
相手が黙秘した場合
自分が黙秘 : 1年、自分が自白 : 0年
これを図にしてみましょう。
捜査官が持ちかけた取引によって一蓮托生だった状況を変え、二人から自白を引き出すことに成功したのです。
これが囚人のジレンマです。なぜジレンマと呼ばれているのか?図をよく見ると二人とも黙秘していれば1年の刑期で済んだのに、二人とも自白して3年の刑期をくらっているからです。
どうしてこれが経済学なのか?
囚人のジレンマは経済学の一分野であるゲーム理論でよく例に出されます。なんか頭の体操みたいですが、どこが経済学なんでしょう?
経済学は従来、個人が自分の好みに従って選択を行えば利益の最適化が達成されると言う考えで成り立っていました。
しかし、世の中には「他人がどんな選択するか」によって自分の利益が変わるケースがあります(囚人のジレンマがまさにそうですね)。このような場合の意思決定を扱うのがゲーム理論です。
ナッシュ均衡
2人が表左上の黙秘/黙秘にとどまれなかったのは、その状況で自分の選択を変えるだけで刑期0年というさらにいい結果を得ることができるからです。
表右下の自白/自白で落ち着いたのは、その状態から自分だけが選択を変えても得にならないからです。ゲームに参加している誰もが自分だけ選択到達を変えても利益を得ることができない状況をナッシュ均衡と言います。複数の主体が関わる意思決定はナッシュ均衡がひとつの均衡点となります。
また、この場合論理的に考えても利益を最大化する結論に導かれない状況もあります(囚人のジレンマがまさにそうですね)。
制度の重要性
従来の経済学では個人が合理的に行動し、調整を行うことで全体の利益が最大化されるという考え方が主流でしたが、ゲーム理論は囚人のジレンマのように個人の合理的選択が全体の利益最大化につながらないケースが有り、それを最適にするためにはゲームのルール(社会の制度)が重要であることを認識させたのです。
経済学はゲーム理論を取り入れることで、従来はあまり考えられていなかった、複数の主体の相互作用による意思決定、市場における制度の役割、を扱う学問へと発展したのです。
推薦書籍
ゲーム理論に興味を持たれた方にはこちらの書籍がお勧めです。経済学の中でゲーム理論が果たす役割が非常によく分かります。
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