住宅営業マン、10棟目は営業として、ちょっと気付いたかもしれない瞬間。
入社3年目の秋、僕はいつ会社を辞めてもおかしくない状況でした。
当時の店長は性格最悪で、毎日夕方になると、僕を自分のデスクに呼びつけ、立たせっぱなしで30分から一時間のお説教です。
「お前が契約とってくるところみたいなあ。」
「アポイントもろくに入ってないじゃん。訪問してんの?」
「俺が若い時ならまだ外でインターホン鳴らしてるぜ?」
「この間の表彰でお前の同期に会ったけど、お前と違ってさあ。。。」
大嫌いです。笑
いつか本社に刺してやろうと言われたむかつく語録を脳裏に焼き付けていた日々です。。。
きっかけはみんなの雑談
そんな時期の週末、展示場の事務所でふと先輩が、「みんなはさ、自分が家を建てるってなったら建てたい家ってあるわけ?」となげかけました。
その場にいたメンバーは全員まだ持ち家ではなく、それぞれに、広さ、間取り、床材や設備、どんな外観にするかなどを話して盛り上がっていました。
「みのは?」
来てしまった僕のターン、、、全く思い浮かびません、、、
そこで気付いたんですね。
「自分が住みたい家」がないどころか、「どんな家がいい家か」という基準すら、自分自身になかったんです。
今までお客様に僕が勧めていた家は、「会社がオススメしている家」で、「住宅営業マンみのがオススメしている家」ではなかったことに。
結構これは衝撃で、3年も働いているのに、自分のポリシーのようなものがなかったというショックで、必死になって「どんな家がいい家なのか」を必死に自分なりに考えるようになりました。
たどり着いたのは、「10年後も20年後もずっと快適な家」でした。
最初にカッコイイ家をつくるのは、契約もとりやすいし、引き渡し直後の満足度は高いと思います。
でも、営業マンとしては、お客様と長いお付き合いをしたい。
そうなったときに、最初だけかっこよくて、あとから劣化が目立つようなものを使ってしまうと、10年後、「あのときみのに騙された!」となってしまいます。
僕は、そうではなく、10年後もひょこっと僕が顔を出したときに、「お茶でも飲んでくー?」って言ってもらえるような人間関係をつくっていきたいと思ったんです。
それから、1週間かけて、自分のアプローチブックを見直して、「時間が経っても快適で楽しい家」をアピールできる準備をしました。
営業の神様は見ている
新しいアプローチブックを持って、鼻息荒く臨んだ次の週末。
こういういい準備ができている時って、不思議と準備した内容がドンピシャなお客様がいらっしゃるんですよね。(ありがとう、営業の神様!)
展示場にいらっしゃったK様は、お金持ちのご両親が建てた広い家を壊して、二世帯住宅にするご計画でした。
二世帯住宅なので、通常より大きな建物を建てます。
大きな建物を建てると、次建替えるとなると、また解体費用も建築費用も一般的な建物よりずっとお金がかかるので、「長持ちする家が大切」になるのです。
(これはまさに僕が伝えたかった家!)
一生懸命、経年変化を楽しんでもらえる床材や、メンテナンス費用が抑えられる外壁材など、何年たっても楽しんでもらえる家づくりをアピールしました。
今までの一通り満遍なく会社の研修内容に沿った説明(耐震、耐火、気密断熱、、、など)をしていく接客ではなく、自分の伝えたい家づくりがお客様にとっていかに大切かを伝えていく接客。
お客様に満足していただけるかという不安はあったものの、自分の言葉で接客しているので、やりがい・楽しさをとても強く感じました。
「なるほど、自分たちだけが住むのではないので、親と相談します。」
帰り際、クールにK様はおっしゃっていきました。
(アポが取れなかった、、、)
モデルハウスでの初回のご案内はとても大切で、この接客を失敗すると、お客様はなかなか次にお会いする機会を頂戴できません。
クールなご主人だったので、当社の評価や、私の印象などはまったくわからず、これはダメだった、また上司に怒られる、、、ととても落ち込みました。
一か月後、設計相談会にいらっしゃる!?
接客後、上司にお客様に記入いただいたアンケートを見せながら、またお説教です。
「こういう話はしたのか?」「競合他社はどこ?」「お前は何を話してたの?」「やる気あるの?」
頭の中で上司にありとあらゆる不幸が訪れる瞬間を妄想しながらお説教に耐えました、、、
そんなショックな週末から一か月後、知らない番号から携帯に着信がありました。
「みのさん、ご無沙汰しています。Kです。先日お手紙ありがとうございます。週末の設計相談会に行きたいのですが。」
まさかの逆電!(お客様からお電話もらうこと)
「あいてます!あいています!ぜひ、お願いいたしますーーー!!」
そこから大急ぎで打合せブースの予約、設計士の確保、謄本などの取得、現地の確認、、、あっという間に平日の時間が過ぎていきます。
設計士は、ポンコツな営業マンだと不安なので、トップ設計士をつけてくれました。
そして迎えた週末。
打合せにはK様ご家族だけでなく、ご両親もいらっしゃいました。
「御社が一番私たちの家と相性がよさそうですし、みのさんがおっしゃる長持ちする家に共感したので。」
冒頭K様からこんな前置きがあり、他社は検討しておらず、当社で提案を受けた上で納得すれば進めるし、納得しなければ他社にいくので、まずはいい提案をしてほしいと言われました。
私の接客に納得して、他社を検討せずに、当社を第一希望として打合せをしてくれると聞いて、私は契約もしていないのに、嬉しくてうれしくてニヤニヤしてしまったことを覚えています。
トップ設計士の仕事が早すぎて、よくわかんないけど進む
そこからは設計士のターン。
その場でご要望をお伺いすると、「長持ちする家」を目指すK様にとって、将来を考えると、ご両親がいなくなられて、子供が巣立ち、いずれ結婚して戻ってくるかも、、、など、いろんな展開が考えられることは大切です。
K様が考えられる可能性をいくつかお伺いしながら、なるほど、そうですよね、と相槌を打ちながら、設計士のペンがすらすらと進んでいきます。
「まずは、今の暮らしを考えると、こういった間取りが考えられます。」
K様ご家族はあっという間に目の前で描きあげられたプランにぽかんとしています。
「さらに、将来的にご両親が残念ながらいなくなられた後には、こんな使い方はどうでしょうか。」
プランの一部をアレンジして、4人家族がゆったりとできる間取りに変わっています。
「あとは、こんな風な使い方も面白いかもしれません。」
それぞれの部屋を狭くする代わりに、共有部に遊び心たっぷりな別パターンのリフォーム案まで。笑
「じゃあ、、、これを前提に見積もりをおねがいできますか。」
「かしこまりました。ご予算は○○○○万円から○○○○万円は見てもらえますか。」
「大丈夫です。」
「現金やローンの支払い条件を教えていただけますか。」
「はい、両親が現金をこれくらい出して、あとは私たちがローンを組みます。」
「ありがとうございます。あとは今後のスケジュールですが、次回これを清書したものと、凡その金額をお出しします。それを基に再度打合せをして、次々回に修正したプランと見積に、お値引き条件をお出しします。内容にご納得いただければそのままご契約の段取りを取らせていただけますか。」
「わかりました。」
めちゃくちゃスムーズに、ここまでの打合せ時間は大体3時間。
しかも、この後半のやり取りはすべて設計士がやってくれています。笑
私は隣でぽかんとして設計士とお客様のやり取りを見ているだけ。。。
設計として間取りをまとめる能力、デザイン力だけでなく、今でも追いつけないくらいの圧倒的な営業力を兼ね備えているトップ設計士。。。
とても悔しかったのを覚えています。
この設計士のアナウンスの通り、1週間後にはプランを見てもらって、2週間後には見積もりが提示できて、3週間後には晴れてご契約をいただきました。
そこから着工までもとてもスムーズで、2世帯住宅という参加者が多い打ち合わせが、すらすらと進んでいき、1年を待たずにカッコイイお住まいができました。
仕事の楽しさを見つけれらるかも、、、?
この物件を通して感じたのは、「自己責任で仕事をする楽しさ」でした。
今までは、会社のマニュアル通りの接客をしていて、接客がうまくいかなくても、どこか「会社のいう通りにやってうまくいかないんだから、会社が悪い」と、会社のせいにしていました。
ところが、自分のポリシーに従って、自分のやりたいスタイルで仕事をすると、成果が出るか出ないかは自分の責任だと思えるようになることが、K様との打ち合わせでわかりました。
それゆえに、後半はどこか設計士におんぶにだっこで進めてしまった自分がとても情けなかったのですが、トップの人間の仕事ぶりを脇で見ることで、自分もこの隣に並んでいることが恥ずかしくないような人間になりたいと思えました。
このあともまだまだくすぶっている私ですが、4年目の飛躍に向けて、少し光が見えたのはK様のおかげです。
またタイミングをみてお邪魔して、お礼を言わないといけませんね!
「役に立った!」、「こいつ、好き!」って思ったらサポートをお願いします(*^^*)