「あ、これは死んだ」大学生の時、海で溺れて死にかけた話
今から数年前、海で溺れて死にかけたことがある。その時、「あ、これは死んだ」と冷静な自分がいて、なんとか助けてもらって今これを書いている。シチュエーション次第で、不注意や軽率な行動で人は簡単に死ぬのだと思った話を書こうと思う。
時は数年前。大学生だったわたしは所属していたサークルの夏合宿という名の旅行で他県を訪れていた。
小学生の頃に臨海学校で泊まったような宿で、その裏には遊泳できる海があった。田舎だったのと時期的にピークからずらしていたので、宿も海もわたしたちの貸切状態だったことを覚えている。
お昼過ぎだっただろうか、みんなで海に入ろうということになった。イケイケサークルでもなかったため、女子部員はみな水着の上にTシャツと短パンを着て、水を掛け合って遊んだり、写真を撮ったり、数十人が思い思いの場所で楽しんでいた。
そんななか、誰が言い出したかは忘れたが、わたしを含む5人ほどの部員で海から長く突き出した陸地(今調べたら突堤というらしい)から、手を繋いで飛び込もう!という話になった。
今思えば本当にいかにも「大学生」という感じで恥ずかしくもなるのだが、何よりこの行動で海の脅威を知ることとなる。
わたしは細身の女の子と体の大きな男の子と間に立ち、2人と手を繋いで海に飛び込んだ。
明確に記憶があるのはその瞬間までで、飛び込み、波に飲まれた。腕で水を掻いているはずなのに思うように前に進まず、体は今にも沈みそうになり、呼吸しようにも口には海水がドカドカ入ってきていて、パニック状態だった。
自分が思っている以上に海は深く、波は荒かった。
「あ、これは死んだ」とぼんやり思ったものの、体は必死に陸へと泳ごうと動いていたと思う。今思えば、水着の上から着ていたTシャツとズボンが重くて、思うように体が動かなかったのもあるだろう。
その時、飛び込んだ時に隣だった男の子がたまたま腕を引いてくれてなんとか陸地に戻ってこれた。命懸けで陸に上がったわたしと彼は2人とも顔面蒼白。でも陸地で遊んでいる部員たちはわたしたちの様子に気づいている感じがなかった。それもそうだ、溺れている間は誰も声をあげる余裕はなかったし、みんな各々の時間を楽しんでいた。わたしが陸地にいても気付かないと思う。
そして、わたしはハッとあることに気付いた。隣にいた女の子がまだ上がってきていなかった。わたしは本気で彼女がもう戻ってこないことを覚悟したし、自分だけ上がってきてしまった、彼女が助からないかもしれないと自責の念に駆られていた。
しかし、パニックになっていたところで彼女は自力で上がってきたのだった。その時の苦しそうな表情はいまだに忘れられない。
幸い、死者や怪我人はでなかった。でも、出てもおかしくなかった。わたしはもちろん、一緒に飛び込んだメンバーみんなが海というものをなめていた。わたしはこの時、自分の軽はずみな行動で死ぬかもしれなかった、友だちの人生を変えてしまうところだったと事の重大さを恐怖心と共に知ったのだった。
わたしは子どもの頃、スイミングを習っていたから人並みには泳げたし、まだ若かった、運動もしていたから助かったのかもしれない。でもカナヅチだったら?あのとき、手を引いてもらえなかったら?今のわたしが溺れたら?足が攣ってしまっていたら?
自業自得だが、それ以来、海や川で水深が腰より高い場所や流れが速そうな場所は怖くて入ることができくなった。
親から散々、「夏、特にお盆は水難事故が多いから気をつけてね」と言われていたのに、自ら危ない目に遭いに行った。
これから夏になり、水遊びをする機会が増えるはず。子どもには必ずライフジャケットを着用させてください。大人だって自分の泳ぎを過信していたり、気の緩みで簡単に命を落としてしまうかもしれない。わたしのように無知な大学生もいるかもしれない。「ちょっと川や海で遊ぶだけだから大丈夫!」ではなく、ライフジャケットを正しく着用してほしい。
わたしが言えたことではないが、こんなバカな出来事があったと知ってくれたら、危険なことはする気も起きないはず。これを読んでくれた人が正しい知識を持って海や川で遊んでくれますように。
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