見出し画像

コンテンツは「かこ好き」よりも「いま好き」

地元を離れて何年か経った後に帰省してみると、新しくイオンができてる、シネコンまでできてる、ということはありますよね。

でも、それで「便利になったはいいけど、どこも一緒だね」なんてぼやいてしまうのはちょっと違うな、と思ったりします。

これを言われた、今住んでいる人からすると、そこに至るまでに歴史やストーリーがあって、今その土地が好きで、リアルタイムでずっと続いてるものがあるわけです。

それを無視して、過去にその土地を好きだった人が何か言ってくると、ずっと好きで生活している人からしたら、ちょっとムカっときちゃうことってあると思うんです。

これはコンテンツにおいても同じことが言える

で、この話は好きな作品とか、アーティストとか、そうしたコンテンツでも同じことだと思っています。

「あの頃の仮面ライダーは良かったよね」「今はさ、最新の武器とか使って何か色々買わせる商法なんでしょ?」みたいな感じで、昔好きだった「かこ好き」クラスタはぼやいてしまうことがあると思うんです。

でも今放送されている仮面ライダーは、昔好きだった人たちをメインに向けて作られているんじゃなくて、「いま好き」でいてくれるファンに向けてダイレクトに作られているんです。だからわたしは「いま好き」でいることをすごく重視しています。

「〇〇が好き~」という話題になると、話し手は無自覚ではあるのですが、「いま好き」ではなく「かこ好き」の話をしていることが結構あるんです。

浜崎あゆみが好きでも、あの頃の浜崎あゆみで止まってしまっていたり。

でもわたしは、昔好きだったではなく「いま好き」なものを語りたい!という想いが強いんですよね。

「いま好き」なもので長年ホットなのが『クレヨンしんちゃん』

私が「いま好き」で追いかけている人や作品はいくつかあって、その中でも10年以上「いま好き」という状態が続いているのが、『クレヨンしんちゃん』なんです。

『クレヨンしんちゃん』って、いつ見ても安定したクオリティで、しかも『クレヨンしんちゃん』の世界感を保ったまま見ることができるんです。

仮面ライダーなどのシリーズものになると、絶え間なく1年追いかけることになるので、「いま好き」な作品として追いかけていくのって、録画をしない限りけっこう難しいことだと思うんです。一方『クレヨンしんちゃん』はだいたい一話完結だから挫折しづらいっていうのもあります。

どうして「いま好き」が大切なのか

なぜ「いま好き」にこだわるかというと、これはまた『クレヨンしんちゃん』とも関係してきます。

映画『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の中で、しんちゃんたちが過去にすがっている大人たちとは決別して、未来を生きることを選択するシーンがあるんです。

『オトナ帝国』あらすじ
ある日突然、春日部で「20世紀博」という大人のためのテーマパークが開催され、懐かしい世界に浸ることができる遊園地に大人たちが洗脳されていき、取り残されたしんのすけたち「春日部防衛隊」が日常を取り返す物語。

この話の中で、昭和を生きたことがないしんちゃんたちは「懐かしい過去」が無いため、今を生きるしかなく、大切な父ちゃんと母ちゃんを取り戻すために、日常を脅かす敵に立ち向かっていきます。

「過去にはすがってはいけない、これからを生きていくんだ」というメッセージを感じて、『クレヨンしんちゃん』が好きなわたしにとっては「かこ好き」だった作品を特別扱いするのではなく、「いま好き」な作品を大切にしていきたいという想いが強くあるんです。

『クレヨンしんちゃん』の「今」の魅力

最近だと、ひろしがテレワークをしたり、みさえがインスタ映えにチャレンジしたりと、現代の空気感が再現されつつも、『クレヨンしんちゃん』の世界観でギャグとして成立している、安心の面白さでアニメが視聴できています。

ただ、テレワークの導入が早かった割にスマホの登場が遅かったのはなぜなのかは解明できていなくて、コアなファンの方がいたら、教えてもらえると嬉しいです。

その他にも「いま好き」クラスタ勢としては『野原ひろし 昼飯の流儀』も追いかけています。

キャラクター原作・臼井儀人という、野原ひろしが主人公の公式スピンオフ漫画で、特殊な作品ですが面白いです。

原作者の臼井先生が亡くなられてからも、『新クレヨンしんちゃん』として連載が続いているのですが、その本編にも『昼飯の流儀』にかぶせたネタとかが出てくるので、リアルタイムで追いかけていると、そういった絡みも楽しめるんですよね。

「いま好き」クラスタが今のコンテンツを支えている

「いま好き」であることについて話していますが、もちろん「好き」には色々あり、どっちが偉いとか尊いとかということではありません。

ただ、たとえば安室奈美恵さんが引退することになったあの時期に、ワイドショーとかで「CAN YOU CELEBRATE?」が流れて、全盛期は昔だったみたいに、卒業アルバムをめくるのはなんか違うのかなーと思ってしまうわけです。

安室奈美恵さんに関しては活動期間としてはTKから離れてからの方が長いし、その後もめちゃめちゃセールスを出しているんです。(テレビに滅多に出なかったため、世間とファンの安室奈美恵像にギャップがあるというのはあります。)

その時代その時代で彼女の「今」を支えてきたファンがいるわけで、だからこそみんなの「いま好き」という気持ちによって誰かが支えられている、ということをわたしは考えています。

そういうわけで、『クレヨンしんちゃん』なども、卒業アルバムをめくる感じで終わったコンテンツとして懐かしむのではなく、「いま好き」なコンテンツになってくれたらいいなと思い、現在の自粛期間中に観てほしい映画を選んでみました。

自粛期間中におすすめの『クレヨンしんちゃん』映画

『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』

あらすじ
ある日、タイムマシンでしんのすけの未来の花嫁タミコがやってきて、二人は未来都市「ネオトキオ」へ。そこで5歳のしんのすけが、未来の自分と未来の花嫁の危機を救っていく物語。

『オトナ帝国』を観終わったらこの作品に手を出してほしいです。『オトナ帝国』で未来を生きていくことを選択した、しんちゃんの未来がどうなっていくのかが描かれています。

あれだけ熱い思いをして手に入れた未来のはずなのに、現実は甘くないということを突きつけてくれて、メタ的に見て面白いんです。

『オラの引越し物語〜サボテン大襲撃〜』


あらすじ
メキシコに引っ越しすることになった野原家は、春日部のみんなと涙のお別れをする。引っ越した町「マダクエルヨバカ」で待ち受けていたのは人喰いキラーサボテンだった。現地のご近所さんと手を組み、絶体絶命のピンチを乗り越えていく物語。

この話、予告やCMでは春日部のみんなとのお別れってことで、泣ける映画っぽく見せてるんですが、実態はB級パニック映画という裏切りをしてくれる作品なんです。

『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』とか『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』以降「泣けるクレヨンしんちゃん」を世間は求めるし、作り手は新たなクレヨンしんちゃんを生み出そうとする。そういう時期を脱却した後の作品なので、どストレートな感動っぽい映画に見せているってことは何か仕掛けがあるぞと、これまで映画を追いかけてきた人ならフェイク予告ってピンとくる作品。これも面白いのでおすすめです。

--

著者Twitter

edit by えんどう

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?