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『さびしい病につける薬』~自分の世界と誰かの世界がつながる時~言語技術講師が子どもたちに贈るやさしいエッセイ 石塚廉

自分はひとりぼっちだ。
自分のことなんて誰も大切に思ってくれない。
こんな思いにとらわれてしまったことはありませんか。

大丈夫、安心してください。
『さびしい病』にかかったことがあるのは、あなただけではありませよ。

リテラの先生が、子どもたちに贈るやさしいエッセイ。
ぜひ、ご覧ください。

リテラ「考える」国語の教室 石塚廉 


さびしい病につける薬
『ベスト・エッセイ2020』より木ノ下裕一「信じるチカラ」を読んで

中高生のころ、時折私は、さびしい病になった。
わけもなく孤独を感じ、自分のことなんか誰も大切に思ってくれていない、自分はひとりぼっちだという思いにとらわれてしまうのだ。
布団をかぶってごろごろしても、漫画を読んでも散歩に出ても、心は晴れない。

高校生のあるとき、やっぱりさびしい病になった私は、だれも誘わずに一人で鹿沼へパラグライダー体験にいった。
それは、パラグライダーの器具をつけて、土手を駆け下りて滑空するというもので、うまく風をとらえると、マンションの4階くらいの高さまで上がることができる。
飛んでいる心地は、思ったよりも安定感があって、まるでリフトに乗っているように頼もしかった。
インストラクターの指示にしたがって、右に左に旋回して、うまく着地する。
ささやかな体験ではあったけれど、自分だけが知っている特別な達成感のある一人旅だった。

その後、友人にその話をすると、「なんで誘ってくれなかったの? めっちゃおもしろそうじゃん」と興味を持ってくれた。
話はたちまち広がり、4、5人で、改めて鹿沼へ行くことになった。

だれも自分のことになんか興味がないのではないかと思って、思い切って一人ぼっちを楽しんでみた結果、思ったよりも友だちは自分に興味を持ってくれるものだと私は知った。

木ノ下裕一さんは「信じるチカラ」の中で、生きていくためには、世界や人を信頼することが大切だと述べている。

私は世界や人を信頼することが難しくなったとき、まずは自分だけの世界を大切にしたい。それが誰かの世界とつながるのかもしれない。


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