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京都芸術大学を卒業してー学びについてー

 一連の自己紹介については今回で最後となりますが、私は、2021年に京都芸術大学芸術学部美術科書画コースに入学し、2024年3月16日に卒業したのでこの経緯と感じたことを書きたいと思います。

<経緯>

 私の経営するクリニックの壁には絵画が飾ってあり、定期的に入れ替えています。実はcasieというアートのサブスクサービスを利用し、定期的に入れ替えを行っています。過去にcasie様からインタビューを受けたことがありますのでこちら(https://note.com/casie/n/nbbe41f320319)も御覧ください。
重複しますが、これにはまとめるといくつかきっかけがあります。
 一つには、数年前に他界した父は写真が趣味で、よく写真展にエントリーし時々入選していたのでその影響があります。次に、私は防衛医科大学校卒業ですのでかつて自衛隊の様々な活動に関わりましたが、東日本大震災は印象に残る出来事で、復興において人の心を支えるのに芸術の持つ力は大きいという印象を抱き、その後もずっと私の中にありました。そして、2015年にクリニックを開業しましたが、クリニックの院内の壁は当初真っ白な大きなキャンバスのようでした。一面には私がかつて参加した南極の写真を飾りましたが、もう一面の大きな壁は、来院される人の心の支えとなるように、そしていつでもアートを鑑賞できるようアート作品を飾りたいという思いがずっとありました。あるときcasieに出会って以降、絵画の展示を始めました。

絵画を掲示する前の院内風景


 普段の私の生活は単純に表現すると家族と運動と仕事中心ですが、割合でいうとほぼ仕事で埋め尽くされています。そんな中コロナ禍となり、それまでに比べて少し時間に余裕ができ、自分のことを見直す機会となりました。  私の中の答えとして、今までの自分ではない新しい自分に出会ってみたい、新たな自分があることも楽しいのではないかと考えるようになりました。そして、何かトライするのであれば東日本大震災のときに感じたような人間の本質に迫ることができるアートに触れてみたい。更に、アートを鑑賞しているだけではなく、自分も制作してみたいという衝動にかられました。

 いろいろと調べているうちに、2021年に京都芸術大学芸術学部美術科に書画コースが新設されることを知りました。社会人向けでオンライン中心に受講ができる仕組みです。書道は幼少時経験していましたがほぼ素人ですし、美術品のコレクターでもありません。それでもなんとか自分でも努力すれば卒業は達成できそうな印象だったのでチャレンジしてみました。 

<学生生活>

 芸術大学なのでひたすら作品の制作方法を学んだり、制作に没頭したりというようなカリキュラムなのかと勝手に思い込んでいたのですが、実際は、学術的なレポートの書き方を学び、その後美術から文学、音楽、舞踊など、東西問わず、ジャンルも芸術全般の様々な芸術史を学び、期限内にレポートを提出して単位を取得する必要がありました。それと並行して一定期間で書画作品の課題が出され、その課題に沿った作品の制作も行います。これがなかなか大変で、平日仕事を終えて帰りの電車の中で、レクチャーの動画聴講や教科書での学習を行い、帰宅後にレポートを書くということを毎日少しずつ行いました。そして週末になると医学学会や研究会がない日はひたすら作品制作にあてるという生活でした。

 正直決められた期間内に課題をこなすことに精一杯で、体調が悪くても期限までに課題を提出するのは大変でしたし、週末に学会参加後に自宅で夜に課題をこなすような日は疲労困憊でした。また評価されたレポートや作品の評価が良くないと挫けそうになりました。それでも続けられたのは一つには家族の理解と協力があったからですが、何よりこれらを達成することで新しい自分に出会ってみたいという思いからでした。

<卒業制作>

 卒業制作の具体的な内容は、当院で製作販売しているドクターズコスメのデザインを書で表現することとしました。化粧品本体はブランド名を和テイストで表現し、化粧品をいれる箱に化粧品のイメージを表現する文字を墨象表現でデザインすることとしました。この箱のテーマの文字は“叶”。この化粧品を使用することで自分の望みを叶えるというメッセージを込めてデザインしました。

ドクターズコスメの箱にデザインしたもの

 最終形までには紆余曲折あり当初の作品は評価が低くかなり苦しみましたが、ある時方向性がふと見えたとき、すっと苦しさから開放され一気に楽しくなりました。楽しく制作すると評価も上がり、卒業制作として認めてもらえるような出来となりました。おそらくクリエイターと言われる職業についている方々は常にこのような思いをされているのではないかと想像します。

<学ぶということと達成感>

 私はクリニック開院以来私が体調を崩したときと、父が他界した時以外自分の都合で診療を休んだことがありませんでした。今回大学の卒業式については、クリニックに来院いただいている皆様へ迷惑をおかけして大変申し訳ないと思いましたが、私にとって一つの節目と考えて臨時休診とさせていただき卒業式に参列しました。
 卒業式で来賓としてこられていた東北工芸大学の中山ダイスケ学長の祝辞が特に心に残りましたので共有させていただきます。それは、“人の価値観を変える出来事には3つある。生き死に、旅、そして学びである。誰かに強要されるわけでもなく自ら学びたいと思い、自ら動き、そして自らの答えを出す。この姿勢はかっこいい”と。
 このメッセージにはとても共感しました。確かにこれほどポジティブなことはないですし、達成感たるや10代の中学生高校生のころとは比べ物にならないと感じました。社会人として忙しく過ごし限られた時間の中でなんとか時間を工面して決められた課題をこなす。そして特に今回は芸術という今まで学んだ医学とは異なる分野での目標を達成する中で得られた新たな美意識や感性。まさに、今までの自分とは違う自分が生まれた瞬間です。

<今後>

 今までの自分になかった自分があることが嬉しいですし、今後はこれを伸展させることが楽しみです。毎日必ず医学雑誌の論文を一つは読むということを自らのタスクにしていましたが、これからは更に書に関する学習も新たなタスクにしようと思っています。私は墨象という領域に特に興味を抱いたので、墨象作品を中心に活動されている先生のもとでもう少し学習を続けたいとも考えています。
 学ぶということは人生に潤いを与えてくれますし、生き方を変えてくれる力があると感じています。そして、今回大学で学んだ美意識を今後の美容医療にもつなげたいとも思っています。(あれっ?またいつもの仕事に意識が戻ってきてしまった!)


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