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【不朽の名作】『レナードの朝』【アカデミー賞】



はじめに

 Netflixで『レナードの朝』観ましたー。ロバート・デ・ニーロさん主演の精神・神経疾患系の名作ということは知っていたのですが、これまで観る機会がありませんでした。
 実際鑑賞しましたところ、時代を感じさせないレベルの、想像以上に素晴らしい作品でしたので記録したいと思いました。

個人的な評価

ストーリー  A+
脚本     A-
構成・演出  A
俳優     S+
思想     S
音楽     A
バランス   A
総合     S

S→人生に深く刻まれる満足
A→大変に感動した
B→よかった
C→個人的にイマイチ

内容のあらすじ

 1969年、人付き合いが極端に苦手なマルコム・セイヤー医師(ロビン・ウィリアムズさん)が、ブロンクスの慢性神経症患者専門の病院に赴任して来ます。そもそも研究が専門であり、臨床の経験の全くないセイヤーは、患者との接し方で苦労しますが、本来の誠実な人柄で真摯に仕事に取り組みます。
 
 そんなある日、患者たちに反射神経が残っていることに気付いたセイヤーは、ボールや音楽など様々なものを使った訓練により、患者たちの生気を取り戻すことに成功します。
 更なる回復を目指し、セイヤーはパーキンソン病の新薬を使うことを考えます。まだ公式に認められていない薬ではありますが、最も重症のレナード(ロバート・デ・ニーロさん)に対して使うことを上司のカウフマン医師とレナードの唯一の家族である母親に認めてもらいます。

 当初はなかなか成果が現れませんが、ある夜、レナードは自力でベッドから起き上がり、セイヤーと言葉を交わします。30年ぶりに目覚め、機能を回復したレナードは、セイヤーとともに町に出ます。
 30年ぶりに見る世界はレナードにとって全てが新鮮であり、レナードとセイヤーは患者と医師との関係を超えた友情を育みます。

 この成功を踏まえ、セイヤーの働きに共感した病院スタッフらの協力の下、他の患者たちにも同じ薬を使用することになります。すると期待通りに、全ての患者が機能を回復します。目覚めた患者たちは生きる幸せを噛み締めるのでした。

 ある日、レナードは、父親の見舞いにやって来た若い女性ポーラと出会い、彼女に恋をします。
 そして病院から1人で外出したいと願い出ますが、経過を慎重に観察したい医師団から反対されます。これに怒ったレナードは暴れ出し、それをきっかけに病状が悪化し始めるとともに凶暴になって行くのでした。

 子供の頃から大人しい性格だったレナードの変貌ぶりに、レナードの母はショックを受けます。セイヤーの努力も虚しく、病状が悪くなる一方のレナードは、自分のような患者のために自分の姿を記録にとどめるようにセイヤーに頼むのでした。そんなレナードの姿にセイヤーは自分の無力を強く感じます。

 そして遂に、レナードをはじめ、同じ薬を使った患者たちは全て元の状態に戻ってしまいます。
 一度は生き返らせ、ふたたび絶望させる結果になり、自分のしたことに疑問を感じ、罪悪感すら抱くセイヤーを、常に彼を支えて来た看護師のエレノアは優しく慰めます。

 そして、患者たちとの交流を通じて、生きていることの素晴らしさ、家族の大切さに気付かされたセイヤーは、これまで意識的に距離をとっていたエレノアとの距離を縮めます。
 セイヤーらは、その後も治療を続け、患者たちの状態が改善することもありましたが、1969年の夏に起きたような目覚ましい回復が見られることはありませんでした。

感想

 内容とストーリーの流れ的に、ダニエル・キイスさん原作の『アルジャーノンに花束を』にとても似ていると思いました。
 ただ、作中で決定的に違うのはアルジャーノンでは主人公のチャーリーが母親に会いに行くところが最大の山場に思えますが、レナードは主治医のセイヤーと、ポーラとの関係に重点が置かれている気がしました。

 どちらの話も求めていたものを手に入れることで逆に失うもの人間の生の価値束の間の歓喜とふたたびの地獄、というテーマと展開を扱っています。
 物語の終盤で、レナードが治療前の状態に戻ってしまうことについて、こんなことになるなら何もしないほうがよかったのではないか?とセイヤー医師が悔悟するシーンがありますが、これは竹取物語でかぐや姫が月に帰る際に、人間界で得た記憶や感情をすべて失うことから、地球で過ごした日々に意味はあったのか?という問いに通ずるテーマだと思いました。

 そしてそれは、限りある時間を生きる我々人間すべてに共通する普遍的なテーマです。自分の人生にはどんな意味があるのか。たぶんそれは、死ぬときまで正確には分からないかと思います。
 自分にとっては無意味に思える出来事でも、誰かにとってもは人生の根幹に影響を受け記憶に深く刻まれるような重大事になりうるかもしれない、ということを忘れてはいけませんね。

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