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【学び】身近で複雑なイギリスのアレコレ事情

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国。

イギリスの正式名称が上記であることを知っている人、言える人は日本にどれくらいいるのか。恐らく学校で何度も学んだことだと思うが、イギリスで定着するあまりに大人になるほど忘れていくのではないでしょうか。

この名前は、イギリスの複雑な文化や構造を如実に表していると言える気がします。今回は文学や映画から政治の仕組みまで非常に日本人が馴染みのあるイギリスについて、意外と知られていない複雑さを書いていこうと思います。

イギリスとその国内

まずは国の基本情報から。
正式名称はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国。王国という名前の通り、王様が国家元首として存在しています。しかし「君臨すれども統治せず」でご存じの通り、議会制民主主義の国なので議会で選出された首相が国をリーダーとして率います。

グレートブリテンというのは島の名前であり、イギリスは「イングランド・スコットランド・ウェールズ」の三つで構成されるグレートブリテン島とアイルランドの北部を領土とする連合王国。これまた連合という名前の通り、元々それぞれ別の国家であり、それが統合されてきた歴史があり現在は同じ君主を共有する連合王国ということになります。従ってそれぞれに言語や文化や歴史があり、偏にイギリスといっても民族は多様です。呼び方1つ取っても注意が必要です。

また、イギリスには階級社会の名残があります。それによって不平等や不自由が生じる訳ではありませんが、該当する階級によって話す言葉や見るスポーツや読む新聞が違ったり、通う学校や着く職業にも違いがあるそうです。差別でそうなっているというより、各々アイデンティティとして階級があって、それにより自分の位置や居場所が分かるという感覚に近いそうですが、今の日本人には中々理解しづらいなと正直思います。

最後に政治の仕組みについて。
イギリスは王様を国家元首とする、議院内閣制の国です。貴族院と庶民院の2つの議会がある二院制であり、国民は直接選挙で庶民院の議員を選びます。そして庶民院の最大与党の代表が首相に選出されるという仕組みです。
日本はイギリスを手本として、二院制や2大政党制などを取り入れています。また天皇が実質的に国家元首の位置にあたり、同じ議院内閣制で首相が選出されるなど、非常に近い政治の仕組みになっています。
だからこそ、学べる点は多いのではないかと思います。

イギリスとヨーロッパ

一般的にイギリスはヨーロッパの一部であると考えられていますが、イギリス目線だと必ずしもそうではないようです。

島国に住む人の特徴なのか、自然と大陸の国々と島国とで線引きをしがちのようです。これは結構日本人も共感出来る部分、あるんじゃないかと思います。実際EU加盟国を対象とした、ヨーロッパへの帰属意識の調査で、イギリスは最も帰属意識が低いという結果が出ています。

イギリスのEU離脱には様々な要因がありましたが、前提として上記の意識も関係していると考えられそうです。ただ、より簡潔で論理的な理由を説明するならば「EU加盟の目的が経済的なメリットのため」だったというのが挙げられると思います。なぜか?

イギリスがEU(当時はEC)に加盟したのは、発足してからかなり時間が経過してからでした。その時期はECが経済成長を続けていた頃であり、イギリス連邦やEFTAというEC以外での経済協力の勢いが弱まっていた頃でした。
欧州統合という理想に賛同したというよりも、自国の経済不振を改善するためにEC加盟が必要だったと考えられます。

人の移動の自由によって大量の移民がイギリスに入ってくる。安い労働力が入ってくるため、結果賃金は上がりにくくなり、職も奪われ、イギリスの労働者階級の人達の不満が高まる。経済を理由に入ったのだから、また経済を理由に離脱してもおかしくはないと思います。ブレグレットと呼ばれるように、実際には離脱を受けて後悔する人の方もかなり多かったようですが。

イギリスと世界

かつて「大英帝国に日の沈むことなし」と呼ばれたように、全世界に植民地を有する地理的な面でも覇権を握っているという面でも、世界の中心だったのが19世紀後半から20世紀前半のイギリスです。

その頃と比較して衰えたとはいえ、まだ今も世界GDP第6位、軍事力も高く数少ない核保有国の1つでもあります。

イギリスの影響力が表れるもの、中でも「英連邦」の存在は大きいのではないかと思います。英連邦とは、大英帝国時代にイギリスの植民地だった世界各国とイギリスで構成される緩やかな国家連合のこと。1931年に発足し、英語の正式名称は「コモンウェルス」といいます。これは聞いたことがあるのではないでしょうか。

英連邦に加盟することで人やモノの移動がしやすくなったり、技術的に協力出来たり、経済的なメリットが享受出来るとされます。今やイギリスをGDPで抜いたインドを始め、オーストラリアやカナダなども加盟しており、2023年時点で56ヶ国が加盟しています。

イギリスにとってはEUから抜けたことで、こうした英連邦のような連合体がより重要視されています。帝国主義で世界に植民地を持った国は他にもいましたが、現在になってかつての繋がりを各国が対等な立場でここまで発展させている。そこには、イギリスが他国と異なり、植民地の現地で教育機関を作って現地の人を育てようとしたことなどが、姿勢的にも結果的にも影響しているように思います。

「ノブレス・オブリージュ」という、「身分の高い者はそれに応じて果たすべき社会的責任と義務がある」という道徳観が欧米にはあります。
とりわけ、イギリスでは階級社会の名残が強いので、良い見方をすれば上記の道徳観も色濃く存在しているのかもしれないですね。

以上、身近で複雑なイギリスのアレコレ事情、についてでした!
ありがとうございました!

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