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ショート 「女狐カオナシちゃんの告白」

私はずっと、周りの男のたちの理想の姿で居続けようとしていた過去があります
誰かに、「君ってこんな人だよね、こういうところがいいよね」と言われるたびに
次に会う時も、そうしようと努めました。
いろんな男の子の前で、彼らの理想を演じ続けているうちに、私は宙に浮いたような、自分の実態を感じなくなってしまいました。

そもそも、大学に入るまで
私は「私」を、今を生きているものとして実感したことがありませんでした。
私は私を、成績表や、親の言葉、誕生日にもらった友達からのメッセージや部活の部長、だと、思っていました。
毎日朝起きて、ご飯を食べ、夜眠るという一日を生きていることが
全然よくわかりませんでした。

そんな空っぽの、でも見栄えの良い女の子が大学に入って
いろんな男の子に褒められて、正直すごく嬉しくなったのです
私を誰かが知ろうとしてくれることが、現実に起こりうるとは思いませんでしたから。
だから、大学1〜2年生の間、私は彼らの褒め言葉が作った偶像になりました。
でも周りから「女狐」のハッシュタグで拡散されていたのは、最近知ったんだけれど

でも、猫を被っているのが結局みんなにばれてしまって
1人で色々気持ちと向き合ううちに
自分が「ふりをしている時」と、「本当の感情」を全身で感じている時の、見分けがつくようになりました
どうしようもなくかなしい時、もどかしい時、自我を捨てたい時には
手と足が痺れてくるのです
体がいうことを聞かないので、いっそ子供のように、地団駄を踏みたくて仕方のない気持ちになります
それは、すごく恐ろしい時間で
同時に、すごく充実した気持ちになる時間です
なぜならその瞬間だけは、私も自分の気持ちをちゃんと感じることのできる、人間で在れていることを確認できるからです

私が欲しいのは、私のために、花と本を選んでプレゼントしてくれる人なだけなのよ。

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