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2023年6月の記事一覧

御本拝読「喫茶とまり木で待ち合わせ」沖田円

ティーンと喫茶

 沖田円さんといえば、ティーンの小説。図書館勤めの反射神経か。ティーンの小説をきれいにまとめられる人は、本当にすごいと思います。性愛や大人のどろどろ抜きで、青少年のきらめきや葛藤を何作も描くのは、ひょっとしたら小説の中でも一番難しいのかもしれない。
 そして、喫茶店(カフェ)が舞台の小説も昨今ありすぎるぐらいにある。推理したり癒されたり、なんか、週に一冊はそういう小説が納品されて

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御本拝読「あぁ、だから一人はいやなんだ。3」いとうあさこ

幻冬舎文庫の罠

 数多ある各社の文庫本の装丁を見比べるのが好きです。特に背表紙は、一見してどこの文庫か分かるので。そして、私が持っている文庫本の中で二番目に多いのが「幻冬舎文庫」です(一番は新潮社文庫)(その昔、文庫のカバーの隅についてるマークを集めて応募する企画で、時計をいただいたぐらい)
 幻冬舎文庫、私が持っているのはすべて女性の著作でした。しかも、ほとんどがエッセイ。もっと言えば、半分以

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御本拝読「陰陽師 水龍の巻」夢枕獏

愛しい安心毛布

 学生時代から、新刊が出たら買い集めているシリーズのひとつ。ハードカバーと文庫の両方をそろえるお金がないので、文庫の発売を楽しみに毎年待っている。学生時代から読んでいるシリーズの中には、自分の感性が変わってしまって読まなくなってしまったり、作者や出版社の意向が自分とは合わなくなって離れてしまったものもある。そんな中で「陰陽師」シリーズは、いつだって、私を受け止めてくれる。
 それ

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御本拝読「レディーズ・メイドと悩める花嫁」マライア・フレデリクス

推理と社会問題

 海外ミステリのレーベル「コージーミステリー」、「ニューヨーク五番街の事件簿」シリーズの2作品目。今のところまだシリーズ2冊で、以降の続刊・翻訳は未定の様子。しかし、近年の海外ミステリーの中でとても印象に残った一冊。
 一般的に、一つの小説の中にテーマを複数つめこむのは難しい。推理なら推理、恋愛なら恋愛、に絞った方が書きやすいし読みやすい。「犯罪→推理→社会正義」や、「恋愛→障害

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ナンシー関への憧憬

 最近ずっとメンタルも低調子だけど、とにかく毎日はやってくるから生活はする。もちろん仕事もする。けど出口が見えなくて、しんどい。要は、体の不調含めて、一か月で急に更年期障害に襲われている感じ(というか、まさにそうなのだが) 
 こういう時、いつもなら読める本が読めない。小説は作り物過ぎて入り込めず、エッセイは全部気に障る。哲学や文学の考える系の本や理系のブルーバックスも、普段はさっさと読むのに文字

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