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いけばな歳時記

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いけばなに使われる花材は、四季の移ろいを映す「季語」のような、連綿とつながる文化の結び目であり、いけばな作例を使った「歳時記」としてまとめることができます。
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#生け花

いけばな歳時記 ウリ

いけばな歳時記 ウリ

 ウリはインド~北アフリカ原産でユーラシア全域に伝播・栽培化されたつる性一年草・食用果実。日本列島でも縄文期には栽培されていたようです。
 日本列島ウリの主流マクワウリの果皮色は黄・淡緑・白。
 上作は、透明ガラス花器でヒバの緑との対比構成→広瀬テキスト81・67p

上左右 透明ガラス花器で色彩対比構成→広瀬テキスト81・67p

上左 透明ガラス花器にマクワウリを入れ、竹オブジェにヨウシュヤマ

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いけばな歳時記 ランタナ

いけばな歳時記 ランタナ

 ランタナは中南米原産の常緑小低木・多年草。花季が初夏~秋と長く花色も豊富。色が変わって行くことからシチヘンゲ(七変化)とも呼ばれます。
 世界中で野生化した侵略的外来種。日本列島には19世紀頃観賞用に移入されました。種などは有毒。葉・茎にはトゲがあります。
 上作は、竹オブジェにランタナを絡ませた構成→広瀬テキスト71

上左 竹オブジェにランタナを絡ませた構成→広瀬テキスト71p
上右 実もの

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いけばな歳時記 ヨウシュヤマゴボウ

いけばな歳時記 ヨウシュヤマゴボウ

 ヨウシュヤマゴボウは北米原産、19世紀末~日本列島に帰化した多年草。
 茎は赤く、初夏~秋、茎先に白~薄紅の小さな花穂が付いた後、最初は緑、初秋には黒紫に熟します。濃い赤紫の果汁は衣服を染めて簡単には落ちません。秋の紅葉もきれいですが、水を下げやすく葉を減らして使います。
 食用キク科のヤマゴボウとは別種。根茎葉・実・種全草有毒で危険です。
 上作は、剣山無しの一種いけ→広瀬テキスト80・75p

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いけばな歳時記 アサガオ

いけばな歳時記 アサガオ

 アサガオはアジアか熱帯アメリカ原産とされるツル性の一年草・多年草。
 8世紀頃日本列島に移入されました。園芸化が進んだのは17世紀、花色は青~紫・ピンク・白。複色と豊富ですが、夏の早朝に咲いて朝のうちに萎みます。因みに秋の七草にあるあさがほはキキョウとされています。
 江戸期、琉球経由で日本列島に入った多年性のノアサガオは開花時間が午後までと長く秋まで咲き続け、今は空き地に雑草化して広がっていま

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いけばな歳時記 タカサゴユリ

いけばな歳時記 タカサゴユリ

 タカサゴユリは台湾固有種で、夏に花咲くテッポウユリの近縁多年草。
 テッポウユリより花は細長く葉も細いですが、園芸種テッポウユリはタカサゴユリとの交雑種で、両者の中間的な特徴を持つものが多いようです。
 タカサゴユリは繁殖力が強く野生化して日本列島各地に広がっています。
 上作は、ルスカスを合わせた上下二口の自然調→広瀬テキスト45p

上左 モッコウバラを絡ませた中にタカサゴユリ・ピンポン

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いけばな歳時記 ガーベラ

いけばな歳時記 ガーベラ

 ガーベラは南アフリカ・熱帯アジアなどに分布する四季咲きキク科ガーベラ属の多年草・宿根草。西洋で栽培化され、19世紀日本列島に入りました。
 季節を問わず、品種・花の大きさ・咲き方も多様、花色も豊富。長く美しい花茎も魅力で、根元につく葉はふつう流通しません。
 ガーベラは茎が傷みやすく、特に夏場の花首はすぐ下がります。水中の茎を保つために、頻繁な水換え・切り戻しが必要です。
 上作は、モンステラ・

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いけばな歳時記 キキョウ

いけばな歳時記 キキョウ

 キキョウは北東アジアに分布するキキョウ科多年草。初夏~秋、花色青紫~ピンク・白、つぼみは風船状・先が五裂する合弁花を複数個つけます。
 山上憶良の詠んだ秋の七草にあるあさがほはキキョウのことです。
 上作 竹オブジェ・キキョウ・ヤマシダで色彩対比→広瀬テキスト59p

上左 サワグルミ・キキョウ・アセビによる自然調→広瀬テキスト45p
上右 アセビ・キキョウによる自然調→広瀬テキスト45p
 ど

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いけばな歳時記 イガナス

いけばな歳時記 イガナス

 イガナス(チョウセンアサガオ=ダチュラ)は南アジア・アメリカ原産、ナス科一年草。夏、アサガオに似た白い花が咲き、花後、イガイガの棘を持つ黄緑色楕円の実をつけます。暗赤の茎と実の対比も効果的です。
 ただ全部位に水溶性の強毒を持ち、いけた手で目を擦るのも危険です。
華岡青洲が用いた麻酔薬の主成分マンダラゲの名でも知られています。
 上作は、サルスベリ・枯れ葉を合わせた自然調自由花→広瀬テキスト48

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いけばな歳時記 オリエンタルリリー

いけばな歳時記 オリエンタルリリー

 ユリはアジア中心の北半球に広く分布し夏に花咲く単子葉植物。古くから交配が進み、現在人気のオリエンタルリリー・スカシユリ・テッポウユリは全て原種とは異なる園芸種。日本原産種が元になっています。
 オリエンタルリリーは、カノコユリ・ヤマユリ・サクユリなどの交配品種。芳香の強い白・ピンク・黄などの大きな花をたくさん咲かせます。
 上作は、I.I.名古屋支部(赤毛のアンによせる-玄関花→広瀬テキスト99

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いけばな歳時記 ツクバネウツギ

いけばな歳時記 ツクバネウツギ

 ツクバネウツギ(アベリア)は東アジアに分布する低木。春~夏、白を主流に、黄・ピンク~赤の小花を多数つけます。花が散った後の赤茶・プロペラ形のガクも見所です。アベリアは栽培種の通称。
 上作は、ボクオブジェにシモツケ・ツクバネウツギを絡ませた構成→広瀬テキスト82p

上左 鉄線オブジェ・ツクバネウツギ・ベンケイソウによる横長・植物以外の素材を混ぜた構成→広瀬テキスト53・79p
上右 上下に花・

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いけばな歳時記 テッセン(クレマチス)

いけばな歳時記 テッセン(クレマチス)

 テッセンは、東アジアに分布するクレマチスの仲間。つる性植物で花びらに見えるガクがテッセンでは6枚、近縁のカザグルマは6枚。それに加えた世界各地の交雑園芸品種をまとめて、クレマチスやテッセンと呼びます。
 初夏~秋にかけて出回り、花色は紫~青・赤~ピンク・白・複色。
 上作は1078年名古屋名東区華道展出品作。枯れ麦・ヤシ新芽・テッセン・カスミソウを合わせた主材の方向性(遠心)→広瀬テキスト48

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いけばな歳時記 ナツツバキ

いけばな歳時記 ナツツバキ

 ナツツバキ(シャラ)は東アジア温帯に分布するツバキ科の樹木。初夏、朝に開花、夕に散るツバキに似た白い一日花を咲かせます。花葉が少し小さいヒメシャラも含め、ツバキとは異なる落葉樹。葉も薄く秋には紅葉します。
 仏典の沙羅双樹と見立て、寺にも植えられますが、まったく別種です。
 上作 ヒメシャラとハンゲショウを合わせた自然調→広瀬テキスト45p。

上左 名古屋高針西友うつぎ会展玄関花
上右 鉄線オ

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いけばな歳時記 ヤマボウシ

いけばな歳時記 ヤマボウシ

 ヤマボウシは東アジアに分布するミズキ属の広葉樹。初夏、近縁のハナミズキ同様、白・ピンクの苞葉(花を囲む葉)をつけます。①ヤマボウシ②ハナミズキの違いは、1.開花時期①が初夏②は中春・2.葉の出①が花より前②は花が先・3.苞葉の形①は先が尖り②は凹むか丸い、などです。
 秋には赤い実、紅葉も黄・ピンク~赤~紫と多色に染まりきれいです。
 上作は、ヤマボウシ一種いけ→広瀬テキスト75p

上左 ヤマ

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いけばな歳時記 カンパニュラ

いけばな歳時記 カンパニュラ

 カンパニュラ・ホタルブクロは北半球温冷帯に分布するキキョウ科草本。初夏~秋、茎先に青~青紫・赤紫・白など釣り鐘型の花を複数個つけます。
 日本のホタルブクロは花先が真っ直ぐですが、栽培種カンパニュラは花先が反転するものが多く、主に地中海産の改良種です。
 上作 ハラン・ブラックリーフ・カンパニュラ・カスミソウによる構成。

上左 アケビ・ホタルブクロによる自然調掛け花→広瀬テキスト35p
上右 

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