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チェ・ゲバラが腹を立てた「過ちは繰返しませぬから」とは

みなさんは
「過ちは繰返しませぬから」という
言葉を聞いたことがありますか?



そう、広島の平和公園の石碑に
刻まれている言葉で、
「安らかに眠って下さい。」のあとに、
「過ちは…」と続くアレです。


つい先日、
中南米ととても縁が深い
友人のR子さんから、
へええ!と思う話を聞きました。




今でもカリスマ的革命家として
大人気(?)のチェ・ゲバラのことです。




ゲバラが日本と貿易をしようと
通商代表団を連れて
日本にやって来た時のこと。




日本に着いてから、何を思ったか、
急に広島訪問を予定に
加えました。





そして資料館で原爆の被害を
目の当たりにして…


「どうして君たち日本人は
アメリカに腹を立てないんだ!!」

と腹を立てた(!)そうです。


さらに、この
「過ちは繰返しませんから」の
碑文を見て、
広島の通訳担当の方に



「なんで主語が書いてない?
アメリカだろう?
アメリカと書くべきじゃないか!」と
怒ったというのです。




皆さんが通訳を担当していたら
どう答えますか?



まあね、アメリカに散々な目に
遭わされ真っ最中の
キューバの事情を考えれば、
ゲバラの怒りは無理もありません。





ところで、
ちょっと脇道にそれますが、
念のため申し上げます…

「日本語は主語がなくてもOKだから、
日本人は主体、意志がはっきりしない、」
のような大雑把な話は
床屋談義です。




「主語」っていうと
いかにも能動的に意志を持って
シッカリ行動する存在を
示すような印象を受けがちですが…


そうではありません。



「主語」は
その文の「主題」を表すことばと
とらえないと変なことになります。



英語でも
The highest mountain in Japan is Mt.Fuji.
なんて言うでしょう。


「日本で一番高い山」に
意志もへったくれもありません。
これは主題です。


日本語の
「この店は麻婆豆腐がうまい」
なんていうのも

「主語が2つもある混乱した文」
ではなく、


「主題を2段階で絞っている」
だけのことと思います。




そう考えると
「過ちは繰返しませぬから」は
実に秀逸です。



「過ち」を主語にすることで
誰を主語にするか、という
チッポケな人間の
チッポケな
あーでもないこーでもないが
ふっとびます。



ヤッタ側、ヤラレタ側に分けて
ヤッタ側に反省を求める
発想じゃないんです。



しいていえば、
「過ちは繰返しませぬから by us all.」と
人類全員が
「行為者」(agent)なのでしょう。




なんだか、
「ならぬことはならぬものです」を
思い出します。
(会津日新館の什の掟です)



「過ちは繰返しませぬから」を
英語にするなら…


”過ち”shall not be repeated.
のように、
天の意志を表すshallを
使いたいなあ…



「過ち」は、まさか
一夜のあやまちや、
そんじょそこらのヘマじゃ
あるまいし、
mistakeやfaultじゃ
だめでしょう…



ちと待てよ…
筆者がいるはず…


と調べました。



筆者は自ら被爆者でもあった
広島大学教授で英文学者の
雑賀忠義(さいかただよし)さんです。



この碑文は何度も
「なんで日本人がそんなふうに
反省しなくてはならないんだ!!」
のような国内外からの
批判にさらされました。




そのたびに雑賀さんは
「そうではなく、
核兵器の問題を解決するには
人類全体、一人一人の力が
要るのだ」と
答えていたそうです。




雑賀さんご自身の英訳は
さすが英文学の先生です。

Let all the souls here rest in peace ;
For we shall not repeat the evil.


おお、主語をweと
はっきり言っています。


繰返しになりますが
雑賀はこれを人類全体をさすと
しています。



なるほど「過ち」は
the evilなのですね。
ウッカリ感ゼロです。
ここ、深いです…


今でもこの碑文をめぐる議論は
続いているようで、
広島市役所は
今年もサイトへの質問に
こう答えています。

【広島市役所】
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/kaitou/8239.html



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