澤田雅之

独立開業技術士(電気電子部門)の澤田雅之です。私のライフワークは、グローバルスタンダー…

澤田雅之

独立開業技術士(電気電子部門)の澤田雅之です。私のライフワークは、グローバルスタンダードな性能発注方式(この通りに作ってくれではなく、このようなものをつくってくれといった発注方式)の啓蒙と普及です。書籍【「性能発注方式」発注書制作活用実践法】を、2022年秋に出版しました。

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「性能発注方式」発注書制作活用実践法 第1章 日本人のDNAに組み込まれている「仕様発注方式」

第1章の目次第1節 発注書と発注方式 1 発注書とは? 2 発注方式とは? 第2節 日本人のDNAに組み込まれている「仕様発注方式」の弱点 1 仕様発注方式は、他国に類を見ない我が国独自のガラパゴス 2 仕様発注方式の基本は、「設計・施工の分離の原則」 3 仕様発注方式の本質は、ボトムアップによる部分最適化 第3節 「仕様発注方式」とは対照的な「性能発注方式」 1 性能発注方式は、グローバルスタンダード 2 性能発注方式の基本は、「デザイン思考」によるニーズとシーズの

    • 来年4月13日の万博開幕まで丁度1年。海外パビリオン建設が難渋する問題について、技術士協同組合で講演しました。

      建てたい海外パビリオンが建てられないようでは、万国博覧会と言えません。 大阪・関西万博は、来年の4月13日に開幕して半年間開催される予定です。ところが,万博の「華」となり「呼び物」となるはずの海外パビリオン(参加国が独自に建設する約50館)は、その大半が開幕にまでに出来上がらない恐れが日増しに高まっています。外国政府が我が国の大手建設業者と建設工事契約を締結したくても、他国に類を見ない我が国独自の建設工事契約の仕方に阻まれ、殆ど締結できないままであるからです。 外国政府

      • 万博開幕まで残り1年。海外パビリオンの独自建設が困難なままでは、万博開催国としての資質を問われます。

        建てたい海外パビリオンが建てられない万博は、史上初 建てたい海外パビリオンがなかなか建てられない万博は、史上初ではないでしょうか。参加国が独自に建設する海外パビリオン(51館のタイプA)は、万博の「華」です。しかし、万博開幕まで残り1年となった今でも、約20館は建設工事契約が未締結のままです。また、約30館は建設工事契約が締結できたのですが、我が国の大手建設業者と直接締結できたケースは皆無と言ってもよく、建築確認を取得して着工に漕ぎつけることができたのは10館余りに留まって

        • 【セミナー】 なぜ日本人は、先端プロジェクトの全体最適化が苦手なのか?

          【セミナーの概要】 これまでに無い先端プロジェクトでは、開発しようとする機能と性能・開発費用・開発期間といった要求要件の間に、トレードオフ関係(彼方を立てれば此方が立たなくなるといった相反関係)が常に生じます。 そこで、欧米諸国では、コストパフォーマンス(費用対効果)を最大化するために、プロジェクトマネージャのトップダウンにより、トレードオフ関係の全体最適化を図るプロジェクト運営を行うのが通例です。 他方、我が国では、「組織対応」と称するプロジェクト運営を行うのが通例で

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        「性能発注方式」発注書制作活用実践法 第1章 日本人のDNAに組み込まれている「仕様発注方式」

        • 来年4月13日の万博開幕まで丁度1年。海外パビリオン建設が難渋する問題について、技術士協同組合で講演しました。

        • 万博開幕まで残り1年。海外パビリオンの独自建設が困難なままでは、万博開催国としての資質を問われます。

        • 【セミナー】 なぜ日本人は、先端プロジェクトの全体最適化が苦手なのか?

          カイロス打ち上げ失敗。試験1号機にロケットよりも高額な衛星を搭載して失い続ける我が国の愚かさ。

          民間企業のスペースワンが開発した小型固体燃料ロケット「カイロス」の試験1号機(打ち上げ費用は約8億円)は、内閣衛星情報センターの情報収集衛星(開発費用は約11億円)を搭載して、令和6年3月13日に打ち上げられました。ところが、打ち上げから僅か5秒後に、映像を見る限り順調に上昇していたカイロスは、「飛行の安全に重大な支障が生じた際に自動的に破壊する制御機能」が突如動作して、衛星もろとも自爆してしまいました。 振り返ってみますと、JAXAが開発した大型液体燃料ロケット「H3」

          カイロス打ち上げ失敗。試験1号機にロケットよりも高額な衛星を搭載して失い続ける我が国の愚かさ。

          我が国ならではの「組織対応」によるプロジェクトマネジメントは、メリットが無く弊害ばかりです。

          私は、我が国でのプロジェクトマネジメントのあり方、特に、プロジェクトマネージャの役割に極めて疑問を感じております。我が国では、「組織対応」と称するボトムアップにより部分最適化を図るプロジェクトマネジメントが殆どであり、この場合のプロジェクトマネージャの役割は、関係する各組織の「まとめ役」、つまり、コーディネーターに過ぎません。他方、海外では、プロジェクトマネージャのトップダウンにより全体最適化を図るプロジェクトマネジメントが当たり前であり、「組織対応」といった概念や用語は存在

          我が国ならではの「組織対応」によるプロジェクトマネジメントは、メリットが無く弊害ばかりです。

          ドローン技術の最新事情       ― ディープラーニングで空飛ぶロボットに進化したドローン ―

          2018年9月、空の産業革命のレベル3(無人地帯における補助者なしの目視外飛行)が解禁されました。そして2022年12月、空の産業革命のレベル4(有人地帯における補助者なしの目視外飛行)が解禁されました。 ところが、レベル3でもレベル4でも、これまでは多くが単発的な試験運行に留まっており、特にレベル4では本格運行に至った事例が皆無です。その理由ですが、FPVに基づく操縦者の判断による飛行途上の安全確保が求められているため、ソフトウェアによる自律航行が認められないのです。

          ドローン技術の最新事情       ― ディープラーニングで空飛ぶロボットに進化したドローン ―

          X線天文衛星「ひとみ」の大失敗と小惑星探査機「初代はやぶさ」の大成功        ― プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(3) ―

          1 X線天文衛星「ひとみ」は、国際協力ミッション 宇宙からのX線は、大気に吸収されるため衛星による観測が欠かせません。そこで、1979年以降、我が国はこれまでに歴代5機のX線天文衛星を打ち上げて、グローバルなX線天体観測を支えてきました。いわば、X線天文衛星は我が国のお家芸です。 2016年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所が打ち上げたX線天文衛星「ひとみ」は、2005年に打ち上げ2015年まで運用したX線天文衛星「すざく」の後継機でした。「ひとみ」は、

          X線天文衛星「ひとみ」の大失敗と小惑星探査機「初代はやぶさ」の大成功        ― プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(3) ―

          仕様発注方式で失敗・破綻し、性能発注方式で復活・成功した新国立競技場整備事業― プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(2) ―

          1 2015年7月17日、新国立競技場整備計画が白紙撤回 2012年に実施した国際デザインコンクールを起点とする新国立競技場整備計画は、「設計・施工の分離の原則」に則った仕様発注方式による整備に向けて、2年半もの設計委託期間と60億円余りの設計委託費を費やした挙句に、工事費試算額の高騰が引き金となり、2015年7月17日に安倍首相により計画全体が白紙撤回され破綻しました。 この破綻の主因は、三つ巴のトレードオフ関係(彼方を立てれば此方が立たなくなるといった相反関係)にあ

          仕様発注方式で失敗・破綻し、性能発注方式で復活・成功した新国立競技場整備事業― プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(2) ―

          零戦の大成功と後継機「烈風」の大失敗  ー プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(1) ー

          1 零戦は、20世紀の世界地図を塗り替えた純国産の工業製品 太平洋戦争の序盤から中盤にかけて、欧米の新鋭戦闘機をも圧倒することができた零戦ですが、その秘訣は、三つ巴のトレードオフ関係にある空戦性能・最大速力・航続力において、並外れた高性能を実現できたところにありました。 零戦の開発に向けて、発注者(旧日本海軍)が、受注者(三菱重工業)に求めたのは、実現が決して容易ではないけれども不可能ではない高性能でした。零戦は、旧日本海軍が作成した1枚の計画要求書(要求水準書と同義)

          零戦の大成功と後継機「烈風」の大失敗  ー プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(1) ー

          欧米流のオープンイノベーションを成功させる鍵は、性能発注方式の取り組み方です。

          1 イノベーションは目的ではなく手段であり、結果です。 オープンイノベーションとは、これまでに無い画期的な製品(つまり、従来品を駆逐してしまうほどに費用対効果に優れた製品)を産み出すために、その全部又は一部についての研究開発や設計・製造に最適なベンダー企業を、広く外部に求めて活かしていく手法のことです。取り分け技術革新が激烈な分野では、自社内で新たに研究開発して設計・製造していく体制の構築から始めていたのでは、競争に勝ち残れるはずもありません。このような場合には、オープンイ

          欧米流のオープンイノベーションを成功させる鍵は、性能発注方式の取り組み方です。

          大規模なプロジェクトを確実に成功させるには、グローバルスタンダードな性能発注方式の取り組み方が必要です。

          プロジェクトマネージャの最も大事な役割は、トップダウンで全体最適化することです。 我が国ではこれまで、優れたシステムを実現する方法論として、『システムを構成する各部分ごとに最適化を図れば、最適化された各部分をまとめ上げたシステム全体が最適化される。』とする考え方が主流であったように思います。 かつてのように技術革新が緩やかに進む中で、既に確立された技術を用いてシステムを構成できる場合には、部分最適化の積み上げが全体最適化に繋がっていました。既に確立された技術は、大抵は規

          大規模なプロジェクトを確実に成功させるには、グローバルスタンダードな性能発注方式の取り組み方が必要です。

          ディープラーニングによるシステム開発委託には、性能発注方式の取り組み方が欠かせません。

          我が国では、ディープラーニングによるシステム開発を検討する際,どのようにシステムの品質を保証するかが問題となり,導入を断念するケースが発生しています。欧米ではディープラーニングで開発したシステムやサービスが広まっていますが、前記の問題は全く聞こえてきません。 ディープラーニングを含めたソフトウェア全般について言えることですが、目に見えないソフトウェア部分だけを殊更に取り上げてその品質を証明して保証せよと言われても出来ない相談です。欧米では、発注者からベンダーに対してこのよ

          ディープラーニングによるシステム開発委託には、性能発注方式の取り組み方が欠かせません。

          三菱スペースジェット開発失敗の根源的要因は、経済産業省と国土交通省と三菱重工業のいずれも、性能発注方式の取り組み方ができなかったことです。

          令和5年6月7日付の読売新聞朝刊記事「MSJ開発撤退 要因検証へ」によれば、経済産業省は6月6日、航空機産業の課題と戦略を検討する有識者会議の初会合を開催して、三菱重工業が三菱スペースジェット(MSJ)の型式証明取得に失敗して開発から撤退した要因を検証した上で、今後の成長戦略を今年度内に取りまとめるとのことです。 ところで、MSJの開発に失敗した根源的な要因は、経済産業省と国土交通省と三菱重工業のいずれも、下記にそれぞれ具体的に記載のとおり、性能発注方式の取り組み方(この

          三菱スペースジェット開発失敗の根源的要因は、経済産業省と国土交通省と三菱重工業のいずれも、性能発注方式の取り組み方ができなかったことです。

          PPP/PFIによる自治体の公共事業では、性能発注方式の取り組み方が欠かせません。しかし、どこの自治体でも仕様発注方式の考え方から抜け出せないため、1者応札が頻発する事態を招いてVFM(Value for Money)の向上を阻害しています。

          自治体の公共事業では、包括的民間委託による事業や公設民営・民設民営等の民営化を主眼とする事業、つまり、性能発注方式の取り組み方が必須となるPPP/PFIによる事業の比率が増加しています。事業をPPP/PFIの手法で実施する主目的は、仕様発注方式(設計・施工分離発注方式)の手法による従前からの公設公営事業と較べて、VFM(Value for Money : 費用対効果とほぼ同義)を向上させるところにあります。これには、PPP/PFIによる事業の受託業者を選定する際に、価格と技術

          PPP/PFIによる自治体の公共事業では、性能発注方式の取り組み方が欠かせません。しかし、どこの自治体でも仕様発注方式の考え方から抜け出せないため、1者応札が頻発する事態を招いてVFM(Value for Money)の向上を阻害しています。

          性能発注方式の取り組み方でのシステム開発委託が、我が国のDXを成功させる鍵です。しかし、我が国では仕様発注方式の取り組み方しかできず、裁判沙汰が頻発しています。

          DXに欠かせないシステム開発委託に向けて、グローバルスタンダードである性能発注方式の取り組み方(つまり、このようなものを作ってくれといった、トップダウンによる全体最適化を求める取り組み方であり、システム開発には最適です。)が、我が国では殆どできません。他国に類を見ない我が国独自のガラパゴスである仕様発注方式の取り組み方(つまり、発注者が指示したとおりに作ってくれといった、ボトムアップによる部分最適化を求める取り組み方であり、システム開発には全く適しません。)が、官民のあらゆる

          性能発注方式の取り組み方でのシステム開発委託が、我が国のDXを成功させる鍵です。しかし、我が国では仕様発注方式の取り組み方しかできず、裁判沙汰が頻発しています。