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X線天文衛星「ひとみ」の大失敗と小惑星探査機「初代はやぶさ」の大成功 ― プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(3) ―
1 X線天文衛星「ひとみ」は、国際協力ミッション 宇宙からのX線は、大気に吸収されるため衛星による観測が欠かせません。そこで、1979年以降、我が国はこれまでに歴代5機のX線天文衛星を打ち上げて、グローバルなX線天体観測を支えてきました。いわば、X線天文衛星は我が国のお家芸です。 2016年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所が打ち上げたX線天文衛星「ひとみ」は、2005年に打ち上げ2015年まで運用したX線天文衛星「すざく」の後継機でした。「ひとみ」は、
仕様発注方式で失敗・破綻し、性能発注方式で復活・成功した新国立競技場整備事業― プロジェクトの全体最適化 成功と失敗の事例研究(2) ―
1 2015年7月17日、新国立競技場整備計画が白紙撤回 2012年に実施した国際デザインコンクールを起点とする新国立競技場整備計画は、「設計・施工の分離の原則」に則った仕様発注方式による整備に向けて、2年半もの設計委託期間と60億円余りの設計委託費を費やした挙句に、工事費試算額の高騰が引き金となり、2015年7月17日に安倍首相により計画全体が白紙撤回され破綻しました。 この破綻の主因は、三つ巴のトレードオフ関係(彼方を立てれば此方が立たなくなるといった相反関係)にあ
三菱スペースジェット開発失敗の根源的要因は、経済産業省と国土交通省と三菱重工業のいずれも、性能発注方式の取り組み方ができなかったことです。
令和5年6月7日付の読売新聞朝刊記事「MSJ開発撤退 要因検証へ」によれば、経済産業省は6月6日、航空機産業の課題と戦略を検討する有識者会議の初会合を開催して、三菱重工業が三菱スペースジェット(MSJ)の型式証明取得に失敗して開発から撤退した要因を検証した上で、今後の成長戦略を今年度内に取りまとめるとのことです。 ところで、MSJの開発に失敗した根源的な要因は、経済産業省と国土交通省と三菱重工業のいずれも、下記にそれぞれ具体的に記載のとおり、性能発注方式の取り組み方(この
PPP/PFIによる自治体の公共事業では、性能発注方式の取り組み方が欠かせません。しかし、どこの自治体でも仕様発注方式の考え方から抜け出せないため、1者応札が頻発する事態を招いてVFM(Value for Money)の向上を阻害しています。
自治体の公共事業では、包括的民間委託による事業や公設民営・民設民営等の民営化を主眼とする事業、つまり、性能発注方式の取り組み方が必須となるPPP/PFIによる事業の比率が増加しています。事業をPPP/PFIの手法で実施する主目的は、仕様発注方式(設計・施工分離発注方式)の手法による従前からの公設公営事業と較べて、VFM(Value for Money : 費用対効果とほぼ同義)を向上させるところにあります。これには、PPP/PFIによる事業の受託業者を選定する際に、価格と技術
性能発注方式の取り組み方でのシステム開発委託が、我が国のDXを成功させる鍵です。しかし、我が国では仕様発注方式の取り組み方しかできず、裁判沙汰が頻発しています。
DXに欠かせないシステム開発委託に向けて、グローバルスタンダードである性能発注方式の取り組み方(つまり、このようなものを作ってくれといった、トップダウンによる全体最適化を求める取り組み方であり、システム開発には最適です。)が、我が国では殆どできません。他国に類を見ない我が国独自のガラパゴスである仕様発注方式の取り組み方(つまり、発注者が指示したとおりに作ってくれといった、ボトムアップによる部分最適化を求める取り組み方であり、システム開発には全く適しません。)が、官民のあらゆる