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ドローン技術の最新事情       ― ディープラーニングで空飛ぶロボットに進化したドローン ―

2018年9月、空の産業革命のレベル3(無人地帯における補助者なしの目視外飛行)が解禁されました。そして2022年12月、空の産業革命のレベル4(有人地帯における補助者なしの目視外飛行)が解禁されました。
 
ところが、レベル3でもレベル4でも、これまでは多くが単発的な試験運行に留まっており、特にレベル4では本格運行に至った事例が皆無です。その理由ですが、FPVに基づく操縦者の判断による飛行途上の安全確保が求められているため、ソフトウェアによる自律航行が認められないのです。
 
そこでドローンは、自律航行による本格運行に向けて、防塵・防水性能、耐風速性能、フェイルセーフ機能、障害物回避機能などの飛行途上の安全を確保する機能・性能面において、目覚ましい進化を続けています。
 
中でも特筆すべきは、ディープラーニングで実現した「AIの目」で周囲の状況を直視しつつ自律的な障害物回避飛行ができる、いわば、空飛ぶロボットに進化したドローンです。米国のSkydio社とAmazon社は、いずれも10年以上にわたる研究開発を経て、数年前から実用化しています。米国最大のドローンメーカーとなったSkydio社のドローンは、我が国での活用事例も増えているところです。
 
しかし我が国のドローンメーカーでは、ディープラーニングによる高度な障害物回避飛行能力を開発しようとする動きが全く見られません。それどころか、中国のDJI社のドローンが7〜8年前から備えている障害物探知回避機能(進行方向にある高木や建物等の障害物を数十m手前で検知して進行を停止し、障害物を乗り越えられる高度まで上昇してから進行を再開するといった機能)についても、ソニー製ドローンは備えていますが、それ以外に障害物探知回避機能を備えている国産ドローンは見当たりません。
 
上記のとおり、レベル4での本格運行に至った事例が皆無である最大の理由は、FPVに基づく操縦者の判断による飛行途上の安全確保が求められているため、ソフトウェアによる自律航行が認められないところにあります。ディープラーニングで空飛ぶロボットに進化したドローンであれば、この切り札となり得ます。それゆえ、我が国のドローンメーカーでも、ディープラーニングによる高度な障害物回避飛行能力を開発することが喫緊の課題であると言えるのではないでしょうか。


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《澤田雅之のドローン関係プロフィール》

1978年に京都大学大学院工学研究科を修了し警察庁に入庁。警察大学校警察情報通信研究センター所長を退職後に技術士資格(電気電子部門)を取得して、2015年に技術士事務所を開業。同年の首相官邸ドローン落下事件を契機として、カウンタードローンに関する調査研究を開始。伊勢志摩G7サミット、大阪G20サミット、ラグビーW杯、東京オリンピック等に向けて、警察庁、警視庁、海上保安庁、経済産業省、関係府県警察本部等でカウンタードローンについて講演。2018年以降は空の産業革命に向けたドローンの利活用にも調査研究の対象を拡大し、これまでに多数の執筆や講演を実施。



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