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【シリーズ第46回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 何かを一緒にするわけではないけれど、狭い部屋で二人が暮らしていると、何かしら不都合は出てくる。
 お互いに生活習慣も、性格も、好みも違うし、その違いすら理解せずに暮らしているのだから当然だ。

 ベッドのサイズは物理的なことなので仕方がない。

 問題は、部屋の掃除、整理整頓だ。

 私は基本的に部屋がスッキリ!という状態を好む。
 特に掃除が好きなわけではない。
 けれども、掃除をしていない部屋は嫌いなので、朝起きると、真冬でもバーンと窓を開け放し、掃除をする。

 とはいえ、今は同居人がいる。
 彼の就寝時間が私の起床時間、ということもあり、さすがに朝から掃除はできない。
 
 「今日は、掃除しよう!」

 という、恋人同士的な会話はもちろんない。

 いずれにしても、小さな部屋だし、生活スタイルもバラバラで、二人が同じ部屋にいることも少ない。
 彼が不在の時に、だだだーーーっと掃除をする。

 「掃除してください」

 と頼んでいないので、

 「掃除をしてくれない!!」

 と文句は言えない。

 けれども、掃除をしても、

 「あっ」

 という間に散らかる。

 「どうやったら、こんなに散らかるの???」

 というくらい、すごい勢いで散らかる。

 チラシや、開けた封筒はゴミ箱ではなく床へ、靴下は脱ぎ落とす。
 片付けるよりも散らかす速度のほうが確実に早い。  
 湿っていたり、汚れた物はキチンとゴミ箱に入っているので、紙類は”清潔なゴミ”、それ以外いは”不潔なゴミ”という、分別らしい。

 「・・・・・ゴミはゴミじゃーーーーー!!!」

 と言いたいけれど、二人の生活はすれ違い。
 犯人は現場にいない。
 きっと、どこかの時点でゴミを拾い、洗濯をするときに洗濯物を拾うのだろう。

 しかし、ゴミがゴミじゃないときもある。
 封筒やチラシの端っこが、メモ用紙になっていることがある。
 メモをした紙だけ、キチンと置いてあれば、さすがの私も気付く。
 ところが、この紙の中から、どうやってメモの紙を見つけるんだ?という状態。
 くしゃくしゃと丸めて、ゴミ箱にポイッ、ポイッ、ポイッ。
 翌日、

 「机の上の紙をどこやったーーーっ!!!」
 
 怒りの電話がかかってくる。

 「人のもんを勝手に捨てるなーっ!!!」

 ごもっとも。
 
 それ以上に気になる場所が、机の上だ。
 彼の定位置はベッド。
 起床後は、ベッドの縁に座り、正面にあるテレビを観ながら、できる限りのことをする。
 そして使った物、例えば髭剃り、歯ブラシ、コーヒークリーム、カップ、スプーンなどなど、すべての物が、ベッドとテレビの間にあるテーブルの上に残されていく。

テーブルには色々な物がある

 帰宅したときに、テーブルを見れば、その日、彼が部屋で取った行動が把握できる仕組みだ。

 座る場所はベッドとソファのみ。
 ソファに座ると、体をねじってテレビを観なければならない。 
 テーブルもひとつ。
 部屋の中でできること、部屋のサイズ、椅子やテーブルの数を考えると、

 「ベッドに座るよね」

 と思う。

 とはいえ、食事もするテーブルに、食事と関係ない物があると、どうも気持ちが悪い。
 人それぞれ気になる場所は異なるけれど、私は食事をする机、食事を作るカウンターだ。
 
 彼が帰るのを待って、

 「机の上を片付けてください」
 「ゴミをゴミ箱に入れてください」
 「洗濯物はかごに入れてください」

 と言えばいい。
 言わなければ、私が何を不快に思っているのかは伝わらない。

 ところが、その数時間が待てない。
 家の扉を開け、とっ散らかされた部屋を見ると、自動的に体が動く。
 部屋に入りながら、ゴミと思われる紙を拾い、洗濯物を拾う。
 机の上に出された物を、一か所に集める。
 あまりに多いときは、箱の中に入れて、机の下に収める。
 その勢いで、窓を開け、掃除をする。

 あ~、スッキリ!!

 シャワーを浴びて、眠りにつく。

 ところが、翌朝目覚めると、見事に、箱の中身は机の上に戻っている。

 「せっかく片付けたのにー!」

 と思うけれど、勝手に他人の物を片付けたので、文句は言えない。 

 他人と共同生活をしても、マイペースで、部屋を散らかす彼。
 自分がスッキリした部屋で暮らしたいから、とっとと掃除をして、勝手に他人の物を片付ける私。

 どっちもどっちなんだけれど、私のしていることの方が、ちょっぴり犯罪のにおいがする。

最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!